【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.6(4)~パネルディスカッション第二部『知財戦略とイノベーション、知財を武器に市場を切り拓く』~
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【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.6(3)~パネルディスカッション第二部『知財戦略とイノベーション、知財を武器に市場を切り拓く』~
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日本商工会議所との連携
澤井さん
今年の3月18日に、日本商工会議所、東京商工会議所が知的財産政策に関する意見というものを出しておりまして、その中でグリーン成長戦略実現に向けたWIPO GREEN施策の普及支援という提言もされております。グリーンを牽引されてきた知財協会の幹部でもある久慈様に置かれましては、WIPO GREENの文脈から日本商工会議所等との連携が取れるものと存じますが、いかがでしょうか?
久慈さん
はい、連携可能です。これまで経団連とは多くの様々な連携をやってきましたが、それは経団連と会員企業が共通するところが多いからなのです。共催でイベントの開催もしていますが、最近のSDGsへの関心の高まりということで、日本全体で環境技術ということをきちんと考えるためにも、今まで我々が行ってきたことを日本商工会議所にも広げて、連携してイベント等をやりたいと思っております。また、我々はこれまで色々な問い合わせにもお答えしていますので、どういう風に考えればいいのかというところから様々な情報提供ができると思います。
共通言語を持って、様々な仮説検証を行っていく
澤井さん
すべての産業界、国際機関、そして政府が一体となって進めることによって、真にグリーンが進むのではないかなと思っています。一方で、西口様の以前のご発言の中で、SDGsに対しCSR的、すなわち企業の社会的責任的、社会貢献的な発想が強く、SDGsが事業活動とは分断されているという言葉がありました。大変示唆のある言葉だと私は思いました。とりわけ、WIPO GREEN自身、この1年間でパートナー企業が増えております。それでも具体的な事例がまだまだない。また、久慈様がおっしゃっていたように、まだまだ課題もある。そうしたことはSDGsが事業活動と分断されているという西口様のご指摘にもしかしたらヒントがあるのではないかなと感じています。この点、もう少しお話しをいただけますでしょうか?
西口さん
現在UNDP国連開発計画が、世界90カ国に拠点を置きながら現地の課題を発見して解く組織であるアクセラレーター・ラボと日本の企業で、インド、フィリピン、ベトナム、トルコ、アフリカのマラウイでそれぞれ特定の課題を見つけ、日本の企業および自治体のノウハウを組み合わせて、具体的に事業化するという取り組みを行っています。このときの共通言語として、ISO56002の中のイノベーションのプロセスや機械の特定から、ビジネスモデルのデザイン、その検証の部分を国連と日本企業が合同で行うというモデルを今まさにやっている真っ最中です。
例えばインドでは、カレー粉のもとになるターメリックなどのスパイスが巨大な産業なのですが、バリューチェーン自体としては非常に貧しい農家の方も多く、かつプロセスもやや不透明です。そのため国連とインド政府のスパイスボードに共同でブロックチェーンを入れることによって、バリューチェーン全体を可視化して、産業の進行に繋げつつ、農民の皆さんにも豊かになってもらおうという目標を持って始めたところ、NECのインド現地法人が手を挙げられました。現在、あるプロセスを通って、実際にNECのブロックチェーン技術を使って、実証実験を行っています。
これはCSRでもなければ、チャリティーでもなければ、寄付をお願いしているわけでもありません。日本の内閣府が一部UNDPに拠出金を出して、それで回しているプロジェクトなのですが、国連側も企業側もインド政府もこれは事業として行っていただくことを大前提、NECが関わる事業として行うことを大前提としています。目標を見つけて何をするかという仮説を持ち、そしてプロセスに関わる共通言語を持って様々な仮説検証を行っていけば社会的意味のあることが事業として成立する、ということを証明するために、まさに今実験中であります。実行しようと思えばできる、ただしこれは国連や日本企業、インド政府だけで行っているわけではありません。まさにひとりで出来るはずがないのです。ですので、殆ど付き合いがなかった皆さんも一緒になって、みんなでひとつの目的に向かって共通言語をもとに取り組んでいく。これは実際に今動いている話ですから、将来も起こりうるという風に私は思います。
特許はコミュニティに対する入場チケット
澤井さん
医療と知財についても今大変注目を集めております。Lily MedTech社は大学発スタートアップですが、国際出願も行っていると聞きました。グローバルな権利取得の理由や効果について、ガニング様のお話しを聞かせていただけますでしょうか?
ガニングさん
まず外国出願ということに関しましては、実はスタートアップであってもなくても、海外市場を将来的に目指す可能性があれば、最初から戦略に入れていくべきだなという風には感じています。なぜかと言いますと、やはり特許というのは、例えば市場に対して、あるいは、そのコミュニティに対しての入場チケットのような役割を果たすという風に考えています。
実際、イノベーションという観点から言いましても、例えば乳がん検診の場合ですが、今乳がんの罹患率というのは、GDPに相関があるという風に言われています。GDPが向上すると、食習慣が変わり、ホルモン状況が変わるといったような想定が出来るのですが、では、そのイノベーションの本当に需要としているところはどこになるのかというと、最終的にはグローバルに必要となってくると思うのです。じゃあそのきっかけはどこにあるかというと、先進国になってくると思います。なぜかと言いますと、需要を感じた各国の優秀な方々や開発者、医師が先進国に留学し、そこで得た知識や経験を持って帰って、それから実用化していくからということですね。このときにコミュニティに入っていない、つまり国際的な権利も持たないまま、実際に活動していてはやはりイノベーションの波には乗るのが難しいかなという風に感じています。そのため、外国出願にも力を入れております。
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