知財が生んだ、一次産業の新たなマーケット #1

インタビュー

 一次産業において、培わったノウハウや技術は競争力の源泉です。だからこそ、同業者にノウハウや技術を開示せず、企業秘密とすることが多いとされます。しかし、株式会社マルイチは、独自に開発した工法や技術を積極的に同業者に開示する戦略を取っています。
 株式会社マルイチが独自に開発した特許工法は、樹木をロープで確保し、チェーンソーでカット後、地面に落とすことなく揚重搬送システムで集積所まで運び出すことができます。これにより、効率よく、何より安全に、樹木を伐採することが可能となりました。
 独自に開発した技術を知財で守りながら安全工法を普及させる取り組みを行っている株式会社マルイチ 岩佐社長の、知財戦略で叶えたい一次産業の未来とは。

『職人のエンジニア化』

―そもそも知的財産と一次産業は結びつきにくいというイメージがあります。なぜ御社では、積極的に知的財産を活用しようと思ったのでしょうか。

 端的に言えば、職人技だけで稼ぐのは厳しいのです。例えば、国土交通省の公共工事設計労務単価では設計等に比べて、現場で働く職人の単価が低く設定されています。評価を高めて労務単価を上げようにも、職人は技術力が属人的で一定ではありません。そこで、私たちが考えたのは、職人をエンジニア化できないか、ということです。誰がやっても再現性がある、というのがエンジニア。エンジニアであれば誰でも一定の仕事ができるので、評価を改めてもらうことができるだろう。そのために知財戦略を始めました。

それで工法や使う道具などを特許出願されているのですね。

 はい。更に、これまでは10年現場仕事をやらないと身に着かないと言われていた技術を短期間で習得できる学習システムなども特許化しています。この特許をベースにした技術レベル認定制度も作り、これまでにのべ300名の同業他社の職人を受け入れて研修を実施しました。2級、1級、指導員とエンジニアの技術レベルに合わせて認定をすることで、技術レベルに合わせた難易度の現場で活躍してもらうことができるようになります。誰がやっても一定水準の仕事が、安全にできるようになるのです。

『市場拡大のためにも技術を開放する』

職人にとって、これまで培ってきたノウハウや技術を開示し、普及させることは、抵抗があるのではとも思いますが、そのような考えはなかったのでしょうか。

 そういう意味では、私たちが生業としている「特殊伐採」は、まだ生まれたばかりの産業と言えます。まず、産業として認めてもらい、新たなマーケットづくりをしていかなければいけない段階。そのためにも、新しい工法や道具を考え出しています。開発した技術を同業者に使ってもらえば、一緒に市場を広げることができますよね。

―市場づくりの仲間を集めているのですね。

 そうですね。そういう戦略で市場拡大を狙っているので、やはり知的財産の保護は欠かせません。惜しみなく技術を同業者に提供はしますが、知的財産を守りながら自分たちが中心となって技術を普及させていっています。それは、マーケットの拡大だけでなく、広がったマーケットにおいて、同業者が私たちの技術を利用することが当たり前となり、安全で安心かつ効率的な工法を普及させることで将来的な自分たちの売上にも繋がっていくのです。

「職人のエンジニア化」を実現するために知財戦略を始めた岩佐社長。
後編では、株式会社マルイチの今後の展望を語ります。

―後編へ続く

株式会社マルイチのホームページはこちら
https://www.maruichi01.co.jp/

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