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【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.8(#2)米国企業の研究から分かった強力な特許を取るための戦略~効果的な2つのフレームワーク~

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この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

 

Vol.8(#1)①「トリプレックス特許ポートフォリオ」についてはこちら↓

【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.8(#1)米国企業の研究から分かった強力な特許を取るための戦略~効果的な2つのフレームワーク~

 

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②「プロアクティブ特許出願メソッド」

 

続いては、強い特許ポートフォリオを作るための特許出願方法「プロアクティブ特許出願メソッド」についてご紹介します。ここでは防御ポートフォリオの作成に焦点を絞ってお話します。

「プロアクティブ」とは、事前に先回りすることを指します。すなわち先回りで特許に関わる価値の最大化を目指すということです。

発明者から提案されたものをそのままにせず、「特許性強化」「防御性強化」「収益力強化」「ファミリー計画」の4段階のステージに従い、特許の価値が最大化するように発明を強化・改良して出願するようにしましょう。

この「プロアクティブ特許出願メソッド」を行うと、特許出願の登録率がぐっと上がり、防御力や収益力も増加します。

ここで「プロアクティブ特許出願メソッド」を積極的に活用している企業の事例を一つご紹介します。

この企業は5年くらい前に設立されたスタートアップ企業でした。製品開発の初期段階から「プロアクティブ特許出願メソッド」を利用して発明の内容を練ったうえで特許出願しています。この取り組みを3年間続けていった結果、強力なポートフォリオを形成することができました。そしてベンチャーキャピタルに巨額の投資を申請した際、特許ポートフォリオの質の高さを評価され、多くの投資を得ることに繋がりました。これにより革新的製品の開発とマーケティング活動をアグレッシブに取り組むことができています。

では、ここからは「プロアクティブ特許出願メソッド」にある「特許性強化」「防御力強化」「収益力強化」「ファミリー計画」の4つのステージについて詳しくご説明いたします。

 

ステージ「特許性強化」

 

1つ目は、「特許性強化」です。
特許性強化とは、先行技術調査に取り組むことを指します。

もし、先行技術調査を行っていないという企業があれば、必ずやってほしいと思います。

中には、先行技術調査に20~30万ものコストをかけるのはもったいないと思われる方もいらっしゃいますが、先行技術調査を行わないことは、敵情視察をせずに敵陣に乗り込むのと同じです。特許出願においては、出願してもほとんどが通らないという結末になりかねません。このような事態を回避するためにも、先行技術調査は必要です。

では、先行技術調査で何を行うかについてご説明いたします。

先行技術調査では、新規性・進歩性のある技術的特徴を明確にしていきます。

 


先行技術調査を行った結果、新規性・進歩性のある特徴が見つからないケースもあるでしょう。その場合は、諦めずに発明の改良と強化を行い、新規性や進歩性のある技術的特徴を作り出すことが重要です。

ここで、特許性強化の重要性を感じた事例をご紹介します。

5年前に、従業員60名ほどの会社から「新製品を開発したので特許出願をしてほしい」という依頼を受けました。

発明はとても斬新で素晴らしいものでした。しかし、出願に先駆けて先行技術調査を行うと、全く同じ発明がドイツの企業から出願されていることが発覚したのです。

そこで「今と同等もしくはそれ以上の効果が出る発明を考えましょう」と打診し、再度技術開発に取り組みました。そして、新たなアイデアを2つ生み出すことができ、アイデアの実現性や性能を再検討していきました。

その結果、新たに生まれたアイデアをもとに設計案を10個ほど考案し、合計5つの特許取得に成功したのです。

さらに、そのうちの1件は大企業からライセンスを利用したいと声をかけられ、多大な収益を得ることにもつながりました。

このように新規性がないからといって諦めてはいけないのです。

技術進化の過程からも分かるように、1つの発明が生まれた後はもっといい発明が生まれています。たとえ今考えた発明が無効だとしても、現状を超えるような発明の開発に努めることで何かが出てくることもあります。諦めないことが肝心です。

 

ステージ②「防御力強化」

 

2つ目は、「防御力強化」です。

ここでは発明が他社から模倣されることを防ぐため、防御能力を高める作業を行います。

 


まず、発明のチョークポイントを見つけ出します。

チョークポイントとは、目的を果たすために誰もが通らなければいけない道のことです。

発明におけるチョークポイントは、発明の目的を達成するために誰もが採用しなければいけない技術手段を指します。

これを特許という形で押さえることで高い防御力を形成することにつながります。

実際にチョークポイントを見つけようとすると、なかなか時間がかかるのが現状です。抜け道が多々あるので、都度防いでいかなくてはなりません。

すなわち自分の発明について迂回する発明を開発し、特許として押さえていくことが必要ということです。

何年か前にイスラエルのメーカーから、「現在他社が取得している特許を迂回する方法を見つけてほしい」という依頼を受けました。

詳しく話を聞くと、すでに迂回した発明を開発し、7件の特許取得を終えている状況でした。しかし見落としがあるかもしれないので、第三者の目線から改めて漏れがないか確認してほしかったそうです。見落としが発覚した際は、迂回策を検討し即特許出願をするという心構えでいました。

このように防御力が弱ければ特許が意味をなさないことを知っている企業は、防御力を高める努力を惜しまないのです。

 

ステージ③「収益力強化」

 

3つ目は、「収益力強化」です。

 


ここでは開発した発明で特許を取得した際にどの程度の売上が発生するのか、という期待できるリターンについて、商品の市場規模や特許の貢献度を考慮して算出します。

精度の高い評価は必要ありませんが、特許の取得によって発生した金額(100万や200万など)に対して、どれくらいのリターンがあるのかを考えていくわけです。

もし期待できる金額が特許出願に必要な費用と見合わない場合は、出願を見合わせて別の開発を行いましょう。

7~8年前にある機械メーカーの技術者が、私のもとにある発明を持ってきました。

こちらの会社では、工場に多く設置されている機械を作っています。この機械の部品は消耗交換が必要なもので、交換時期が近づくと自動でメンテナンス会社にアナウンスが飛ばされて郵送される仕様になっていました。

しかし、大きな事業所のどこに交換部品が置いてあるのかが分からないということが問題でした。事業所内で機械の設置場所の変更、部署の引っ越し、機械の交換などを繰り返し行っていた結果、だんだんと分からなくなっていったのが原因です。

この問題に対して技術者が開発したのは、機械の設置場所を一目で分かるようにするという発明でした。そのため個々の機械と、広大な事業所内の要所要所にあるハードウェアを設置しようと提案したのです。

しかし出願検討会では、発明に対して十分な利益が出るのかと疑問の声が上がりました。技術的には優れているものの、ビジネス的な視点では決定打に欠けると評価されてしまったのです。

これを受けて私は現段階の技術から改良しようと、1時間ほど時間をもらい内容を再検討しました。

資源探索という特別なテクニックを使って機械を分析すると、ハードウェアを使わずソフトウェアのみを改変するだけで設置場所がほぼわかるように改良することができたのです。

この結果、特許出願することができ、無事に取得に至っています。

このようにビジネス的観点からみて技術のクオリティが微妙だと感じても、どこかしらを改善することで何か新しいものが生み出せるはずです。

さらに収益力強化ステージでは、発明を別の分野で応用することや、競合他社に提供して収益を得ることなど、将来的なプランに発展させて考えることも可能になります。

 

ステージ④「ファミリー計画」

 

4つ目は、「ファミリー計画」です。

 


ここでは、1つの特許出願に対して1つの特許を得るのではなく、分割出願を繰り返して複数の特許を取るようにしていくことを目指します。

いわゆる「特許ファミリー」を作るために、積極的に分割出願を行っている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?

分割出願はコストがあまりかからずできるので、活用することをおすすめします。

例えば、最初の出願では2~3年後の商品を意識して確実に取得できる狭い範囲で出願し、手堅く特許査定をもらいます。そして、その次に分割出願を行うのです。このとき最初の出願でカバーできなかった技術範囲に手を伸ばすようにしましょう。また、情勢を見てライバル企業の類似商品をカバーできるような技術範囲を狙うのも一手です。

このように分割出願をできる限り繰り返し行っていきましょう。

ただし、最初に行った特許出願が拒絶査定になることもあります。その場合は、なぜ拒絶されたのか理由を分析し、分割出願で別の側面を狙って出願していき特許取得を狙うことも可能です。

このように、分割出願を行うことで、1つの出願からお互いの権利範囲を補うような複数の特許のポートフォリオを形成することができ、防御力を高めることにつながります。

先ほどステージ②「防御力強化」のところで例に挙げたイスラエルのメーカーも7件の特許を持っていたと申しましたが、これも全て1つの親出願から分割して取得していたものでした。

恐らく最初の出願をするときに、迂回のために様々な発明を検討したと言っていましたので、それらを全て盛り込んで出願内容を充実させて出願し、その後タイムリーに分割して特許を取っていったのだと思います。

さて、以上のプロセスをすべて行い、特許明細資料を充実した内容にするとなると相当な費用がかかってしまいます。

しかし、結果的に得になるのです。

 

米国企業は出願コストは抑えつつ、強力な特許を持つ


日本企業と米国企業とで、同じ売上に対して特許出願費用の総額と特許出願数のバランスを比較しました。

大まかに、米国企業は日本企業に比べて特許出願費用の総額は2分の1でした。また、出願の数は7分の1で、1つの特許出願にかける費用は3.5倍も大きいことが分かりました。

要するに、米国企業は1つの特許出願に対して日本の3.5倍ものお金と時間をかけて丁寧に進めているということです。その結果、出願数は日本企業の7分の1で、特許出願費用の総額も日本の半分ほどなのに、十分に強い特許を持つことができています。

今回ご紹介したフレームワークは、1つの理想的な姿であり、山の頂上のように目指して進んでいくための1つのゴールでしかありません。

大切なのは、この理想像を意識して、一歩でも近づけるようにプラスアルファの改善を日々の特許活動に加えてみることです。

例えば、出願検討会で今まではあまり行ってこなかったチョークポイントの明確化や迂回策の検討を30分くらい行ってみるであったり、発明者の方々に向けた特許意識改革のセミナーを開催してみたり、そのようなことからまずは初めて見ると良いかもしれません。

まずはできることから始めていき、プラスアルファの努力を積み重ねていった先の1年後、2年後に大きなリターンが返ってくるでしょう。

 

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