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【知財イベント】WIPOシンポジウム:グローバルな時代におけるイノベーション/講演4「特許出願に関する技術者兼CEOの考察」

イベント

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

 

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Alessandro Ferretti
CEO and Legal Representative, 
TRE ALTAMIRA Srl

 

皆様こんにちは。Alessandro Ferrettiと申します。TRE ALTAMiRAという、衛星データ処理を行っている会社のCEOであり共同設立者です。今回は、知財管理における考え方を紹介させて頂きます。

これは、特にハイテク企業にとっては非常に重要なテーマです。多くの人々が実際に、これからの時代の企業の最重要なテーマはグローバル展開だと気付き始めています。ですから、知財管理について学ぶことが重要になるのです。

 

「TRE ALTAMiRA」は1つの特許から始まった

 

まず、知的財産権のテーマに移る前に、TRE ALTAMiRA(以下TRE)についてご説明いたします。と言いますのも、私達が対象としている市場には、知財に関する多くの考慮事項があったからです。

私達は常に、企業が活動する市場を注意深く考える必要があるかと思います。知財戦略というのは、製薬や自動車市場など業界によってかなり変わってきます。

我々TREは、地面または人工物の動きを測定する衛星データを処理するサービスを展開しています。これは遠隔測定というニッチな市場です。

TREには20年以上の歴史がありますが、すべての始まりは、1999年に出願した「衛星データを処理するための新しいアルゴリズム」に関する一つの特許からでした。

TREというのは、ミラノ工科大学の最初のスピンオフ企業です。我々は、企業にライセンスをするのではなく、イノベーションを用いて産業を創りたい、会社を創りたいと考えました。ただ、何を大きく変えるイノベーションなのか、この新しいアルゴリズムで何ができ、この発明はどのように発展していくのか、ということはまだわからない状態だったのです。

この90年代後半に開発されたアルゴリズムを用いれば、正確に宇宙から地上の物体がどのように配置されているのかを推定することができます。基本的な技術は、レーダーを用いたシンプルなもので、レーダーアンテナと物体間の距離を測定できます。この測定データを、時系列に沿って分析するというわけです。

例えば、1000枚のレーダー画像を分析し、分析の過程でスプリアス信号を推定・除去すれば、実にミリメートルの精度で、レーダーアンテナと物体間の距離を測定することができます。

このアルゴリズムを用いることで、この技術が非常に多くの市場セクターに応用できるとわかりました。地すべりや、一般自然災害の防止から、ガスや潮流の観察、そして工業資産や交通インフラなどの監視、更には個々の建物の監視まで応用できます。そのため、我々はこれまでにこのテクノロジーを多くの市場に提案してきました。

また、このテクノロジーは、世界規模で適用することができます。

例えば、地震地帯や火山地域等に起こる地変現象を見つけることもできますし、橋や建物など個々の構造物の監視にも応用することもできます。高度な処理チェーンのおかげで、生のレーダー画像を一連の正確なデータに変換できるわけです。

アルゴリズムというのは、ソフトウェアではないので、工業プロセスといえます。そのため、特許化が可能です。これは非常に重要です。ヨーロッパでは、ソフトウェアの特許化は不可能です。しかし、この工業プロセスは特許化することができるわけです。例えば、衛星データなどを情報に変換して、成果物に変換する過程は特許化できます。

TREの設立以来、我々は世界で何百ものプロジェクトに関わってきたため、国際経験は非常に豊かになりました。

ここで申し上げたいのは、TREは1つの特許を取得して終わったのではなく、他の特許出願も行ったということです。知財戦略というのは、時とともに変化します。

 

発明に特許が必要な3つの理由

 

では、今回のプレゼンの最重要テーマである「どうして会社の発明に特許が必要なのか」についてお話します。これには3つの理由があると思います。

1つ目は、理論的には、商業的に扱う権利を持っているのは出願した会社のみ、という状況にできることです。これが特許の効果です。

しかしながら実際には、新信号処理アルゴリズムをデータ分析用に扱っている私達の場合、特許の効果は弱くなります。なぜなら、他の企業がこの特許の一部を変更して、処理チェーンを実装することができてしまうからです。この場合、他の企業が自分たちの特許技術を使っていると証明をするのは非常に難しくなります。

ただし、他にも検討すべき理由はあるかと思います。特許というのは、自分たちがその発明を最初にしたという証拠としても機能します。これも一種の旗印、目印になるため、市場で顧客、見込み客、そして競合他社に強力なメッセージを送ることができます。

2つ目は、大企業や行政機関と一対一での交渉時に役立つということです。

彼らは、通常であれば国債入札などでプロバイダを決めますが、特許を取得することによって成約までの時間が非常に短縮されることがあります。

3つ目は、特許を持っていれば、一部をライセンス付与することもでき、同時にそれを譲渡することもできるということです。よって、選択肢が増えます。

このように、どの戦略を採用すべきか、というのは悩ましく難しい問題ですが、特許を手にしている事実があれば、自分たちの選択肢は格段に増えます。

 

重要な資産である「ノウハウ」の鍵

 

最後に、企業にとって最も重要な資産の1つとなるのが「ノウハウ」です。

では、ノウハウの鍵となるのは何でしょうか。

企業のノウハウというのは、少なくとも2つの異なる要素が混在しています。

1つは、人材です。これは会社の従業員という意味です。あなたが発明者の一人であればご自身と、そしてR&Dチームも当てはまります。また、この技術の活用について見識を持つ人も重要な資産となります。その他、文書の事務処理をする方など、会社には常に従業員の方々がいます。これを考慮することが非常に重要です。

もう1つは、企業秘密です。基本的に特許を出願するとのちに公開されますが、特許を出願しなければこれを秘密にすることができます。

例えば、処理チェーンなど特定のステップを隠すことが可能です。これは大切な要素で、特許を出願すると研究結果を公開することになります。公開された後、他の企業はすぐに同じテーマに取り組み始めることができ、そしてソリューションの一部を変えることが可能です。全く同じ技術でなくても、課題を解決できる技術を開発する可能性があります。そのため、特許を出願する前にはこの可能性についても少し検討することをおすすめします。

このように、ノウハウには人材、企業秘密という要素があります。新しい発明をした時に、それをどのようにノウハウとして会社が保持するのか、というのは100%クリアに方法が決まっていません。そこで重要なのは、ここに挙げた要素をすべて考慮するということです。

私の個人的な意見として、ハイテク企業というのは、ノウハウの管理とベストな戦略を慎重に選ぶ必要があります。特許は権利として認められますが、明細書は公開され、誰でも詳細を読めるものになってしまいます。そのため、ベストな解決法としては特許などの知財と企業秘密のミックスであり、それは技術の市場や最も有望な適用法に関してアイデアを持つ優秀な専門チームにより慎重に管理されるべきだと考えております。

 

知財管理のベスト戦略は「ミックス」

 

すでに申し上げましたが、知財管理のベスト戦略は特許や商標などの知財と企業秘密の「ミックス」です。そして、発明の実装と適用に関しては、見識のある人々によって慎重に管理されているものであるべきだと考えます。

また、特許の明細書を書くということは、技術論文を書くのとは違うため、専門家に助言を求めるべきだと思っています。人によっては、特許の明細書を書くということは優れた技術論文を書くのと大して変わらない、と考える方もいらっしゃいます。

しかし、私は経験から別のものだということを学びました。謙虚になることは大切で、他人から学ぶこともあります。例えば、特許の明細書を書く前に、他の特許を読んでアドバイスを求めることで、多くを学ぶことができるわけです。

また、よく人々が忘れてしまう重要な要素として、特許出願するときは、常にその特許を保護できるか、それを心に留めておくということがあります。

実際に、2003年にTREは特許侵害の可能性について訴訟を起こしたのですが、結果として我々が提示したアルゴリズムが非常に複雑で保護するのが難しいというのが判明してしまいました。

このことから、皆様には、長くて複雑なものを1つにまとめて出願するのではなく、複数に分けて出願するということも重要です。もちろん、即興でやらずに様々な方からアドバイスをもらいましょう。

最後になりますが、特許の権利化というのは非常に長いプロセスになりえます。アイデアの実施まで3~4年も待てないセクターというのももちろんあると思います。その時は行動する前に、考えうるすべてのオプションを検討してください。良い点、悪い点を同僚と一緒にたたき出すのです。

もちろん私は特許出願すべきではないと言っているわけでは全くありません。ただ、出願時にはしっかりと市場を見て、御社の特許を読むことで競合他社が何を学び、何ができてしまうのかというのを一度考えてみて下さい。

皆さんのお役に立つアドバイスができていましたら幸いです。

ご静聴ありがとうございました。

 

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