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『Leveraging IP for startups in Asia』Session at IVS Bangkok #1

イベント

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『Leveraging IP for startups in Asia』Session at IVS Bangkok #2

『Leveraging IP for startups in Asia』Session at IVS Bangkok #3

2019年12月2日~4日に、タイ・バンコクにて「Infinity Ventures Summit 2019 Winter Bangkok」が開催されました。
3日に行われたセッション「Leveraging IP for startups in Asia」には、Aeronext Shenzhen Ltd. GM(総経理) 川ノ上 和文氏、Leave a Nest Singapore Private Ltd. 代表 徳江 紀穂子氏が登壇しました。NEST iPLAB 代表/iPLAB Startups 代表パートナー 影山 剛士氏をモデレーターとして、東南アジアベンチャーの現状や、中国の特許出願に関する事例などについてディスカッションしました。

スピーカー
Aeronext Shenzhen Ltd. GM(総経理)
川ノ上 和文氏
Leave a Nest Singapore Private Ltd.
代表
徳江 紀穂子氏

モデレーター
NEST iPLAB 代表
iPLAB Startups 代表パートナー
影山 剛士氏

本記事(第一章)は、徳江氏による東南アジアのディープテックベンチャーに関する情報です。

課題解決のために急成長する東南アジアベンチャー

≪影山氏≫
近年は社会課題が多く、新しい技術やサービスも生まれやすい環境の中で、いろんなベンチャーが誕生しています。特に際立つのは、シンガポールに拠点を置くGrab(グラブ)などの配車系サービスだと思うのですが、昨今では、バイオテックやヘルステックを中心にディープテックも台頭してるなと感じています。徳江さんは、普段リバネスという会社に所属されて、東南アジアの、特にディープテック系のベンチャーとお付き合いされていると思いますが、ディープテックの中でもどんなベンチャーが台頭しているかをお伝えいただけますか。

≪徳江氏≫
リバネスは、日本にある会社で、2002年に設立しています。2010年からシンガポールでも活動しており、2014年からは特に大学発のベンチャーをサポートしていくテックプランターというプラットフォームを使って、それぞれの国にある多様な課題に着目しています。
東南アジアの中でもフィリピンは、島々がまだ十分に連携されていないので、離島医療の問題があります。病院に行くのに2時間もかかるため、テレメディスンの技術が必要だというベンチャーが出てきています。ただ、一緒くたに東南アジアといっても、課題は国ごとに色々なバリエーションがあるのです。マレーシアには、鉄塔の検査に人が行くのは大変なので、ドローンを使用して検査をしようと、aerodyne(エアロダイン)というドローンのベンチャーがあります。こちらは、2014年に立ち上がって、すでに世界6位になっています(2020年1月現在世界3位)。このように、急成長しているベンチャーも出てきています。その他、シンガポールは、ニッチな課題に向けた技術を使ってビジネスを始めるベンチャーが出てきている。東南アジアには、課題を解決するためにテストをする場所がたくさんあるので、そういった意味で勢いがあるのかなと思います。また、人が安心安全に生活できるよう、食や医療などの問題を解決するためにベンチャーが出てきているなという雰囲気を感じています。

日本企業が東南アジアのベンチャーに注目する理由

≪影山氏≫
ありがとうございます。
特にリバネスさんの場合は、日本の企業と東南アジアのベンチャーとのマッチングの部分を業とされていると思います。こちらのスライドでは、ベンチャー投資額が例えば半期だけで64億米ドルです。先進国の日本の企業が、東南アジアのベンチャーに注目する理由はどういうところだと思いますか。

≪徳江氏≫
実はリバネスは、アメリカやイギリスにも子会社があります。もともとは大企業がイギリスやアメリカに技術をハンティングしにいくことに興味があったので、一緒に活動を始めました。その中で、もし東南アジアにそれぞれの大企業が持っている技術を持って来たら、どんなニーズがあるのか、どんなマーケットがあるのかという議論になったのです。そこで、東南アジア各国のベンチャーがどのような課題を解決しているかを知ることで、大企業が求めているニーズの部分や潜在的なマーケットを見出すことができるのです。そこで、最近東南アジアのベンチャーを一緒に開拓させていただいているというのがあります。

東南アジアのユニコーン企業の特許件数が少ない理由

≪影山氏≫
シンガポールのベンチャー企業の累計調達額は81憶米ドルほどあります。
しかし、Grab(グラブ)など、ユニコーンといわれる企業が全く特許出願をしていないのが現状です。
私は個人的に特許の仕事をしておりまして、ここに課題を感じます。なぜ特許出願数が少ないのかと考えたときに、東南アジアと日本・中国・米国の各国特許庁に出願された件数の統計を比較をすると、中国が際立っているのが分かります。

先月、最新の統計が出ましたが、やはり中国が年間出願件数にして150万件を越えていて、世界の出願件数の半分くらいを占めている。日本も多少減少はありますが件数を確保しています。他にもUSが多数出願している中で、東南アジア各国の特許庁に出願されたというデータはほとんどないことがわかります。

また、各国の審査に係る年数の統計なのですが、タイの特許庁での審査に係る年数は平均8.3年です。今のところ、仮に特許出願を東南アジアでしたとしても、年数がかかってしまう事実があります。
特許が出願されていないと何が起こるか。特許がないので技術やサービスの優位性を確保できずに、結局は価格競争といったところに陥って、次第にその国または他の国での競争力を失ってしまいます。また、仮に他のプレイヤーが特許を持っていたらそもそも参入ができないこともある。ベンチャーとなると、特許を多く持っている大企業と対等な関係での提携が難しくなり、なかなかアライアンスなどがうまく進まないのかなと思います。
もう一つ徳江さんにお伺いしたいのですが、徳江さんがリバネスとして東南アジアベンチャーと一緒に仕事をされている中で、特許との関係でなにか課題などはありますか。

≪徳江氏≫
我々が関わっている大学発ベンチャーの視点から意見を述べさせていただきますと、ベンチャーを立ち上げたら特許を取らなければいけないことは分かっていても、審査に時間がかかるのでまだ出願していないというところは、確かに課題としてあるなと感じています。さらにお金もかかるし、先立つものがなく、サポートもない、どうやってやっていいのかもわからないという部分も課題としてありますね。そこについては、NEST iPLAB(※1)さんが東南アジアのベンチャーをサポートしながら一緒に取り組んでいってもらえたら、もしかしたら乗り越えられる課題のひとつなのではと考えています。

(※1) 2019年10月7日に株式会社リバネスとiPLAB Startupsが共同で設立した、東南アジアを中心としたスタートアップの特許の取得・活用の支援に特化した合弁会社。グローバルに、かつ迅速に、出願・権利取得を行うためのフレームワークを提供することで、東南アジアの有力なスタートアップ企業のグローバル展開を支援する事業を行う。

―第二章へ続く

第二章では、川ノ上氏による中国の深センでの特許出願の現状と事例をお届けします。

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