【前編】スタートアップに重要なのはパートナー選び

インタビュー

企業の受付で、タブレットを数回タップすれば目的の相手を呼び出せる。そんなシンプルなユーザーエクスペリエンスを生み出したのは、元「受付嬢」でした。企業受付で10年以上の勤務を経て橋本真里子氏が開発したのは、クラウド受付システム「RECEPTIONIST」。現場の経験からくる視点には、会社の顔である受付が進化を続けられる秘密が隠されていました。

『自身の強みを活かしたサービス開発。こだわりには意図がある』

ー以前は受付業務をされていたと伺いました。そこから起業に至ったのはどのような経緯があったのでしょうか?

 「受付の仕事は、20代の女性が多く活躍している業務と思われることが多いです。実際私も20代で受付業務を始めましたが、30歳を迎える時に、現場で働くのはここが最後かも、と思いながら仕事をしていました。」

ー確かに、受付には若い女性が多い印象です。

 「そうなんです。そして、受付ではない、次のキャリアに目を向けるようになりました。次に何しようかなと考えたときに、同じ会社で受付ではない仕事をする、全く違う職種に転職するなど、様々な道があったと思います。ただ、せっかく10年間にも渡って企業受付として働いてきたので、自分だけの珍しいキャリアを活かしたステップに進みたいと思ったのです。受付で培った経験を活かすならばと、マナー講師、受付のコンサルティング業なども考えました。でも、それでは自分が関われる会社や世の中に与えられるインパクトが小さいと思ったのです。もう少し広く、世の中に自分のスキルを還元する方法はないか。そして、受付時代に日々感じていた課題に目を向けました。世の中は便利になる一方で、受付業務は、電話の取次ぎや受付表の記入など、昔のスタイルをずっと貫いています。受付業務だって、もっと効率化できると思いました。その当時、まだ受付業務の効率化に取り組む会社もなかったので、起業を選択しました。」

ーご自身の強みを活かす手段として、起業を選択されたということですね。思い切りが必要だったと思います。起業するときに特に大変だったことはどんなことですか?

 「もちろん起業をしたことはなかったので、分からないことばかりでした。でも、それを応援してくれる人たちが周りにいてくれましたし、もっと言えば、失うものがなかったというのが、当時の自分の強みだったのかなと思っています。起業をすると、確かに自分でやらなければならないことがたくさんあって大変ですけど、死ぬことはないじゃないですか(笑)。受付の仕事もやり切ったと感じていましたし、次に見つけたやりたいことに向かってただ邁進していたので、毎日泣くほどの苦労とは感じませんでした。」

ー企業受付時代にご自身が感じていた課題を解決するために生まれたという「RECEPTIONIST」ですが、一番のこだわりはどこでしょう?

 「とにかく「電話を使わない」ことにこだわっています。通話をせずに、すべてテキストで通知をして、目的の相手を呼び出すことができることにこだわって、プロダクトを開発しています。通話をするのであれば、従来の受付業務である電話の取次ぎと何も変わらず、受付業務の効率化にならないのです。また、通話を使わないこと、テキストで通知をすることで、どの従業員が、どんなお客様と、どの程度打ち合わせを行っているかなどの情報をデータとして残しておくことが可能になります。このデータも上手く活用することで、生産性の向上に繋げられるはずです。「RECEPTIONIST」の大きな目的の一つは生産性を向上することです。その価値を提供できるプロダクトにこだわりたいと考えています。」

『特許事務所に任せていればいいという考えは間違いだった』

ー現在知財に関する取り組みを強化されていますよね。知財を意識したきっかけはあったのですか?

 「前提として、私たちは世の中になかったサービスを提供するために起業をしたので、なんとなく特許は取れるのではないかと思ってはいました。でも特に何もケアしていませんでした。そして、2017年の夏ごろ、社外取締役である小笠原さんから、「そろそろ知財のところを固めてもいいかもね」とアドバイスをいただいたんです。創業して1年が経ち、「RECEPTIONIST」をリリースしてしばらく経ったころでした。」

 

ーどのように知財に関する取り組みを進めていったのですか?

 「特許って本当に難しいですよね。よく分からない。実際にいくつか明細書を読んでみましたが、日本語で書いてあるのに、まったく読み解けないんです。概念図もすごく独特ですし、弁理士の方との会話も、すごく難易度が高かった。だから、とりあえず特許事務所に全てお任せして、最初の特許は出願したという状態でした。特許も取れましたし、それだけである程度の満足感を得られてしまうんですよね。」

 

ー難しいから、分かる人に任せていたということですね。

 「知財に関して知識の乏しい自分たちにはアンコントローラブルだからこそ、人任せや、後回しにしてしまう。これは結構スタートアップあるあるな気がします。正直、私たちもひとつ特許が取れたら満足して、あとは特許事務所のほうで、追加で出願できるところがあればどんどん出願してくれて、それがまた特許になればラッキー、くらいに思っていました。」

 

ーでは、現在のような積極的な取り組みを始めたのはどのようなきっかけでしょうか。

 「先輩の経営者から、今の知財のパートナーを紹介してもらいました。新しいパートナーとの議論で、私たちの技術分野では、特許が一つ取れたからといって安心できるわけでないことも分かりました。分かりやすい言葉で話してくれて、戦略的に知財のことを一緒に考えられるパートナーが必要だったのだと思います。」

 

―後編へ続く

【後編】スタートアップに重要なのはパートナー選び

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