専門職人材の流動化が、社会課題の解決を加速する#2
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士業の業界には見えないハードルがある
―知財業界の転職・就職状況をお伺いしたいのですが、知財業界で働く方々の人材の流動性はまだまだ低いと感じています。LEGAL JOB BOARDからみて、この辺りはどのように捉えておりますでしょうか。
「その通りだと思います。知財業界もそうですし、司法書士や弁護士業界も、周りから見てどんなことをしているのかよくわからないという、見えないハードルがある業界だと思うのです。だからこそ、士業業界は、転職市場でもまだまだ未成熟な業界だと感じています。人材の流動性を高めるには、まずは情報をどんどんオープンにしていくことが重要でしょう。」
―LEGAL JOB BOARDとして法律業界で実際にビジネスをしてみて、見えてきたことや感じたことはありますか。
「そうですね。従来は事務所の大きさがそのままブランディングに繋がっていて、大きな事務所に求職者が集まる傾向が強かったのですが、今は大手の在り方が少しずつ変わってきている気がします。基本的にどの士業も労働集約型のビジネスですよね。人をどれだけ抱えていけるかが、事務所としての成長を支えることになる。ただ、今は事務所の大きさに関わらず、凄く勢いがあったり、従業員のことをものすごく大事にしていたり、独立に対して凄く寛容であったりと、特徴のある事務所に人が集まり始めています。大手の在り方も、今後は変わっていくのかもしれないなと感じていますね。」
―価値観が広がってきているということでしょうか。
「そうだと思います。自分のやりたい事ができる事務所を選ぶ人が、明らかにどの士業も増えてきています。もっと言えば、士業合格者や転職希望者のキャリアの選択肢がどんどん広がっている。大手だけが自分のキャリアではないと考える人が増えてきているのだと思います。」
専門職の方と新しいビジネスを始めていきたい
―WILLCOとしての今後の目標はありますか。
「今後は、現場から引き出してきたニーズや解決すべき課題に向かって、課題解決を目指して事業をしていく、小さな課題解決チームの集合体にしていくことをイメージしています。我々はありがたいことに、求職者からは生の声で市場のニーズを聞くことができ、採用者側からは業界の未来の話やニーズを聞くことができています。そのように集めたニーズに対し、日頃から関わっている士業の資格者や、各業界の専門職の方たちと共に、なにか新しいビジネスを構築できないかと考えています。実際に、過去に実現した事業もいくつかあって、例えばM&Aの仲介です。最初は事務所の後継者がいないという人材のニーズで我々に依頼をしていただいていたのですが、よくよく話を聞いていくと、人材を採用するより事業承継をしていくほうがいいのではという話になったのです。あとは、業務委託の人材紹介をしてもらえないかという話をいただいて、我々の事業として始めたこともあります。このようなことを、もっと法律業界の方々と一緒にやっていけるようになりたいなと思っています。」
個人の幸せにフォーカスした働き方を一緒に探したい
―では最後に、読者のみなさまに『仕事』や『働くこと』について、メッセージをお願いいたします。
「実は、人材ビジネスは、欧米では考え方がずっと進んでいます。人材ビジネスと言えば、マッチングや求人サイトというイメージが強いと思いますが、欧米では求人サイトのビジネスは人材市場の中で1~2割くらいです。欧米の人材ビジネスは、入社させて終わりではなく、その後に個人やチームのパフォーマンスをいかにして高めるか、というビジネスがメインなのです。」
―日本の人材会社は、入社前のサポートが多いですが、欧米では企業に入ってからのサポートが主なのですね。
「そうなのです。例えば欧米の人材会社では、入社してから最初の3か月間で事務所や企業に馴染み、高いパフォーマンスが出せるようなサポートをしています。その時期が一番離職も多い時期になるため、離職を止める効果もあるのです。最近面白いと思ったのは、人工知能を用いたコミュニケーションアドバイスサービスです。最初にマネージャーとメンバーの性格診断を行い、両者の性格タイプにおいて、適切なアドバイスの方法をAIがレコメンドしてくれます。」
―それは面白いサービスですね。日本の人材会社とはまた違ったサービスを展開しているのですね。
「はい。様々なテックを活用し、人材ビジネスは会社に入ってからのほうがサポートにニーズがあるということを示しています。私は、日本も必ずそのような市場になっていくと思っています。なぜなら、日本では労働人口はこれからどんどん減少していく。その少ない人数で、日本経済の成長を目指すためには、明らかにパフォーマンスを高めていかなければいけないですよね。そのためには、従来の組織や雇用制度に囚われず、個人がパフォーマンスを高められる社会にしていく必要がある。もちろん、企業側もそこに適応していかなければいけないと思っています。」
―そうなると、求職者側もパフォーマンスを高めていくように意識していく必要がありますね。
「そうですね。これからは個人の時代になっていくので、自分なりの幸せを見つけていきませんか、と求職者の方には伝えたいです。昔は、「組織のための人」という考え方が強かったのかなと思います。でも、私自身も経営をしてみて、やはりこれからは「人のための組織」をつくらないと、企業として継続していくのは難しいと感じます。社会の構造もそのように変わり始めているので、同じ事務所や会社に長く居続けることがその人のキャリアのためになるのであれば、そうしたほうが良いと思いますし、一方で、複数の会社で様々なスキルを身に着けていくほうが、その人のキャリアのためになるのであれば、そうしたほうがいいと思います。先人のおかげで経済的にある程度の豊かさを手に入れられた我々日本人だからこそ、次は、それぞれ個人の幸せにフォーカスした働き方を一緒につくっていきたいですよね。」
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