スタートアップのIP!Q&A #15 知財を資金調達に有効活用する方法
この記事を読むのに必要な時間は約 4 分です。
この連載では知財(IP)に関する読者の疑問をOne ip特許業務法人の澤井弁理士が解決していきます。この連載を通して知財や特許をより身近に感じてもらえますと幸いです。
第15回目のお悩みは「知財を資金調達に有効活用する方法」。
とあるリアルテック系スタートアップでお仕事をしているUさんからのお悩みです。
スタートアップのIP!Q&A #14 スタートアップが技術流出を防ぐには
澤井 周氏
One ip特許業務法人 パートナー
弁理士 博士(工学)
東京大学工学部産業機械工学科卒業、 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。大手素材メーカー、日本学術振興会特別研究員、都内特許事務所、 企業知財部を経て、2019年、R& Dと事業戦略とに密接した知財支援をさらに進めるべく、One ip特許業務法人に参画。企業知財部では、発明発掘、 出願権利化、知財企画、知財戦略支援、 研究者への知財教育等を担当。新製品・ 新事業モデルを見据えた知財戦略・特許網構築の支援に尽力。One ip特許業務法人では、主にクライアントの知財戦略支援、 クライアント知財管理、所内管理を担当。
Kさんのお悩み
資金調達を目指して事業を進めています。知財を資金調達に有効活用する方法を模索しており、ぜひ澤井先生にアドバイスをいただきたいです。
資金調達の際に知財は有効活用できるアイテムになり得るのでしょうか?
まず、資金調達をするのは、プロダクトのPoCを達成して次のフェーズに入ったり、量産体制に入ったりより広い販路を確保したりなど、開発や営業が必要になるタイミングだと思います。その際、積み上げてきた知財を投資家やVCにどう見せるかが重要です。
初期のスタートアップはモノもお金も人もありません。一方で、押さえるべき特許をきちんと権利という形で取得できているかどうか、また今後も継続的に取得しようとしているかどうか、会社名やサービス名の商標を商標権により保護しているかどうかを、資金調達をする際は見られることが多いです。
ですので、ここをしっかりケアしておけば、いざという時に「知財ケアをしっかりしている」というアピールになり、結果として知財を有効活用することができると思います。
知財を資金調達に有効活用する方法を教えてください。
知財が資金調達において重要になるシーンは、投資家へのピッチやアピールの場面です。今後、事業を進めていくうえで、他者との差別化を図るための重要な技術について特許出願をしていると、他社に容易に模倣されないことのアピールの一つになるかと思います。投資家やVCがこの企業に投資するかを判断する時のデューデリジェンスでも、知財についてチェックされることが多いです。また知財をアピールする際に、きちんと事業戦略を進めるうえで、その特許が経営戦略と強く紐付いているかを専門家に見てもらう事も重要です。
資金調達を成功させるために、知財戦略を進めるベストタイミングはありますか?
スタートアップの成長のステージにもよりますが、シリーズAなどの最初の大きな調達をする際は、特許を何件出したのか?どのような特許を出したのか?という話になります。事業計画に沿った知財戦略を構築できていると、投資家からの印象も良くポジティブな効果を発揮することができます。
中盤になり特許ポートフォリオが順調に構築されていけば、知財戦略が経営戦略の一角としてリスクヘッジやアセットとしての価値が見いだされ、IPOの際にもよい評価を受けることになると思います。
また、IPO直前においては他社の権利をケアすることも特に重要となり、さらに内部統制の観点や特許を出していくための社内制度、職務発明規定など、知財部的な組織の構築や社内知財リテラシーの育成活動等も求められてくると思います。ステージごとに求められる知財への関わり方は変わっていくので、その都度専門家と相談していくのが良いと思います。
次回の『スタートアップのIP!Q&A』は9月3日(金)に公開予定です。お楽しみに!
スタートアップのIP!Q&A #14 スタートアップが技術流出を防ぐには