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スタートアップのIP!Q&A #2意匠権について

連載記事

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この連載では知財(IP)に関する読者の疑問をOne ip特許法人事務所の澤井弁理士が解決していく新コーナーです!この連載を通して知財や特許をより身近に感じてもらえますと幸いです。

スタートアップのIP!Q&A #1商標権について

澤井 周氏
One ip特許業務法人 パートナー
弁理士 博士(工学)

東京大学工学部産業機械工学科卒業、 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。大手素材メーカー、日本学術振興会特別研究員、都内特許事務所、 企業知財部を経て、2019年、R& Dと事業戦略とに密接した知財支援をさらに進めるべく、One ip特許業務法人に参画。企業知財部では、発明発掘、 出願権利化、知財企画、知財戦略支援、 研究者への知財教育等を担当。新製品・ 新事業モデルを見据えた知財戦略・特許網構築の支援に尽力。One ip特許業務法人では、主にクライアントの知財戦略支援、 クライアント知財管理、所内管理を担当。


第二回目のお悩みは「意匠権について」

とあるスタートアップにお勤めのWebデザイナーYさんからの相談です。

 Yさん  Web デザイナー

Yさんのお悩み

スタートアップでWebデザイナーとして働いています。最近、UIやWebサービス画面のデザインなども「意匠権」として取得できるという話を聞きました。弊社のWebサービスも意匠権で保護するべきなのか、悩んでいます

そもそも、特許権や商標権と「意匠権」は何が違うのでしょうか?

まず、特許権は発明を保護するための権利です。発明とは、例えばIT関連だと、アプリケーションのようなプロダクトやWebサービスで使われる技術に対応します。このように特許は技術を保護するものですが、意匠権はプロダクトの見た目やデザインを保護するための権利になります。特許の場合、権利範囲は文言で規定されますが、意匠の場合は図面や写真などで権利範囲が決まります。このように、特許と意匠では保護される対象や保護の方法が変わります。

また、商標権と意匠権の違いですが、商標権は例えばブランドの信用を保護したり、ブランドを信用する需要者が模倣品を買わないように、需要者を保護するための権利です。プロダクトを保護するというよりも、商売の信頼を守るのが商標権の役目です。

特許権、商標権、意匠権と、それぞれ保護できる範囲が違うのですね。

例えばレクサスやメルセデスのような車のエンブレムは、そのエンブレムがつけられた車のデザインとして意匠権でも保護できますし、そのエンブレムを車につけて販売しているメーカーであることを識別するので、商標権でも保護できます。商標の場合はそのロゴが何に使われているかとセットで権利範囲が決まってくるのですが、例えば別の車メーカーのロゴを他の車につけて売ったら権利侵害になる可能性は高いです。そのような権利範囲の考え方も、商標と意匠では変わってきます。

ロゴを使用したプロダクトのデザインとして保護したいのであれば意匠、ロゴを使ってサービスやプロダクトを提供しているブランドを保護したいのであれば商標となります。場合によっては、同じロゴ等について、意匠と商標どちらも出願することもあります。

また、特許と意匠のどちらも出願することがあります。例えば、タイヤの模様をデザインで守るという観点では意匠登録出願を行い、滑りにくさなど技術的な機能の面でタイヤの模様を守りたい場合には特許出願を行うことがあります。そのように複数の法域をうまくミックスして様々な面から保護するというケースもあります。

どのような会社が意匠権を取得するケースが多いのでしょうか?

「意匠権」はデザインに関する知的財産権なので、例えば、自動車メーカーのように、デザインを意識したプロダクトを作っている会社が取るケースが多いです

格好良いデザインだけに限らず、本来は技術的に新しくても、その結果見た目が斬新であれば、意匠権を取得しようとするケースも多いですね。例えば先に述べたように、新しいタイヤの溝の形状なども意匠の保護対象になります。

あとは最近法改正があり、アプリやWeb画面のUI、UXも意匠権による保護対象のため、そのようなWebサービスを提供している会社や、最近では建築物の内装や外観も保護対象になったため、施工主や設計事務所さんが意匠権を取るケースも出始めてきています。

Webのデザインでも意匠権が取れるのですね!デザイン全てが保護対象になるのでしょうか?

Webデザインも保護の対象になりえますが、全てが対象というわけではありません。例えば、何か情報をWeb上で入力させたり、ボタンをクリックさせたりなど、何かしらの操作機能や表示機能が発揮できる画面が意匠法で守られる対象になります。単なるデザインだけでは守られないので、そこが意匠権の難しい部分でもあります。「これは意匠権になるのか?」と迷われた時は、申請前に弁理士などの専門家に相談した方が良いかと思います。

もうひとつ気をつけなければならないのが、意匠登録する際は、新規性、創作非容易性という、要は新規のデザインであり、簡単に同業者が思いつかないようなデザインであるとう要件が求められるので、例えば、出願前にWebサイトを公開してしまうと、その時点で新規性が失われて権利化できなくなります(救済措置はあります)。もしWebデザインで意匠権を取りたい場合は、なるべく公開前に出願をしておく必要があります。

画面のUIも意匠で保護できるのでしょうか?

UIも、例えばタブレット上に表示されるアプリやWebサービスの画面でも対象になります。ただ先に述べたように全てが対象になるわけではなく、表示されているUIが何かしらの操作を受ける画面や、何かしらの情報(例えば時刻)を表示している画面がUI意匠の対象になります。ただ画像や動画、テキストなどを表示しているだけの画面は対象にならないので、そこがややこしいところですね。

ちなみに画像の意匠ですが、法改正によって、タブレット等の画面に表示されているものだけではなく、壁や地面などに投影されるような画像も保護の対象になりました

意匠権はどのように活用していくのが良いでしょうか?

例えば、ただ単にUIをうまく工夫し、位置や色合いを変えたというだけでは、進歩性が認められにくく、特許にはなりづらいです。ですが、そのUIのデザインが他には無く、真似をされたくないのであれば、その画面について意匠登録出願するという方法があります。特にUIに力を入れている会社は、そのように意匠を活用すると良いかと思います。

意匠登録出願は、実は特許出願に比べての10分の1程度しか出願されておらず、また使い道が少し難しい権利でもあります。特許は文字ですが、意匠は見た目に依存するため、権利範囲が狭くなってしまうのです。ただ、出しておけば少なくともその部分は他に真似されにくくなります。

また、海外ですと、iPhoneのホーム画面のアイコンの表示が意匠権(Design Patent)で保護されており、Samsungとの訴訟では有効に活用されています。自分のプロダクトを守るという面でも、Webサービスなどのリリース前に専門家に相談してみるのが良いかと思います。


次回の『スタートアップのIP!Q&A』は2月19日(金)に公開予定です。お楽しみに!

スタートアップのIP!Q&A #1商標権について

 



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