『Leveraging IP for startups in Asia』Session at IVS Bangkok #3

イベント

2019年12月2日~4日に、タイ・バンコクにて「Infinity Ventures Summit 2019 Winter Bangkok」が開催されました。
3日に行われたセッション「Leveraging IP for startups in Asia」には、Aeronext Shenzhen Ltd. GM(総経理) 川ノ上 和文氏、Leave a Nest Singapore Private Ltd. 代表 徳江 紀穂子氏が登壇しました。NEST iPLAB 代表/iPLAB Startups 代表パートナー 影山 剛士氏をモデレーターとして、東南アジアベンチャーの現状や、中国の特許出願に関する事例などについてディスカッションしました。

【スピーカー 】
Aeronext Shenzhen Ltd. GM(総経理)
川ノ上 和文氏
Leave a Nest Singapore Private Ltd. 代表
徳江 紀穂子氏

【モデレーター】
NEST iPLAB 代表
iPLAB Startups 代表パートナー
影山 剛士氏

第一章の記事では、徳江氏による東南アジアのディープテックベンチャーの現状と東南アジアの知財事情について、第二章では、川ノ上氏による中国の知財に関する現状と事例をお届けしました。

最終章の本記事は、まとめとして、川ノ上氏が総経理を務める株式会社エアロネクストが中国において今後見据えている知財戦略や、徳江氏による今後東南アジアで審査の迅速化の制度を活用していくためにベンチャーが意識すべきことをお届けします

エアロネクストのポジションはライセンスビジネス

≪影山氏≫
中国でいうと、DJI、Tencent(テンセント)など、今となれば国際的な企業が大量の出願をするというのは理解できます。ですが、特に川ノ上さんが総経理を務める日本のドローンベンチャーのエアロネクストは、なぜ中国の南山区で特許出願を積極的に仕掛けているのでしょうか。今後中国でどういうことをしたいのかお話しいただけますでしょうか。 

≪川ノ上氏≫
ドローンベンチャーというと、DJIとどう違うのですかと必ず聞かれますが、DJIはドローンのメーカーですよね。エアロネクストはメーカーではなくライセンスビジネスを軸に事業展開をしていく戦略です。エアロネクストが作っている重心制御技術の特許ポートフォリオを強化しして、ライセンス提供をしてむしろメーカーと協業して作ってもらう。そのために、この1年くらいは深センのメーカー2社と、産業用ドローンのメーカーと連携をして、その辺りの可能性を探っている。とはいえ、中国のマーケットを初めから取りに行こうという考え方ではありません。ライセンスビジネスをやっていく上では、市場がないとそもそもライセンスに価値が出てきません。まだ産業用ドローンは市場が未成熟っていうのもあるので、市場をつくる側になっていく必要がある。その段階では、いかにアテンションを得て、この技術が産業用ドローンのスタンダードになるポテンシャルがあるというPRをしていかないといけない。そのうえで、どこの場所が一番効果的に情報の取得し、発信し、注目を高められるか、ショーケースになりやすいかを考えたときに、DJIの本社があり、ドローンのメーカーや関連企業が300社以上ある深セン、その中でもハイテクの中心地で、かつ知財に関する環境が整いつつある南山区を選びました。

東南アジアのベンチャーに選択肢を

≪影山氏≫
ありがとうございます。一旦東南アジアの話に戻りますと、実は日本とシンガポールの特許庁は、世界でも最速かつ質も高いといわれている審査制度を導入、実行しています。最近だとシンガポールでも中国企業のアリババが、3か月でAIに関する特許で特許査定を出しました。
シンガポールとASEAN各国の9か国間で審査協定を結んで、タイを含めて審査を迅速化して権利を早期に確保しようという、先進的な取り組みも東南アジアで生まれつつあり、日本の特許庁もそれに連携して、日本と東南アジアのベンチャー企業が早期に権利を確保できる仕組みづくりを実際に行っています。しかし、そのような審査の迅速化の制度を活用していくためにはどうしたらいいかというのが、今の課題であります。中国では、実際にベンチャー企業が、知財に関する連盟を組み、発信しながらお互いに知財活動を活発化していく取り組みもあります。
徳江さんにお聞きしたいのですが、今後東南アジアで審査を迅速化するための制度を活用していくために、それぞれのベンチャーが意識すべきことはなんでしょうか。

≪徳江氏≫
まずは、東南アジアのベンチャーに、日本で特許を取るという選択肢もあるということを知ってもらうために、教育していくことが必要かなと思っています。教育をしたうえで、選択肢をじっくりと見て、自分のビジネスにとって、日本で取るのがいいのか、それともシンガポールで中国も見据えるようなシステムを使ったほうが良いのかを理解していくことで、より効果的な知財戦略を作ることができるのかなと思います。リバネスとしては、我々が関わっているベンチャーに対しては、選択肢を見せてあげる、そして日本で必要なのであれば、我々のネットワークを使ってサポートしていきたいなと思っております。

量が質に変わる

≪影山氏≫
ありがとうございます。
最後に川ノ上さんにお伺いします。中国は出願件数はすごいですが、いち日本人として、今後中国で知財をビジネス化したり、活用していくためには、どうすればいいのかが気になります。中国の取り組みや国としての知財流通など、活用に関する取り組みを含めて、今後の中国の知財としての展開についてまとめていただければと思います。

≪川ノ上氏≫
これは中国のスマホを含む情報機器産業の成長がベンチマークになるかな、と考えていて、どのように量が質に変わり得る可能性があるのか、を見極めるのが非常に重要なポイントかなと思っています。今、特許申請件数は多いけど、それが本当に価値のある特許なのかを精査しながら、コアとなり得る知財の競争優位性の分析は強化していくつもりです。現状はまだ、競合に対して保護という観点が中心かと思いますが、それを運用・流通を見越した経営資源として戦略立てて取得する動きはもっと強くなるはずです。今のHUAWEIは、スマホだけではなく通信機器や通信技術、特に5Gにおいてアメリカを凌駕する特許数を1社で取得し、強い競争優位性をを持ち、グローバル展開を進めていますが、このような事例は特に注視しています。量が質に変わるっていうところは、日本人が思っている以上に、非常に早く進む可能性がある、と南山区の動きを見て感じています。ここ10年間で日本と中国の関係性が良好になり、知財活用の協議がされる反面、知財が米中貿易摩擦の争点の一つともなっています。急速に変化する中国に対して、日本から学びに行く機会が増えている昨今、学びのスコープの中に企業の知財戦略であったり、行政の知財環境づくりという点も入れていくことで、より精度の高い事業戦略の構築に役立つと思います。加えて今日ご紹介したように、深センの南山区や北京市の海淀区などの先鋒エリアの動向が大企業だけでなく、スタートアップの知財意識にどのような影響を与えていくのか、の視点を持ちつつ、まだ完成していない過渡期の環境づくりの今だからこそ、知財戦略を持つ日本のスタートアップ企業の中国知財戦略を考えるにはいいタイミングなのでは、とも思います。我々も積極的にインプットをし、専門家の方々と協議をしながら進めていきますので、またこのような場で進捗をお伝えできれば、と思います。

≪影山氏≫
ありがとうございます。
ちょうど時間になりました。
本日は、お二人から東南アジアと中国のリアルな現状をお話しをいただきました。
貴重なお話をありがとうございました。
皆様もご清聴いただきありがとうございました。

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