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知財が企業価値を最大化するーーIPO4社の支援実績を持つ”レンタルCIPO”の知財キャリアとは #1

インタビュー

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知財戦略を意識するスタートアップが少しずつ増えてきている昨今。特にIPOを目指すスタートアップは知財がダイレクトに企業価値に結びつく可能性も高いため、以前より業界全体の知財意識が上がっているように感じます。

しかしながら、社内に知財部を設置したり、専属の知財専門家を採用し雇用を維持していくことはスタートアップにとっては厳しく、またスタートアップに寄り添いながら知財戦略を考えてくれる知財専門家もまだまだ少ないのが現状です。

今回の記事では『レンタルCIPO』というサービスを生み出し、これまで上場企業からスタートアップまで数々の企業を成長させてきた株式会社MyCIPOの代表取締役である谷口 将仁さんに、『レンタルCIPO』が生まれた経緯や実際に導入している企業の声、今後の展望などをお伺いしていきます。

 

#2はこちら

知財が企業価値を最大化するーーIPO4社の支援実績を持つ”レンタルCIPO”の知財キャリアとは #2

 

 

大手企業に真似された失敗経験から知財の道が開けた

 

ー谷口さんの知財キャリアはいつから始まったのでしょうか?

新卒でスタートアップに入社し、製品やサービスの新規事業の立ち上げを担当していました。スタートアップなので専門部署というものが無く、新規事業開発をする中で知財関連も自分たちで行うことが多かったのです。そんな中で、隣の部署が世界初のテクノロジーを使ったサービスを展開していたのですが、特許を取得せずに進めてしまった結果、大手企業に真似されてしまいました。そんな失敗経験から、私の部署では新規事業の立ち上げと特許出願はセットで展開しなければならないという認識が芽生えました。それが、私が知財の道に進むことになったきっかけです。

新規事業を成長させるためには、お客様の心を掴む製品やサービスでなければなりませんでした。つまり、顧客バリューが重要でした。そこで、新規事業の立ち上げと知財戦略をセットで考えると、当然のように知財戦略も顧客バリューを基点に考えるべきであると考えるに至りました。

この経験から知財の重要性を知り、「もっと専門性を極めたい。」と思い、電機系大手企業の知財部に転職しました。

 

ー大手企業の知財部ではどのような業務を担当されていたのでしょうか?

電機系大手企業には9年ほどおり、発明の発掘から権利活用まで一通りの知財業務を担当していました。スタートアップで新規事業を立ち上げた経験を活かし「顧客バリューを基点に、この事業を成長させるにはこの知財戦略が必要だ」と目利きをしていたのですが、当時20代半ばの自分が知財戦略を提案しても受け入れてもらえないという事が多々あり、スタートアップに戻ることを決めました。しかしながら、電機系大手企業で非常に多くの事業の知財業務を担当できたことは、私の人生で宝物になりました。

 

ー大手企業から、またスタートアップに転職されたのですね。

はい。2014年に株式会社オプティムに知財戦略責任者(CIPO)として入社しました。その頃のオプティムは、当時MDMと呼ばれていたスマホの遠隔管理マネジメントシステムを販売しておりましたが、事業の軸をAIやIoT、ブロックチェーン、ビッグデータの新規事業にシフトチェンジする時期でした。ここでも、スタートアップで新規事業を立ち上げた経験が活きました。

AIやIoT、ブロックチェーン、ビッグデータの新規事業を立ち上げるにあたり、これまでの経験を活かして知財戦略のアイディアをどんどん提案していきました。オプティムの社長は知財マインドがとても高く、事業戦略と知財戦略の両軸を持ちながら進めることができました。社長を中心に会社一丸となって推進できたことは大きな成功要因です。

社長自身がオプティムの事業の起案をしており、会社一丸となって「この事業を成長させるために何が必要か?」を検討しながら進めます。そして、事業の成長を最大化させる武器の一つが知財戦略です。知財戦略の全体をデザインする中で、社長に渡された一行のメモから、「顧客バリューを基点に、この事業を成長させるために必要な発明は何か?」を考えて、発明提案書を作成して権利化する作業を行うことは非常に楽しい経験でした。

現在のお客様はスタートアップや大企業の方まで幅広くいますが、特にスタートアップは発明提案書を書ける人が社内にいないため、オプティムでの経験はとても活きています。経営者や事業責任者から事業の概要をお聞きして、「顧客バリューを基点に、この事業を成長させるにはこの特許が必要です」と提案し、発明提案書を作成して特許を取得して事業の成長を最大化させることは、私の中で最も得意とするスキルの1つになりました。

 

戦略なしに特許を取得するだけでは意味がない

 

ーオプティムでは、どのような知財戦略を進めていましたか?

オプティムでは、顧客バリューを基点に知財戦略をデザインして進めました。つまり、ユーザーが製品に魅力を感じる部分、製品を選択する理由になる部分を知財で独占する、という戦略です。その結果、オプティムの製品にはお客様の心を掴む要素が沢山あるが、競合製品にはお客様の心を掴む要素を搭載させないという状況を創り出すことに成功しました。例えば、農業ITや医療ITは今やオプティムの中で一番大きな事業になりつつありますが、まず誰がどのような状況で使うのか?そして、その人はどのような課題を抱えているのか?だとしたら、その人が製品を選ぶ理由は何になるのか?そういうところから知財を考えていました。

顧客バリューを基点に、ユーザがその製品を選ぶ理由と、その理由を実現するアイディアを全て書き出す。アイディアを全て書き出したら参入障壁となる発明を考え、知財を抑え独占する、そのように特許ポートフォリオを構築しました。知財戦略は、お客様のための知財戦略なのです。例えば、農業ITでは、顧客バリューを見つけるために、実際に農業を数ヶ月体験するメンバーもいました。そして、取得した特許は数百件になりました。

また、コーポレートガバナンスとして、IRも含めて中長期的な知財戦略をステークホルダーに知らせることも重要です。これらの結果、オプティムは特許庁から知財戦略の成功企業としてご紹介いただいています。

 

ーオプティムでのご経験から、知財戦略において重要なことは何だと思いますか?

知財戦略は、お客様のための知財戦略ということです。常にお客様の視点を持ち、顧客バリューを基点に知財戦略をデザインすることが重要なのです。本当にその知財はお客様の心を掴むのか?を常に考えなければなりません。特にスタートアップは使える予算も少ないので、無駄な知財を取得している場合ではありません。確実にお客様の心を掴む知財を取得すべきです。また、メンバーのリソースが限られるスタートアップは、真似した誰かを刺しに行く余裕はないので、最初から競合に使わせないようにアピールすることも重要です。全てのリソースの使い方まで考えて、賢く戦略を考えなければなりません。

オプティムはIPOした際、同業他社の数倍の企業価値がつきました。企業価値を最大化してIPOするには、会社の成長を最大化し、将来の成長ストーリーの信頼度を上げる必要があります。顧客バリューを基点に知財戦略をデザインして進めることで、自社の製品にはユーザの心を掴む要素が沢山あるが、競合製品にはユーザの心を掴む要素を搭載させないという状況を創り出すことに成功すれば、将来に渡って会社の成長を最大化できます。

知財戦略で将来に渡って会社の成長を最大化できることをアピールすることは、スタートアップの資金調達にダイレクトに影響してきます。広報やIRの方は、知財に関してあまり詳しくないというケースが多いので、知財に関する発信は知財責任者が主導してやるべきだと思っています。

 

#2に続く

知財が企業価値を最大化するーーIPO4社の支援実績を持つ”レンタルCIPO”の知財キャリアとは #2

 



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