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【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.4 特許事務所がスタートアップ企業と付き合うために必要な作法 ~弁理士会ベンチャー支援部会からの提言~

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近年、知財業界ではスタートアップ企業の知財支援にも注目が集まっています。特許事務所の方々もこれからは大企業だけでなく、スタートアップ企業との関わりが増えていくのではないでしょうか。

しかし、大企業とスタートアップ企業とでは様々な違いがあるため、従来のやり方ではうまくいかないケースも多いのが現状です。

今回は、スタートアップ企業に詳しい方々のお話をもとに、特許事務所とスタートアップ企業の関わり方について説明していきます。

 

【パネラー】

・安高 史朗さん
IP Tech特許業務法人 代表弁理士・公認会計士

・市川 茂さん
LeapMind株式会社

・竹本 如洋さん
瑛彩知的財産事務所 所長弁理士・米国弁護士(ニューヨーク州)

・廣田 翔平さん
グローバル・ブレイン株式会社 ディレクター・弁理士

 

大企業とスタートアップの違い

 

竹本さん
大企業とスタートアップの違いということですが、まず大企業には2つの特徴があります。ひとつは、業務がルーティン化されているという点です。大企業は、毎年何百件という数の出願をします。これらの出願は事業部ごとに分かれて手続きを行っており、組織全体としてもノルマとして出願数を決めているところが多いです。

次に、改良の発明が多いという特徴もあります。すでに出願済みの発明を改良して再度出願するケースもあります。この場合は、前回の出願分との差分を提出するだけなので手続きも非常にスムーズです。差分を出し続けることで企業の成長にもつながるため好循環といえるでしょう。

続いて、スタートアップの特徴ですが、ひとつは、知財活動の基盤ができていないことが挙げられます。スタートアップの場合は、そもそもの活動基盤がしっかり形成されていないところが多く、初めて1件目の出願をするという会社がほとんどです。

次に、出願済みのサービスや製品の大型アップデートが行われることがあります。

多くのスタートアップ企業では、すでに出願しているサービスや製品を毎年改良していくのではなく、大きく変更することもあります。

ある程度資金力が整えば、組織として仕組みを作って大量に出願していくことも可能です。

しかし資金が潤沢ではないスタートアップ企業については、ビジネスに直結するものを厳選して出願していくというやり方を取らざるを得ません。

 

安高さん
スタートアップ企業はこれまでに仕組みや実績がない分、手探りの状態でやっていくことが多いです。そもそも知財担当者がいないということもあります。

「何をやっていいのか分からないが、課題感だけある」とお困りの方がスタートアップ企業には多い印象です。

 

廣田さん
スタートアップ企業の課題は、社内に知財を分かる人がいないことが挙げられます。

そこで特許事務所側がスタートアップ企業と関わる際は、知財に関する知識がない方と接していくということを意識することが非常に重要だと考えます。

まとめると、大企業とスタートアップ企業の違いは、社内に知財の知識を持っている人がいるか、知識の浸透度になってくると思います。

 

安高さん
特許事務所が大企業と関わる場合は、企業側から言われたことをしっかりこなすことが求められます。一方でスタートアップ企業と関わるときには、「何をするべきか」という提案から始めなければいけません。クライアント側の立場に立って考えることが必要ですね。

 

市川さん
大企業とスタートアップ企業とでは「特許をどうやって使うのか、どうして取得する必要があるのか」という認識に差があると感じます。

そういう意味では、ルーティン化している・していないという知財活動の仕組みづくり以前の課題とも言えるのではないでしょうか。

スタートアップ企業の場合は、知財活動に関するプリミティブな意識の共有化から始めなければいけません。

 

安高さん
つまり、クライアント側に知財のことを分かる人がいるか・いないかという部分が大きな違いといえますね。

特許事務所のお立場からはどのように感じますか?

 

竹本さん
特許事務所としてやりやすいのは大企業です。特許となるポイントなど、出願から取得にかけての流れを把握しているからです。事務所側からのアウトプットの質を評価してくれるという点でやりがいを感じます。

一方で、コミット具合はスタートアップ企業の方が大きく、同様にやりがいを感じます。一つ一つの手続きやサポートにより一層強い責任感を持って取り組めて達成感があるからです。

大企業とのやりとりを通じて培ったノウハウをスタートアップ企業とのやりとりで反映できていることもあるので、それぞれに良さと違いがあるといえます。

 

スタートアップ企業=「スピード感」

 

安高さん
ここからは、大企業とスタートアップ企業の違いを踏まえて、スタートアップ企業にとって良い知財専門家がどんな人であるべきか話し合っていきたいと思います。

 

市川さん
まず、大企業とスタートアップ企業との違いで挙げられるのは「スピード感」です。例えば、検証を出すのに1か月かかるか、3か月かかるかの違いでギャップを感じることがあります。

スタートアップ企業に好まれるのは、早め早めの行動をする人だと思います。温度感を共有しながらできると、やりとりを進めやすいですね。

また技術面に関しても知識を持っていると話が進めやすく、信頼度を高めるきっかけにもなるでしょう。

 

安高さん
たしかに、スタートアップ企業の特徴としてよく挙げられるのは「スピード感」です。しかしスピード感と一概に言っても、とらえ方は様々なので注意すべきとも感じます。

例えば、出願までの「スピード感」なのか、コミュニケーションにおけるレスポンスの「スピード感」なのか、を見極めていくことが重要なのではないでしょうか。

 

廣田さん
個人的には、後者のコミュニケーションにおけるレスポンスの速さが重要だと感じます。全体のスケジュール感については事前に説明することで共有可能でしょう。

大切なのは「何をどうしたらいいのか分からない」と困っているスタートアップ企業に対して、迅速に誘導できるかどうかだと思います。

信頼関係を深めるきっかけにもつながるはずです。

 

安高さん
スタートアップ企業はやりとりや意思決定が早いことが特徴です。知財専門家側もスタートアップ企業特有のリズム感をとらえてレスポンスを早くすることが求められていると言えるでしょう。

また、スタートアップ企業には知財に関する知識を持った人材が少ない点を踏まえると、弁理士側から様々な提案をすることも重要だと感じます。

具体的にスタートアップ企業と関わるときに気を付けていることはありますか?

 

竹本さん
まず最初に特許の話はせず、ビジネスのヒアリングから入るようにしています。事業に必要であれば特許出願をするということを最も重視しており、特許出願を目的にしないようにすることが大切かもしれません。

 

安高さん
スタートアップ企業とのやり取りにおいては、予算感をつかむことも重要です。

事業の状況やファイナンスの状況のヒアリングをすることで、出願の意思決定やタイミングを最適に行うことにもつながります。

 

おすすめは複数の事務所を使い分けること

 

安高さん
スタートアップ企業にとって良い弁理士の特徴が分かりました。では、スタートアップ企業が実際に弁理士や特許事務所を選び、依頼を進めていく際のやり方について話し合っていきたいと思います。

 

廣田さん
まず、事務所を選ぶ際に確認すべきは技術分野だと思います。ソフトウェアが強い事務所なのか、ハードウェア寄りなのか、このようなマッチングを最初に見ています。

スタートアップ企業側は、事務所名ではなく担当者との相性を見ることが大切です。当事者意識を持って取り組んでいるかどうか、深い関係性を築けそうかどうかを見極めることが重要だと感じます。

 

竹本さん
複数の事務所を使い分けるのもおすすめです。3つくらいの事務所を利用することで良し悪しがわかるようになります。

 

市川さん
私も実際に3つほど利用してやっと相性のいい特許事務所と出会うことができました。依頼する業務は非常に属人的なものが多いので、担当する方の器量が大切だと強く感じます。

最初から一つに絞るのではなく、いくつか事務所を見た上でいいところがあれば決めるという意識を持つといいかもしれません。

 

安高さん
クライアントの立場に立ち、親身になって提案をする弁理士かどうか。これを判断基準にすることで、その後の信頼関係の築きやすさや仕事の進めやすさにも繋がっていくと言えます。

 

まずは弁理士としての原点に立ち返る

 

安高さん
では、特許事務所とスタートアップ企業が関わるうえでの注意点や進め方のポイントについて改めておさらいしていきたいと思います。

 

竹本さん
まずは、レスポンスの速さです。多くのスタートアップ企業では、SlackやChat Workなどのコミュニケーションツールを利用します。

リアルタイムでやりとりを行い、すべての資料はオンラインで共有されるやり方がほとんどです。

このような文化を理解したうえで、細やかに接することが大切だといえるでしょう。

しかし中には綿密なコミュニケーションを取ることに苦手意識を持つ知財担当者もいます。

このような方は、じっくりと成果物を作って提出することに徹するというやり方を取るといいのではないでしょうか。

属人的な業務形態だからこそ、知財担当者の得意・不得意を見極めていき、個々に合ったやり方で仕事を進めていく。このような管理体制が、事務所には求められています。

 

廣田さん
スタートアップ企業の仕事は、決まった仕事がありません。何をしたらいいのかわからないところから始まります。

事務所側としても、大企業との仕事よりも負荷が多いと感じることがあるでしょう。

負担に感じてもなお取り組んでいきたい、と思えるようなモチベーションを持つことが求められています。

「個人として事業をどうしていきたいのか」という確固たる思いを持つことが、楽しく仕事を進めるコツなのではないでしょうか。

まずは弁理士としての原点に立ち返り、企業に対してどのように貢献すべきかを明確にする。そうすることで具体的な提案力にもつながり、弁理士・スタートアップ企業ともにいい関係性を築けると思います。

 

安高さん
スタートアップ企業は大変なことも多いのは事実。しかし弁理士や特許事務所側が、まずは自身の気持ちやモチベーションを明確にすることこそが最も重要、というのは確かにおっしゃる通りだと感じます。

 

市川さん
スタートアップ企業は資料や書類をオンラインで管理するのが主流です。しかしまだまだ特許事務所側は、紙で管理しハンコを使う文化が浸透しているところがほとんどですよね。

双方のやり方に歩み寄る姿勢を持つことも大切なのではないかと感じます。

 

スタートアップ企業の文化に浸透していく意識を持つ

 

安高さん
スタートアップ企業は、前提として知財に関する知識が足りていません。それを踏まえたうえで知財事務所や弁理士の方々は自身の気持ちを大切にし、関わることが何よりも重要です。

一件あたりにかかる時間、綿密なやりとりなど大変なことも多いですが、やりがいを持ってできる仕事という捉え方もできます。

またコミュニケーションツールやデータの送り方など、スタートアップ企業の文化に浸透していく意識を持つことも大切です。さらにスタートアップ企業側の立場に立って提案していくことも積極的に行っていくよう心がけていきましょう。

 

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