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【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.11 ワコール知的財産部が考えるパートナーシップ

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株式会社ワコール
知的財産部 知財企画管理課
伍々 達彦さん

本日はワコール知的財産部が考えるパートナーシップについてお話しさせていただきます。

まずは、ワコールについてご説明いたします。

株式会社ワコールは、インナーウェアを軸とした繊維商品を生産・販売する事業を行っています。一般のお客様に商品を購入・着用していただくBtoCの会社です。

1946年6月15日に創業、1949年11月1日に法人となりました。一昨年11月に、創立70年を迎えた、京都に本社を持つ企業です。

グループ全体の従業員数は約2万人、グループ会社数は65社となります。日本国内の女性従業員比率は約9割、このうちの半数を店頭の最前線で活躍する販売員が占めております。

 

「自ら作って自ら売る」

 

ワコールは「自ら作って自ら売る」というビジネスモデルを取り入れています。実はこれはアパレル事業では非常にレアなケースです。

現在のアパレル産業の中でも「ファストファッション」と呼ばれる分野では、収益性の低い生産・製造に関わる工場を持たない「ファブレス」が主流です。

つまり「商品企画をしたあと完成した商品を仕入れて売る」という収益性の高い部分に特化したビジネスモデルです。

一方ワコールでは、商品開発から生産、販売も含めたすべてのバリューチェーンを自社で保有しています。

たしかに製造現場を持つことは収益性に影響を及ぼす側面もあります。しかし、本ビジネスモデルを継続することで、品質の高い商品を安定的に生産し、お客様のもとに届けることが可能です。

 

研究開発の源である「人間科学研究所」

 

次にワコールのものづくりの出発点、研究開発の源である「人間科学研究所」についてご紹介します。

人間科学研究所では、美の創造の基本となる女性の身体の視点から「美」、「快適」、「健康」を研究しています。

1964年に設立し、人体研究や製品評価研究、新製品研究などが主な活動内容です。

約55年の活動から数多くの人体計測データが蓄積され、製品開発に活かされています。

人間科学研究所による直近の研究が製品化につながったものがあります。長年にわたり、研究所では「体の動きとバスト」について研究を続けてきました。その中で、今回新たにバストを覆う皮膚と重力に注目し、重力によってバストが揺れたり流れたりするたびに皮膚が伸ばされることを確認したことから、ワコールでは初となる無重力状態でのバスト計測を行いました。その結果、無重力状態でのバストは底面が上がり丸に近づき、皮膚への負担が少ない形状、つまりは重力から守られている状態であることが分かりました。

このような実験・研究をもとに、2020年に重力からバストを守るブラジャーが誕生しました。

 

ブレストケア活動とブラリサイクル活動

 

そのほかに、事業以外では「ブレストケア活動」や「ブラリサイクル活動」などを行っています。

ブレストケア活動は、CSR活動の一つです。

女性にとって罹患率が最も高い病気である、乳がん。ワコールは、女性のインナーウェアを事業の中核に据えている企業として、乳がんの早期発見につながるよう、ピンクリボン活動や乳がん検診のサポート事業を行っています。

また手術を受けた女性を対象に、術後の日々をサポートする製品も作っています。

 

知的財産部としての取り組み


次に、知的財産部についてご紹介いたします。

1954年に初めて実用新案を取得し、1966年には海外でも特許を取得しました。

創業当初から知的財産には意識を高く持ち、取り組んでいます

1993年には特許商標グループとして組織化され、現在では知的財産部として人員12名で知財活動を行っています。

活動内容については上の図の通り、権利化、権利の管理、そのほか模倣品対策などの活動を行っております。

また、コロナ化における話題としまして、医療現場で不足している医療用ガウンの製造を、厚生労働省の依頼を受けて約50万枚ほど生産いたしました。

今後も縫製技術を通して社会課題解決に向けて貢献していきたいと考えております。

 

オムニチャネル戦略「3Dsmart&try 事業」

 

前半の説明で「自ら作って自ら売る」というワコールのビジネスモデルをご紹介しました。

インナー業界は参入障壁が低く成熟した業界であるため、多くのプレーヤーと競争していかなくてはなりません。

またこれからの時代、商品だけではなくお客様一人ひとりに新しい顧客体験が必要とされています。

 


新しい顧客体験を実現した一つとして、ワコールのオムニチャネル戦略である「
3Dsmart&try事業」を進めています。

3Dsmart&tryは、デジタル技術を活用した新しい接客サービスです。

3Dボディスキャナーの計測データから体型の特徴を判定し、様々な情報をもとに、接客AI技術によりお客様に合う商品を提案できるというシステムになっています。

 


更に詳しくご説明しますと、3Dsmart&tryは
5秒で全身を測定でき、操作もセルフで行える無料のシステムです。測定データはお客様自身でご確認いただき、人間科学研究所の研究データをもとに構築された接客AIによる商品提案を受けることができます。

気になった商品を店頭で確認できるのはもちろんのこと、後日ワコールのWebストアなどお客様一人ひとりにあったチャネルで購入することも可能です。

店頭で接客を受けるのが苦手な方でも、自分の正しいボディサイズを知ることができるのが本システムの強みであり、若い方の指示も得ています。

このように顧客体験を変革し、顧客との長期にわたるリレーションマーケティングを実現することにより、生涯ワコールのお客様となっていただけることが、ワコールのオムニチャネル戦略「3Dsmart&try事業」の本質です。

さらにこのオムニチャネル戦略により、国内でも屈指のパーソナルボディデータを軸にしたビジネスを行う会社になることを目標としています。

また、お客様との関係性を店舗やECに関わらずシームレスにつなぐことで新たな商品やサービスを創出し、お客様の価値観の変化に対応しながら成長していくことを目指しています。

現在、3Dsmart&tryは十数店舗に導入しており、今後はさらに多くの店頭導入を進めていく予定です。

これにより顧客データを活用した研究開発による新たな製品やサービスの開発、他産業との協業も視野に入れた新しいビジネスチャンスの開拓など、さらなる成長のエンジンにしていきたいと考えています。

 

知的財産部が挑戦する新たな技術領域

 

このようにワコールは、オムニチャネル戦略で大きく変わろうとしています。これに伴い知的財産部としても取り扱う技術領域が大きく変化しました。

これまで対応していた技術領域は「モノ(商品)」に関するものがメインで、下着の構造やデザイン、使用される材料、製造方法などに関してでした。

しかし3Dsmart&try事業により、デジタル技術という新たな領域に挑戦しております。デジタル技術には、3D計測、3Dモデリング、接客AIなど、様々な技術があり、今までに経験したことのない新しい技術領域です。

 

外部パートナーとの共創により実現

 

新しい技術領域に踏み込んではいるものの、3Dsmart&tryの開発は自社技術のみで実現したわけではありません。デジタル技術を持つ他社との共創により生み出されました

そのためデジタル技術を理解し、開発された技術をクリアランスしたうえで特許を取得するだけでは手続きとして不十分です。

パートナー会社が得意とする分野で、互いがwinwinの関係になるよう細心の注意をはらい、共同開発などの契約を結ぶ必要があります。

つまり新領域の技術を知るだけではなく、互いのビジネスを知り、共創する新ビジネスがスムーズにスタートを切って発展できるよう、知的財産の観点からあらゆるリスクを想定して回避していくことが、私たち知的財産部に課された任務になります。

この課せられた任務を遂行していくのは、限られたリソースのなかでは並大抵のことではありません。そこで頼りになるのが、特許事務所の皆様をはじめとする外部のパートナーになります

従来は、技術情報を特許事務所に提出し、クリアランスや権利取得を中心にお願いするという流れが主流でした。しかし新領域へと踏み出すにあたって、依頼内容を変えなくてはいけません。

なぜならどのような領域でもスムーズにビジネスを行うために、知的財産の観点からあらゆるリスクを想定して契約を結ぶという法務的な業務を行う必要があったからです。

幸いにも、現在お付き合いのある特許事務所に弁護士の方が所属していらっしゃるため、法務全般の業務もサポートしていただいています

このように従来の商品に関する権利取得や侵害回避を主とする活動から、他企業と共創し新ビジネスを展開していく上での幅広い知的財産活動へと変化していきました。

したがって、私たちは特許事務所をはじめとしたパートナーの方々に、技術情報のみならず技術戦略や事業戦略などのビジネスに関わる情報を伝えることが求められます。それをもとにパートナーの方々が、権利取得や侵害回避以外にも法務面を含む幅広いサービスを提供してくださることは、非常に心強いと感じています。

弁護士も所属する事務所であれば、契約などの法務全般を含めたサービスをご提供していただけると思います。しかし、すべての事務所がそうであるとは言い切れません。

また私たちもそうですが、IPランドスケープの類に手を付けたいと考えつつも、社内リソースが不足しており「外部に知財コンサルティングを求めたい」と考える企業も多く存在しているのではないでしょうか。

このようなことを踏まえると、法律事務所、特許事務所、IPコンサルティングなど様々な事務所の間でも共創やパートナーシップを結び、ワンストップでサービスをご提供していただくことが理想的だと感じています。ワコールを含め、自社人員だけでは対応しきれないという会社からの需要は非常に高いといえるでしょう。

皆様にとって、このセミナーが何かの気付きになりましたら光栄です。

ご清聴ありがとうございました。

 

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