fbpx

スタートアップのIP!Q&A #16 スタートアップが知財組織を立ち上げるためには

連載記事

この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。

この連載では知財(IP)に関する読者の疑問をOne ip特許業務法人の澤井弁理士が解決していきます。この連載を通して知財や特許をより身近に感じてもらえますと幸いです。

第16回目のお悩みは「スタートアップが知財組織を立ち上げるためには①」。

とあるリアルテック系スタートアップでお仕事をしているUさんからのお悩みです。

スタートアップのIP!Q&A #15 知財を資金調達に有効活用する方法

澤井 周氏
One ip特許業務法人 パートナー
弁理士 博士(工学)

東京大学工学部産業機械工学科卒業、 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。大手素材メーカー、日本学術振興会特別研究員、都内特許事務所、 企業知財部を経て、2019年、R& Dと事業戦略とに密接した知財支援をさらに進めるべく、One ip特許業務法人に参画。企業知財部では、発明発掘、 出願権利化、知財企画、知財戦略支援、 研究者への知財教育等を担当。新製品・ 新事業モデルを見据えた知財戦略・特許網構築の支援に尽力。One ip特許業務法人では、主にクライアントの知財戦略支援、 クライアント知財管理、所内管理を担当。

Uさんのお悩み

弊社の事業戦略を考慮し、早々に社内で知財組織を立ち上げたいと考えています。スタートアップが知財組織を立ち上げる際のノウハウや考慮すべき点を教えていただけますと幸いです。

スタートアップに知財部門が無い場合はどのようなリスクがあるのでしょうか?

スタートアップのフェーズにもよりますが、基本的に知財部門を設けているスタートアップ企業は少ないと思います。もし最初から知財をしっかりやっていきたいのであれば、初期の段階から弁理士などの専門家と知財について会話ができる方が良いと考えています。

アーリーステージの場合は社長が知財を見ることもありますが、会社がどんどん大きくなれば、社長が自ら知財を全て見る余裕はなくなってくると思います。ですので、ある段階で知財をメインで担当する担当者を社長等の経営者から、技術開発部や法務部などの人に変えた方が良いと思います。

この場合、知財の担当者は、事業戦略や技術戦略など、経営者の方針を理解し実行されている方が担当されることが好ましいと思います。なお、スタートアップの初期から知財部門を立ち上げる必要は無く、少なくとも誰が知財を見る担当者かを決めておくだけで十分かと思います。知財部が無いこと自体に大きなリスクはありませんが、誰が旗振り役を担当すべきかは設定しておくべきだと考えています。

知財部を立ち上げるのに必要なことを教えてください。

先に言ったように、最初からがっつり知財部を立ち上げるのはレアケースです。まずは会社の中で知財を誰がどのように回すかなど、仕組み作りをすることが大切です。

ミドルステージやレイターステージなどIPOやEXITが近づいていき会社の組織が成熟してくる際には、特許や商標を取得しつつ、それらを管理することも必要になってきます。

上場直前では、会社の内部統制や労務管理、情報管理の体制の確認に加えて、知財の状況や知財管理体制等の確認も行われることもあります。知財部の立ち上げ初期は大変ですが、初めは弁理士や弁護士に組織作りをサポートしてもらえば良いかと思います。

社内に知財パーソン(知財の専門家)がいない場合はどうすれば良いでしょうか?

知財パーソンが最初からいる方がレアケースですので、まずは会社の中で知財の担当者を一人決めて、専門家がサポートする体制を取るのが良いと思います。

社内での知財管理や職務発明の制度の運用についてはどうすれば良いでしょうか?

知財の管理体制や職務発明規程の運用は、事業戦略やR&D戦略だけではなく、会社のカルチャーが深く関係します。発明をその会社はどう捉えているのか、発明を促進したいのか、発明を特許にしたときに、特許をどのように事業戦略に生かしていくのか。

ですので、知財の体制の構築は、事業戦略に紐づく労務戦略にも強く関係してきます。会社ごとにどのような制度にしていくかは、その会社のカルチャーの理解が必要になると思います。

ですので、知財管理や職務発明規程の構築や運用は、外部の専門家に丸投げするのではなく、会社について深く理解している人が、専門家と協力しながら行うことが好ましいと思います。

次回の『スタートアップのIP!Q&A』は9月17日(金)に公開予定です。お楽しみに!

スタートアップのIP!Q&A #15 知財を資金調達に有効活用する方法



関連記事一覧