知財で経営を後押しする——特許訴訟を経験したマネーフォワードの知財戦略部が掲げるミッションとは #2
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個人・法人向けにお金の課題を解決するサービスを提供する株式会社マネーフォワード。
スタートアップ時代からIPOを経て、今年1月には利用者数1150万人を突破しました。ここまでの人気を獲得された背景には、恐らく様々な戦略があったのではないかと思います。
今回は、マネーフォワードを知財面で支える知財戦略部部長・小日向小百合さんに、マネーフォワードがどのようにしてスタートアップからIPOするまでに成長していったのか、またその途中で起こった変化や気づき、その中で知財をどのようにして活用していったかについてお話をお伺いしていきます。
#1(前編)はこちら
知財で経営を後押しする——特許訴訟を経験したマネーフォワードの知財戦略部が掲げるミッションとは #1
ー小日向さんご自身が知財を意識するようになったきっかけを教えてください。
もし海外進出するとなったとき、その国で商標を取っていなければ、事業化やブランディングも難しくなりますし、万が一他者の特許に抵触していたら事業全体がストップしてしまいます。知財の中でも産業財産権は特に強力な力を持つのに、IT企業ではあまり重要視されていないことに疑問を持ったことがきっかけです。
例えば、ドメインなどもウェブサイトのブランディングではとても重要ですし、メディア発信や営業資料を作る際も、知的財産を意識している人とそうでない人では伝え方が明らかに違います。そこに会社の個性やイメージといった価値が出てくるのに、あまり意識されていない現状があり、知財の力を高めることで事業を後押ししていきたいと思ったのです。
ーもともとIT系企業でお仕事をされていて、オープンソースのカルチャーの中でそのような視点を持たれたのは何故でしょうか?
オープンソースは素晴らしいことですが、オープンにしても大丈夫な戦略を持っておかなければ「オープンにする選択」すらできなくなる可能性があります。自らが選択権を持つために、知財戦略を考える必要があります。将来やりたい事や実現したい事を見据えて戦略を練らなければならないと事業から体系的に実感したのも、私にとって大きなターニングポイントでした。
ー知財戦略部が主催する社内制度「INVENTION AWARDS」について教えてください。
INVENTION AWARDSは、特許となるアイディアを発明・発掘した方を表彰する社内制度です。特許につながるアイディアは、社内であっても公表が難しいことも多く、発明の創出や発掘を行っても社内のメンバーに知ってもらう機会がなかなかありません。INVENTION AWARDSでは、特許につながる発明創出を行った人を広くノミネートし、表彰しています。
私たちは「今までにない工夫、新しい価値を生み出す」ことが重要で意味があると考えており、会社としてもそれを続けてほしいというメッセージをこの賞に込めています。社内報で「INVENTION AWARDSを見て自分も頑張ろうと思った」というコメントを見ると、とても嬉しく感じます。
時間を割いて開発してくれた、運用してくれた、そこを評価する仕組みを作りたかったのです。新しい価値を作れることは本当に凄いことで、そこを「すごい」と評価するカルチャーを作るのは、知財戦略部の重要なミッションだと思っています。
ー上場企業のIR活動で知財が有効的に活用されることはありますか?
IRでの知財は業界による難しさもあると感じています。一般的に、創薬などは一件の権利にインパクトがあると言われている反面、ITやソフトウェアの知財は定量的に見られることが多いと言われています。そのため、業界に応じた知財戦略を考えていく必要があります。ソフトウェア事業は創薬やメーカーと比較すると、知財の重要性が示しにくく価値を伝えにくい面があります。ソフトウェア事業だからこそ、特許だけではなく意匠や商標、著作権等も重要であるというところを、強く意識しています。
ー小日向さんはマネーフォワードでどのような事を実現していきたいですか?
会社を強くしていくための知財の重要性を伝えるとともに、知財戦略と経営戦略が一体となって、有効的に活用できる仕組み作りを知財戦略部で進めていきたいです。そのためには受け身ではなく、自ら事業理解をするために動いたり、コミュニケーションを取ったり、情報発信することに力を注いでいきたいです。
弊社はコーポレートサイトでも知財方針を公開するなど、会社全体で知財面の強化や戦略に取り組んでいます。現在、知財戦略部ではメンバーを募集しています。知財の観点から事業を支え、既存の枠組みにとらわれず自ら考え実行することを楽しめる方のご応募をぜひお待ちしております。
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#1(前編)はこちら
知財で経営を後押しする——特許訴訟を経験したマネーフォワードの知財戦略部が掲げるミッションとは #1