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【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.6(5)~パネルディスカッション第二部『知財戦略とイノベーション、知財を武器に市場を切り拓く』~

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Vol.6(4)はこちら↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.6(4)~パネルディスカッション第二部『知財戦略とイノベーション、知財を武器に市場を切り拓く』~

 

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これからは『買い上げアプローチ』が鍵

 

澤井さん
今日の命も大事、10年後、20年後の命も大事。私は、医薬品や医療技術の発展に向けて、開発者や研究者の皆様を委縮させないように、権利の帰趨というのは権利者自らが判断して使うべきだということを常に伝えるようにしております。この視点で高倉様、ご意見はございますでしょうか?

 

高倉さん
澤井さんと全く同じ意見なのですが、特に今新型コロナウイルスの関連で、医療の特許をどうするかという問題が今後ますます顕在化してくると思います。こういう緊急事態においては、私権である特許権を行使するとは何事かと、みんなで共有することが地球全体のためではないかという議論がきっと出てくると思うのですね。確かにそうなのですが、薬というのは決して天から降ってくるわけではなく、誰かがコストと時間をかけて努力してようやく薬が生まれているわけです。それを出来上がったからといって、タダで取り上げてみんなで使うということにすると、次のパンデミックのときに資本投入して新たに薬をつくるという企業が現れなくなる可能性もあります。やはり中長期的なバランスを考えて、両者の調整を図る必要があるだろうと思っております。

また強制実施権も、きちんとしたリターンが企業の側に戻るのであればいいのですが、過去10数年間のエイズ訴訟やエイズ対策関連で見てみると、強制実施権というのはほとんど特許権者にリターンがないというのが実態なので、なかなか難しいかなと思います。もちろん経団連、特に長澤さんが中心になって、知財を自主的に、自発的に、パブリックドメインに使ってもらおうというような動きもあります。私は基本はそれが一番いいと思うのですが、製薬企業に限っては、自社の本業に関わる部分において特許の価値をゼロにする、オープンにしてしまうというのはなかなか取れない決断だと思います。やはりパイオニアにはリターンが必要だと思うのですね。

この点について、私はひとつの出口があると思っていて、それは『買い上げアプローチ』です。市場の対価に近い合理的な対価で、製薬メーカーや特許権者が作った薬を政府が買い上げて世界の方たちに配る、というやり方が公共政策と特許のインセンティブを両立させるひとつの手段ではないだろうかという風に思っています。今WHOが進めてる『COVAX』というのは、実はまさにその発想なのです。いずれにしても、その社会的な公共の利益というのに対応するためのコストを、その薬を開発した企業の方に負わせるというのは、実は最悪の選択であって、みんなのために必要なものは社会全体でコストを負担するべきであるという風に思っていますので、ODAのお金や国際連帯税のような広く薄く集めたお金を使って、特許権者の特許製品を買い上げてみんなで配る。こういうやり方がひとつイノベーションと公衆衛生を両立させるひとつのやり方ではないかなと思っております。

 

『Open COVID Pledge』とは権利行使はしないという宣言

 

澤井さん
今ちょうどご紹介のあった『Open COVID Pledge』について、日本でこれを主導した長澤さん、何か一言補足いただけますでしょうか?

 

長澤さん
これは、無償で全部提供すると言っているわけではありません。道義的に考えて、COVIDと戦っている方々を差し止め請求で抑え込んでしまうということはやってはいけないことですよね。ですので、権利行使はしないと宣言しましょうというものになります。例えばPCR検査装置のユーザーインターフェースが、たまたまキヤノンが出していたカメラのユーザーインターフェースと似ているので差し止めてしまうとしたときに、これはやってはいけないことだろうという発想の人がみんなで集まり、一定の期間はライセンスではないので権利行使しないと宣言しているわけです。

これは基本的には『WIPO GREEN』と同じような発想であろうと思うのですね。もしこれを国やオーソリティがやってしまうと、予期せぬことが起きる可能性があります。権利者というのは、この権利はこういう使い方だから、無理に権利行使することはないということはよくわかっています。道義的にも正しいことをすると思っているのですが、やはり研究開発意欲をそいではいけないという意識も常に持ち合わせているわけです。その中でどういう風にコントロールするかというのは、やはり権利者に処分権があって決めることであり、その権利のことをよくわからない方に勝手に実施権を出されてしまうと非常に困る。国やオーソリティがやってしまうと、非常に悪いことが起こるのはアリババの例を見てもよくわかるのではないかと思います。

 

Vol.6(6)質疑応答へ続く↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.6(6)質疑応答~パネルディスカッション第二部『知財戦略とイノベーション、知財を武器に市場を切り拓く』~

 

Vol.6(4)はこちら↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.6(4)~パネルディスカッション第二部『知財戦略とイノベーション、知財を武器に市場を切り拓く』~

 

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