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【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.6 オプティム流・新規事業をアシストする知財戦略~知財功労賞受賞の知財活動~

イベント

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

 

Vol.1 来賓の挨拶(WIPO日本事務所長 澤井 智毅 氏)はこちら↓

 

Vol.2 世界中の「水の問題」を解決する~WOTAの目指す世界とスタートアップ知財~はこちら↓

 

Vol.3 ”SaaS×Fintech系ベンチャー企業、マネーフォワードの知財戦略~知財活動の現場から~はこちら↓

 

Vol.4 特許事務所がスタートアップ企業と付き合うために必要な作法 ~弁理士会ベンチャー支援部会からの提言~はこちら↓

 

Vol.5 メルカリグループの知財~知財活動の現場から~はこちら↓

【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.5 メルカリグループの知財~知財活動の現場から~

 

 

「ネットを空気に変える。」

 

株式会社オプティム 社長室 知的財産ユニット マネージャー
村井 康史さん

株式会社オプティムは2000年に設立し、昨年20周年を迎えました。

創業以来「ネットを空気に変える。」というミッションをスローガンに掲げ、ビジネスを展開しています。

実は今年ほど「ネットを空気に変える。」というスローガンを意識した1年はなかったかもしれません。新型コロナウイルスの影響で、オプティムもそうでしたが、みんなが自宅から働くいわゆるテレワークという環境になりました。私が今お話ししているメッセージを皆様にお伝えさせていただいているのも、デジタルを媒介しています。直接対面している場合には、空気を媒介して音声を伝えていますが、今回のようにオンラインの場合には、一回デジタルに変換した後に、空気を媒介して音声を伝えています。本当に”ネットが空気に変わった”、人類にとって歴史的な一年になったのではないかと思います。

もともとオプティムは、様々な端末を自動的に設定し、チューニングする「フレッツ簡単セットアップツール」という技術から事業が始まりました。オプティムのAIは、どのようなルーターに対しても自動的に解析を行い設定を行います。従来のように、自宅で一人ひとりが違うルーターに対して手動で設定したり、業者の方を自宅に呼んで設定したりといった手間を省くことが可能です。

それでもやはり使い方がわからないといったケースや、トラブルが発生するケースもあることから、ユーザーを遠隔サポートできるサービスも提供しております。スマートフォンやタブレット、パソコンの画面を共有しながら、コールセンタースタッフが操作して支援できるように、様々なパートナーの方々と協力してサービスを展開しています。おかげさまで現在では、利用者が国内No.1となっています。

また新サービス「Optimal Biz」は、企業が使用しているスマートフォンやタブレット、PCの設定を自動化・遠隔操作できるソフトウェアです。こちらも国内でNo.1のシェアを獲得しております。新型コロナウイルスの影響で、企業だけではなくテレワーク支援や遠隔医療サービス、感染対策などにも活用の幅を広げています。

弊社では、これからの第4次産業革命は、AI・IoT・Robotを使って全ての産業のあり方を一変させるであろう、ということを確信して日々の業務に取り組んでいます。

そこで近年では、「〇〇×IT」という、弊社が持っているAIやIoTの技術と各業界のリーディングカンパニーが持っているノウハウを結合させて、第4次産業革命を果たすために実行しているところです。

さらに今年は踏み込んで「DX」にも着目し、弊社では「コーポレートDX」として会社の間接業務や総務業務をデジタル化しています。ほかにも「インダストリーDX」と題したサービスも展開中です。本サービスは各産業に特化したもので、今まで非効率的だったものやもう少し楽にしたいという部分を、弊社が持っているAIやIoTなどの知見によって便利にしています。今年度の5月に発表させていただきました。

 

技術開発の成果を守り、活用する

 

ここからは、オプティムの知財戦略をご紹介いたします。

オプティムでは、創業当初から技術開発の成果を守り、活用するために積極的に特許出願を行っています。

初めて出願したのは、創業2年目に初サービスをローンチしたときです。特許を取得するメリットは、製品やサービスの差別化ができることや優位性を保って事業展開を進めていくことができることです。また特許訴訟や模倣被害といったトラブル回避・リスク低減にもつながります。開発を行う社員だけでなく、製品やサービスを売る営業社員、そしてお客様が安心して利用できる環境づくりが実現できるという点でも大いに意味があると思っています。

しかし、特許出願にはコストがかかるため、後回しにするスタートアップ企業も多く存在するのも事実です。その中でもオプティムは創業当初から特許取得のメリットを重視し、地道に活動を積み重ねてきました。

 

それぞれの立場からスクラム型で取り囲むように知財を生み出す

 

では、どのように知財を生み出してきているのか、というフローについてご紹介します。

オプティムでは、新規事業のコンセプト策定を行うのと同時に、守るべき知財(権利化する部分)のポートフォリオを経営陣や事業部の中心メンバーと検討しています。社長や経営陣、事業部、知財担当、現場の声などそれぞれの立場からスクラム型で取り囲むようにしているのが特徴です。検討を重ねて生み出した知財は、主に法律・契約・技術の組み合わせで守るようにしています。

まずは特許法、著作権法、商標法、営業秘密や限定提供データに関する不正競争防止法、民法など法律面の観点から確認します。これらを通して確立した権利は、契約や利用規約などでしっかりと保護します。具体的な内容は、競業相手や販売パートナーと契約をきっちり結ぶ、などです。しかし、このように手順を踏んでも漏洩リスクは残ってしまうため、コピーガードや暗号化、難読化などの技術面からサポートすることも必要です。

もちろんこのほかにも数多くの保護方法がありますが、オプティムでは主に上記の観点から会社独自の技術を守るようにしています。

 

グローバルな事業展開も視野に

 

2021年7月2日時点でのオプティムによる知的財産の権利化状況は以下の通りです。

 

 

今後グローバルな事業展開を視野に入れているため、日本国内だけでなく米国や中国などPCT国際特許出願も行っています。

次に、ランキングや表彰の実績をご紹介します。

 

 

現在、オプティムは東証一部ですが、以前はマザーズに上場しており、平成26年には、新興市場特許資産規模ランキングで第一位を獲得しています。

また平成30年度には、ITベンチャーで初となる「知財功労賞」を受賞し、知財制度の発展に貢献した企業として表彰されました。

個々の発明に関しては、次のようなものがあります。

 

 

一つ目は、「ピンポイント農薬散布テクノロジー」です。

ドローンや人工衛星を用いて撮影した航空写真をAIで画像解析し、病害虫がいるポイントに検討をつけます。該当箇所にドローンを飛ばし、農薬をまくという技術です。畑一面ではなく必要な箇所にのみ農薬をまくことで、従来の農薬散布と異なり農薬使用量を減少させることができます。

また農作物へのダメージも減らせるので、環境保護の効果も期待できます。

このような取り組みを通して、令和元年度の「九州地方発明表彰」の中で最も格が高い「文部科学大臣賞」を受賞しました。

 

二つ目は、「土地用途判定システム」です。

こちらも農業分野で活用できる技術です。
農作物を育てる際には「作付確認」を行う必要があります。

作付確認とは、申告通りに大豆やお米などの作物を植えているかを確認する作業のことをいいます。実際に現場を回って確認するため、かなり時間がかかるのが難点で、担当者の負担の大きい地道な業務といえます。このような作業を効率化すべく開発されたのが「土地用途判定システム」です。

本システムでは、航空写真の撮影と画像解析が行えます。これにより何が植え付けられているのかを判定し、申告内容と照らし合わせられるため、簡単に確認作業が完了します。例えば長崎県の五島市では現地確認に40人日かかっていたのが、システムの導入により2人日で済むようになり、約95%の工数削減に成功しました。

こうして、令和2年度「九州地方発明表彰」の「発明奨励賞」を受賞することができました。

 

知財があることで様々な会社と連携できた

 

オプティムは、知財を持つことによって様々な団体や会社と連携を取ることができるようになりました。その取り組みを一部ご紹介します。

まずは農業分野です。

石川県農林総合研究センターとの共同開発で「ドローン水稲直播栽培」という技術を開発し、種籾(たねもみ)を畑に播く「播種ドローン」をつくりました。「播種ドローン」を利用することで、高速に回転するファンの力を利用して種を力強く植え付けることができます。

また、田んぼに植え付けたあとも水で流されないよう土の中にしっかり打ち込まれるのが特徴です。一定深度に植え付けられることで、鳥害にあいにくく、苗立ちがよくなったり、育った稲が倒れにくくなるなどのメリットもあります。

このように効率的な田植えを実現するべく、現在特許出願中です。

 

次に建設分野に関する取り組みです。

九州最大のゼネコン・松尾建設と「建設×ITの戦略的包括提携」を結んでいます。その取り組みの一環として、土木測量の効率化を促進するため、「OPTiM Geo Scan」をリリースしています。「OPTiM Geo Scan」はLiDARセンサーと高精度位置情報を組み合わせることで、高精度な測量を手軽に行える測量アプリです。

従来は2~3人が携わって、様々な機材を用意して作業を進めていたため非常に手間がかかっていました。「OPTiM Geo Scan」は一台のタブレットを使用するだけで測量が完了できるため、誰でも一人で簡単に作業を行えるようになりました。こちらも現在特許出願中です。

 

ITスタートアップは企画・開発・販売のサイクルが速い

 

最後に、オプティムにおける知財活動の課題や特徴についてお話しいたします。

ITスタートアップ企業全般に言える最大の特徴は、企画・開発・販売のサイクルの速さです。例えば、メーカー企業(事務機器)だと1.5~3年かかるところを、IT企業(SaaSなど)は0.5~1年のスパンで製品やサービスをリリースします。スピーディーに事業が展開されていくのに合わせて、知財戦略もアジャストしていくことが課題でもあります。

オプティムの場合は、多くの企業や団体と協業、連携していることが特徴です。そのため、他社の知財との棲み分けなどの兼ね合いを常に意識しなければいけません。契約を行うことで対策していますが、適切な契約方法を状況ごとに判断し選択する必要がありました。

このような問題を解決するため、政府が「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」や「限定提供データ」を作成しました。これを受けて、知財保護・活用に関する法令や指針を積極的にキャッチアップし、社外との契約や取引に随時反映させるようにしています。

しかし一連の業務を知財担当者のみで行うのは限界があるため、法務担当者やセールスとの連携も重要になってきます。

 

次に、事業領域が多岐にわたっていることも特徴です。

先ほどお話しした通り「〇〇×IT」ということで、各分野のリーディングカンパニーと協力して事業を進めているため、すべての事業領域における技術動向を細かく見ていく必要があります。

しかし知財担当者のみですべてを把握することは難しいため、企画担当者と分担して業務を行っている状況です。

 

最後に、AI・IoT関連ビジネス・発明に関する各国政府の動向を逐一確認していくことも特徴として挙げられます。例えば、AIアルゴリズムや学習データに関しては開示要求の可能性があると考えています。

現状はブラックボックスで特に指摘を受けていませんが、将来的には個人情報の保護やセキュリティを理由に開示を求められることも十分ありえます。現に中国や欧州など、個人情報の保護やセキュリティを理由にデータの取り扱いを規制する国や地域も存在します。

グローバル展開を視野に入れるにあたり、このような国々の動向を詳しく追っていく必要があるため、法務担当と連携して進めていくことが今後の課題です。

 

●株式会社オプティムのHPはこちら

 

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