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知財戦略をコーポレートカルチャーに。技術を資産に変化させる重要性とは #2

インタビュー

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カラクリ株式会社取締役COOの鈴木咲紀子氏インタビュー後編です。

-前編はこちら

知財戦略をコーポレートカルチャーに。技術を資産に変化させる重要性とは #1

 

後編では、昨年12月に知財戦略顧問(CIPO)を創設したカラクリ株式会社が、実際にどの様にして知財戦略をコーポレートカルチャーに取り入れているのか、詳しくお話をお伺いしました。

CIPO創設で社内が大きく変わった

―CIPOを設置された理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?

現CIPOである安高は、設立当初から顧問弁護士として知財戦略のサポートを担っておりました。商標の譲渡交渉など、私が無謀に挑んでいくことに対してしっかりと壁打ちをし、事業を進める上で重要な時に、いつも顧問として強力なサポートがありました。

実はカラクリ株式会社でも初期の頃は、開発チームは商標だけでなく、パテントを取得することに対して批判的でした。昨今では、オープンソースのプロジェクトが社会的にも意義を感じるものとして取り上げられることが多く、ソフトウェアを扱うエンジニアの中には「オープンソースこそがクール」と捉える人が多くいたのです。

もちろんオープンソースはクールです。しかし、こと事業の観点ではマネタイズが難しくなります。そのため、パテントの必要性を開発チームに訴えながら少しずつ前に進めていました。その様な折に、現CTOの中山やテクニカルアドバイザーの浜辺に対して、当時は顧問の安高から直接、説明をしてもらおうと考えたのです。

―弁理士から話をしてもらう事で、どの様な変化が起きたのでしょうか。

安高は、高いコミュニケーション能力と技術への深い理解を持っています。そのためエンジニアの信頼を得ることに繋がり、そこから状況が変わっていきました。エンジニアと知財の専門家が良い関係性を構築したことで、表に出ていなかった技術もどんどん積極的に世に出すことができる様になっていったのです。

その一方で、出願書類作成や請求書発行といったパテント取得のための事務的な確認作業が重なり、だんだんと限界を感じる様になりました。法務メンバーが力を貸してくれる事もありましたが、全ての作業を細やかに引き継げず、スムーズに進められない状況が続いてしまいました。

そこで、安高にCIPOとしてしっかりと社内に入ってもらうことで、知財的観点やコーポレートカルチャーを構築してもらい、それをしっかりと発展させていきたいという思いが生まれ、昨年12月CIPOポストの創設に至りました。

―CIPOを創設したことで、社内や社外で変化を感じますか?

社内での変化が特に大きいものでした。当初から安高と関わっていたCTOなどは知財に対する意識をある程度持っていたのですが、社員が徐々に増えていくにつれ全員が同じ意識を持つことが難しくなり「何のためにやるのか?」ということを、改めて確認しあう必要がありました。CIPOを正式に設置してからは、知財やパテントに対するリテラシーが、会社全体で上がってきていることを強く感じます。

「特許」を前提にした開発フロー

―スタートアップビジネスに精通した弁理士を探すことは難しいというお話をよく伺います。安高CIPOは、初めはどの様な経緯で顧問弁理士をすることになったのでしょうか?

私は前々職でAIスタートアップの経営企画を担当しており、その時に安高と知り合いました。そこはいわゆる225銘柄に並ぶ様な大企業にも注目される会社だったのですが、その成長過程において取引先の大企業から、NDA(秘密保持契約)締結後にコア技術を開示するよう、お願いされることが多くなりました。

安心材料としての開示依頼だったと思うのですが、雑居ビルで作業しているようなスタートアップが、名だたる大企業にコア技術を開示するということに不安を感じたのです。そのような最中、周りの経営者コミュニティに「良い弁理士の先生はいないか」と聞いてまわっていたところ、名前があがったのが安高でした。当時、安高は独立してマンションの一室で事務所を始めたばかりという状況でした。

―開発チームとCIPOはどのようにコミュニケーションを取っているのでしょうか?

週次で定期的に開催している「開発定例会議」があり、CIPOはそこに必ず出席しています。定例会議の中で様々なプロダクトに関する話が行われており、CIPOが出席することで開発メンバー本人たちも気がつかなかったような「パテントを取れる技術」を発掘するということを行ってもらっています。

その後は、見つけてもらった技術の類似技術調査に加え、「ここの仕様を変えると取得の可能性が高まる」というところまで踏み込んだ業務を行ってもらっています。開発フローの中に、CIPOの調査や確認が入っているという状況です。

Slackにも社内メンバーの一人として参加をしているので、最近では開発チームから自然と知財に関する質問などのやり取りも発生しています。また、社内全体でパテントに対する意識や知識を高めていけるように、月1回、定期的に勉強会が開催されています。これらは極々自然に行なっていたことですが、初めから特許を取得することを前提においた開発フローができています。

「特許」は技術力の証明になる

 ―知財戦略を考える際に「特許」をどのように活用していきたいと思いますか?

私たちのサービスはチャットボットだけではなく、今後もAIやMLやDeep Learningを活用したプロダクトの拡大を予定していて、高い技術力を持つ東大の研究者や多様な経験を持つエンジニアたちが開発しています。「特許」を取得しているという事が、この技術分野のリテラシーが高くない方々にとっても解りやすく、高い技術力の証明として欠かせないものであると考えています。

「特許」を事業に活かしていく事が前提にありますが、私たちが抱え込むのではなく、世の中の為になる事ならば展開していこうとも考えています。特許技術をライセンスして他社に提供することもできますし、私たちにとってそこまで重要ではない技術でも、必要とされている方が社会的に意味のあることを行っている場合は、役立てていただくことも考えられますすよね。「特許」は正しく技術が使える、活用できる人たちの為にある「武器」だと思っています。「パテントや特許がクールではない」という考え方そのものが変化しているように感じています。

知財戦略をコーポレートカルチャーに。技術を資産に変化させる重要性とは #1



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