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知財で経営を後押しする——特許訴訟を経験したマネーフォワードの知財戦略部が掲げるミッションとは #1

インタビュー

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

 

個人・法人向けにお金の課題を解決するサービスを提供する株式会社マネーフォワード。

スタートアップ時代からIPOを経て、今年1月には利用者数1150万人を突破しました。ここまでの人気を獲得された背景には、恐らく様々な戦略があったのではないかと思います。

今回は、マネーフォワードを知財面で支える知財戦略部部長 小日向 小百合さんに、マネーフォワードがどのようにしてスタートアップからIPOするまでに成長していったのか、またその途中で起こった変化や気づき、その中で知財をどのようにして活用していったかについてお話をお伺いしていきます。

 

#2(後編)はこちら

知財で経営を後押しする——特許訴訟を経験したマネーフォワードの知財戦略部が掲げるミッションとは #2

 

 

ー小日向さんがマネーフォワードにジョインされた経緯を教えてください。

前職のIT企業で知財部門の立ち上げを行う中で、より知財の方に専門性を高めていきたいと感じ、大学院にも通っておりました。実務と大学院での学びを活かし、より知財全般を考えた戦略的な知財推進に力を注いでいきたいと感じていた、そんな時、前職の同僚が務めていたマネーフォワードに遊びに行く機会があり、その場で担当役員とカジュアル面談をすることになったのです。そこで、知財部門を立ち上げたいという話があったので、マネーフォワードとfreeeの特許訴訟が起きた後、2019年春に正式にジョインすることになりました。弊社はもともと知財の専門部署は無く、私が入社後「法務コンプライアンス部知財グループ」としての活動を開始し、会社として知財の意識を高めて本格的に知財戦略を進めていこうという体制になったのは、昨年7月からになります。

 

ー知財戦略部の業務内容を教えてください。

知財戦略の策定が基本となります。事業戦略や研究戦略と三位一体になり同じ方向を見て、取るべき権利を考えています。知財戦略を策定したら、それをきちんと推進していくのも仕事のひとつです。弊社は様々なプロダクトがあり、グループ会社もあります。知財担当者はきちんとそれぞれの事業を理解し、各担当者とコミュニケーションを取ることが大切だと考えています。

その他、知財リテラシーを上げるための社員教育、権利化のための出願、情報発信などを行なっています。最近は特に情報発信を重要視しており、知財に関するニュースをわかりやすく説明して発信したり、意識する機会を提供することが重要と考えています。

 

ー知財戦略部のミッションを教えてください。

一番大切にしているミッションは、経営と同じ方向を見ながら、きちんと経営を後押しできる体制を作り、知財戦略を推進することです。事業戦略・研究戦略と三位一体で会社のMission・Vision・Valueを実現していくこと。知財戦略には特許だけでなく意匠や商標、著作権の権利や保護、不正競争防止法や表示規制など、あらゆる側面があります。会社の事業内容や状況を見ながら優先順位を考え、ビジネスの成長を後押しすることを重要視して取り組んでいます。

 

ー特許訴訟の前後で、社内の知財に対する意識は変わったと感じますか?

一般的に、IT企業にはオープンソースの文化が根強くあります。私は前職もIT企業でしたが、「特許は、オープンにして発展させていくというITの考えと相反するもの」というイメージを持っているエンジニアが多くいました。以前のマネーフォワードでも同じことが起きていて、技術を特許で独占して閉ざすのではなくオープンにして発展させようと考えていた最中、特許訴訟が起きました。「他者が持つ権利によって、自分たちのサービスが世の中に届けられなくなるかもしれない」という危機感を持ったのが、会社として大きなターニングポイントだったと思います。

技術を発展させていきたいという思いがあるのであれば、きちんと自分たちのサービスを継続して届けられるよう取り組まなければならない。そこを身にしみて感じたのが、あの特許訴訟だったのではと考えています。知財戦略を進めるには経営陣の理解も必要で、そこを頭で解っているのと体験して感じたのとでは知財の捉え方や考え方が変わります。その点で、弊社の役員陣は経営戦略の中に知財をしっかりと組み込み、同じ視点で知財戦略を考えてくれていると感じます。

 

ー社内で知財を推進していくうえで苦労したことはありますか?

事業理解が自分にとって一番の課題です。弊社は個人向けサービスの他、法人向けクラウド会計サービスなど、幅広い事業を推進しております。私自身、会計の経験がありませんし、クラウドサービスという自分が普段使わないプロダクトを理解しなければいけません。知識を得るために担当者とコミュニケーションを取ったり、同じ視点で学べるよう勉強会に混ぜていただいたり、コロナ前は開発拠点に足を運んでいました。受け身ではなく、自ら学ぶためのアクションを起こすようにしています。

 

ースタートアップにおける知財の重要性についてどのようにお考えでしょうか?

スタートアップはプロダクトが十分にあるわけではないので、万が一そのプロダクトが他者の権利に抵触していたら事業がストップしてしまいます。ブランディングはファン作りだと考えていて、ファンをどう増やそうか、何で増やそうかと考えた時に、商標的な考え方もあれば技術的な信頼を得るという考え方もあります。コンプライアンスの観点からはどうすればユーザーやクライアントの皆様に信頼してもらえるのかは最初の段階から考えていた方が良く、そこは知財戦略を考えることとマッチするのではと思います。

知的財産は、特許や商標など様々な権利があります。自分たちにとっての重要な知財は何なのか、それは自分たちの業界や事業、実現していきたいことから考えていくべきです。先を想像し、他者との差別化や自分たちのミッションを実現させる方法のひとつとして、事業戦略と同じように知財戦略を考えられると良いのかなと思います。

 

#2(後編)はこちら

知財で経営を後押しする——特許訴訟を経験したマネーフォワードの知財戦略部が掲げるミッションとは #2

 



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