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生活の可能性が拡がる喜びを。世界のHondaが見据えるオープンイノベーションの可能性とは。#1

本田技研工業株式会社 知的財産・標準化統括部 統括部長 別所 弘和さん
インタビュー

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2021年4月5日、Hondaが技術ライセンス提供の窓口となるWebサイトをオープンしました。公開時点では、抗ウイルス・抗アレルゲン機能を持つ生地「アレルクリーンプラス」をはじめとする10の技術がライセンス提供対象となっており、サイト内の問い合わせフォームからライセンス契約の相談が可能です。

今後、独自技術の社外活用を加速するために、オープンイノベーション戦略を拡充していく方針を明らかにしたHonda。今後はオープンイノベーションを行う相手としてスタートアップも想定されています。

本記事では、本田技研工業株式会社 知的財産・標準化統括部 統括部長の別所 弘和さんに、オープンイノベーションに踏み切った経緯や、今後連携を進めていくなかで特にスタートアップとの連携に期待すること、またスタートアップに限らず、他社との連携に向けた工夫などをお伺いしました。

 

#2はこちら↓

生活の可能性が拡がる喜びを。世界のHondaが見据えるオープンイノベーションの可能性とは。#2

 

知財発のオープンイノベーションに力を入れてきた

 

―オープンイノベーションに踏み切った経緯をお伺いしたいです。

従来からクローズしていたつもりはないのですが、知財発のオープンイノベーションには、ここ数年力を入れてきました。もともと大学や国内外のスタートアップとの協業はごく普通に行われていて、クルマやオートバイ事業だけでなく、ロボティクス分野や、10年後に使うであろう新素材など、様々な先端技術分野をオープンイノベーションで進めてきました。

今回、新しく始めたのはライセンス提供できる技術を公開し、「知財発」として大きく前に取り上げたことです。そのように発信した方がアクセスしやすくなると考え、取り組み始めたのが、ここ数年の話です。

 

―知財発のオープンイノベーションとしては、どのような連携を想定されていますか?

連携はいかようにも可能です。これまでの具体例を挙げると、内田洋行さんとの連携でHondaのクルマのシートの素材である「アレルクリーンプラス」を採用していただきました。これは抗ウイルス・抗アレルゲン機能がある素材で、知財部門の発信がきっかけで、採用いただいた事例です。

また、ソフトウェア領域ですと、クルマに使っているソフトウェアをそのまま他のものに使うのは難しく、新たな開発が必要になるなど、技術自体がオープンイノベーションとしては扱いづらい場合があります。例えば、クルマに装着するナイトビジョンです。人間には見えない暗闇の中で人を認識してドライバーに通知する技術で、監視カメラや暗闇での人流の調査など、応用方法はいかようにも思いつくのですが、技術そのままでは使えないため、応用展開できるように「SDK(Software Development Kit)」としてソフトウェアを加工して公開しています。そうすると、色々とアクセスしやすくなり、実際に採用いただいた事例も増えています。

連携パターンを大きく分けると2つあり、Hondaが持っている技術をそのまま使える連携もあれば、Hondaの方で技術を加工して応用展開いただく場合もあります。Honda側で一から技術開発をすることは難しいですが、既存の技術を汎用性が高まるように加工することはあります。また企業の大きさに関わらず、Hondaもメンバーの一員として、みんなでそれぞれの知恵を集めて技術を開発するパターンもあるため、連携の仕方はいかようにもあると考えています。

 

アクセスしやすく、スムーズに連携が進むように

 

―連携を加速させるための特徴的な工夫や、ウォッチしている他の取組みなどはありますか?

先ほど申し上げた「SDK」化はひとつの工夫ですね。クルマを扱っているので、例えばシートの素材などは、何万回座っても擦りきれない耐久性の高いものになっています。また80℃やマイナス20℃などの過酷な室内環境でも劣化しません。クルマに使うものは人の命を預かるものですので、そのような品質耐久性など厳しい条件をクリアしている高品質な製品を起用しています。

しかし、高品質だからこそアクセスしにくい部分があり「連携するとなると色々と大変そう」と思われるのは良くないと感じていました。そこで今回、もう少しハードルを下げてアクセスしやすいように知財もオープンにしていこうという方針を固めました。従来は別会社のWebサービスなどを利用していたのですが、今回はHonda自らサイトを制作して公開することで、「あの技術ってうちの商品にも使えないのかな?」と感じた人が直接アクセスでき、スムーズに連携が進むように工夫しました。

 

「Hondaの技術が使える」と感じたら気軽にアクセスして欲しい

 

―他社、特にスタートアップに期待することはありますか?

色々なスタートアップの形態があり、取り扱っている技術も様々だと思いますが、前提や条件などはなく「Hondaの技術が使える」と思えば気軽にアクセスいただければ、ありがたいと思います。

 

―これまでの連携パターンは、Hondaの方から働きかけた場合と、相手から働きかけた場合、どちらで始まることが多かったでしょうか?

全てを把握しているわけではないですが、どちらのパターンもあります。例を挙げると、とある埼玉県の樹脂関係の会社から「HondaがASIMOで使用している技術を使いたい」とアクセスがあり、ライセンス契約をしたこともありました。協業は主に同業者の場合が多いですが、「Hondaで使っているあの部品が良いから使わせてください」と国内外でお声がけいただくこともあれば、Honda自ら働きかける事もあります。

 

様々な協業パターンの可能性

 

―今回のオープンイノベーションへのお取り組みで、公開した技術10個の選定理由を教えてください。

実際に交渉したり使っていただいた実績を持つ、現時点で協業の可能性が高いものを選定して公開しました。公開技術は、おそらく今後も増やしていくと思います。

 

―今まさに募集しているアイデアや連携先はありますか?

知財発のものとそうでないものがありますが、知財発のものはWebサイトにいくつか掲載しているのでご覧いただければと思います。あとは、アルミと鉄を溶接せずにくっつける技術などはまさに募集中ですし、具体的には言えないのですが、我々が欲しいと思っている技術に関しては協業相手を見つけなければいけません。ここは知財の出番で「IPランドスケープ」に繋がるのですが、知財視点で分析すると「この会社と協業するのがHondaのベストだ」というものが見えてきます。開発の流れで「この技術が足りない」と気づき、そこから連携のお声がけをして実際に協業したケースもあります。様々な協業パターンがあるので、まずはお気軽にお声がけいただけたら嬉しいですね。

 

#2につづく↓

生活の可能性が拡がる喜びを。世界のHondaが見据えるオープンイノベーションの可能性とは。#2

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