【知財イベント】『IPAS2020 Demo Day 成果発表会 レポート〜Vol.5 株式会社チトセロボティクス 成果発表ピッチ』
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本記事では、株式会社チトセロボティクスの成果発表ピッチの様子をお届けします。
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【知財イベント】『IPAS2020 Demo Day 成果発表会 レポート〜Vol.6 株式会社チトセロボティクス メンタリングチームとの座談会』
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Vol.5 株式会社チトセロボティクスの成果発表ピッチ
株式会社チトセロボティクス 代表取締役 西田 亮介
本日は会社の説明とIPASの成果を報告させていただきます。まず皆さんにロボットについて知っていただきいです。現在、人手不足が大きく騒がれていますが、それでもまだまだロボットは普及していません。私たちはその理由を2つ考えています。
1つ目は、ロボットの価格が高い点です。例えば、人間の腕くらいのサイズのロボットでも価格は約1200万円と非常に高額です。
2つ目は、ロボットを作るのに時間がかかるという点です。ロボットはプログラムが無ければ動かすことができません。
私どもはこのプログラム部分を「ティーチング」「キャリブレーション」などと言っていますが、ここを構築するには大きな費用と、半年ほどの時間がかかるのです。実は、ロボット自体は1台300万円ほどで購入できるのですが、残りの900万円はプログラミングの人件費にかかっています。この大きな費用と長い構築時間こそが、ロボットが普及しない原因だと考えました。
翻って考えてみると、人間はプログラミングなどされていないのに、自分の腕や角度などのパラメーターも解らずに非常に高精度な制御ができます。これはなぜか?と考え、発明したのが、人間の神経系モデルをアルゴリズム化した「ALGoZa」です。これを使えばロボットは厳格なパラメーターが解っていなくとも非常に高精度にロボットを動かすことができます。私たちは、このシステムを元に創業しました。
ロボットが現場に来て、安く使用できるサービス
私たちが提供する「CREWBO」(クルーボ)というサービス名には「ロボットが来る」「ロボットがクルーになる」という意味を込めました。ロボットのプログラミングが不要なので、現場ですぐに安く使用してもらうことができます。さらにネットワークに繋がっているロボットたちは常にアップデートされ、うまくいかない事があれば常時メンテナンスをします。この一気通貫のサービスをお客様に提供し、人手不足や生産性の向上にロボットをお役立ていただいています。
現在私たちは二種類のロボットをご提供しています。1つは食器洗浄業務補助ロボットで、朝早くから夜遅くまで行われている洗浄業務を自動化するロボットです。2つめは食品盛り付けロボットで、工場や会社など大人数の方が働いている現場で、食事をよそって盛り付けなどのハンドリングをしてくれるロボットです。
ここからは、IPASに採択いただいて生じた大きな4つの変化についてご紹介します。
顧客価値の見直しが、事業と開発方針の変更に繋がった
まず1つ目は事業方針の変化です。コーポレートアイデンティティが大きく変化しました。株式会社チトセロボティクスは創業3年の会社ですが、いわゆる「技術屋さん」の側面が大きかったです。私どもは制御部門から始まったので「ロボットの制御技術について」を語る場面が多かったのです。それをメンターの方から「ロボットのスタートアップとして勢いに欠けているのでは?」、「お客様とのコミュニケーションはそれでいいのか?」とアドバイスをいただきました。メンターの方の助言を元に「クルーボ」というキャラクターを作り、ロボットはこういうもので、こういう使い方があるということをお客様に解りやすく説明するようにアイデンティティが変化しました。
2つ目は開発方針の大きな変化です。私どもはロボット制御技術から会社を興しています。ですが、IPASプログラムでは「本当にロボットを制御するだけでいいのか?」、「本当にお客様に価値を届けるには、制御技術のその先があるのではないか?」を深く議論させていただきました。その結果、クラウドに注力し、遠隔からロボットをメンテナンスする事で人件費を削減し、さらに安くロボットを使っていただき、ロボットが止まる時間を短くするアイデンティティが生まれました。お客様の顧客ニーズから開発方針を考え、制御プラットフォームからクラウドプラットフォームへと進化したのは大きな変化でした。
ロボットは手段、重要なのは課題解決を達成できる製品と知財戦略
3つ目は知財戦略の大きな変化です。もともとはロボットアームの制御が私たちのメインの技術でした。購入時、ロボットは手首までしかついていません。手の先をエンドエフェクタというのですが、この部分はお客様のニーズごとに作る必要があります。これはお客様の各領域の作業内容によって様々なものが生まれます。ここの特許を包括的に取得することはお客様にとっても必要な事だと感じ、エンドエフェクトの特許をたくさん取るように戦略を変更しました。
最後の一番大きな変化は、商品戦略です。ここはかなり変わりました。今まではロボットがある事が当たり前で「ロボットとはこういうものだ!」と強く伝える会社でした。ですが、お客様から見ると、ロボットだろうが人間だろうが、場合によっては違うロボットだろうが、課題を解決できるのであれば何でもいいわけです。必ずロボットが欲しいというわけではありません。そのために、「ロボットとはこういうもので、私たちのサービスではロボットがすぐに現場に来て、こういう風に利用できます」と紹介する意味も込めて「CREWBO」(クルーボ)と商品名を変えて、会社としても大きな転換を迎える事ができました。
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