「デザイン」を経営の全てに取り入れる新しいIP経営#2

インタビュー

株式会社RABO 伊豫CEOのインタビュー後編です。

-世界観を独占するというよりも、この世界観に賛同してくれる方と体験を共有する、ということでしょうか。共有しながら一方でこの世界観自体を何らかの知財で保護する、というのは難しくないですか?

そうです。分析手法や手段の特許は出している、しかし、それ自体はいずれはコモディティ化していまうものです。しかし、体験やブランドは、真似することはできません。そのため、プロダクトについては最初からしっかりとデザインの定義をしました。最初の役職者をデザイナーにしたのもそれが理由です。ただ、この世界観の模倣を防ぐ、となったときにそれ自体を何らかの権利で守るというのは無理だと思いました。なので、それを補填するために複数の知財(特許権、商標権、意匠権)を組合せて保護することにしました。
だから、以前「知財は補助呪文」と言ったのです(★注)

★注・・・伊豫氏は、以前、特許庁共催のイベントにて以下のコメントをしている。

「(IPは)ドラクエで例えると、メラゾーマ(圧倒的な攻撃力を持つ攻撃魔法)ではなく、スクルトやピオリム(チーム全体が強くなる補助魔法)のようなものだ

https://ipbase.go.jp/event/2019/07/CIPONight3.php

-例えば、有名な某エンターテインメントの国では、「そこで過ごす体験」がデザインされていると思います。RABOの場合も、Catlogを使っている生活、というその世界観自体を全て守り切るというのは現行の法律ではなかなか難しい。しかし、その世界観を構築する上で要所となる部分押さえていくのが大事ということですね。

 (ここで、CCOのブリ丸が、我々の机に音もなく飛び乗ってくる)

-おおっ、マカロン(取材にあたって筆者に用意していただいたもの)食べるんですか。。。

 いえ、食べさせたらダメです。いつもおやつにはちゅ〜るをあげています。

(ちゅ〜るの袋を見た途端にCCOがものすごい勢いで食いつく)

 繰り返しにはなりますが、Catlogを使った一連の体験をデザインしていく上で、特許で守られるのはこれ、商標で守られるのはこれ、というように、知的財産権で守られるものはこの範囲だからその範囲内でどう出そうか、というのではなく、実現したい世界観を守るためにどのような知財を活用すればよいか、どういう制度を利用すればよいか、という考え方が大事だと思います。

 

 -ところで、Catlogの猫アイコン、シンプルな線だけでできているのに可愛いですね。どのようなこだわりがあるのですか?

 猫様は外に連れだせないのが基本なんです。一緒に暮らしていてもほとんど外に連れて行けないので、外出先でもそばにいたい、いつも一緒にいたい、というところも考えてデザインしています。本当は外に一緒に行きたいけれど、「すべては、猫様のために。」ということを考えると、嫌がる猫様を無理やり連れて行くのではなく、猫様にとって一番幸せなのは家でいるのが一番いい、だったら外にいる飼い主が猫様と一緒にいるかのようなプロダクトにしてあげるということを考えています。

-アイコンの種類(動作)が豊富なのは、よりリアルに猫様の状態を表現することで一緒にいる感を出しているからですね。オフィスからプロダクトのアイコンに至るまで、世界観は、まさに無形資産。それを活用している経営ですね。そういえば、このオフィスもそんな雰囲気ですよね。猫様が退屈しない仕組みがある。

 世界観は全てに滲み出る、例えば、うちのCSには、(Custmer Service)ではなくCat Specialistを置いてます。ユーザーの方からの質問に回答する人スタッフも、そのアカウントは「てんてん」や「おでん」と言った我々スタッフが飼っている猫様の名前にしています。CSのフロントは猫様にしています。

世界観は共感を生む。利益の方向を一致させるための顧客体験

-提供側もユーザーも、すべては猫様のためにという方向で利益が一致しているという設計なのですね。

 お問い合わせの対応の最後には「すべては、猫様のために。」と書いてます。そうするとユーザーの方からも、その返答に「すべては、猫様のために。」と書いてくれるんです。世界観は共感を生みます。いかに猫様のためにやってくれているか、ということをわかってくれるから、ユーザーの方からフィードバックもとても好意的なのです。共通の世界観を一緒に作っていこうというイメージですね。

-ここまで伺った中で印象的だったのが、実現したい世界のうちどこを知財で保護するかという点を当初から戦略的に取り入れられていたと思います。これからの起業家に対しても何かアドバイスはありますか?

 知財に限らず、資本政策や採用戦略等「べき論」はいっぱいあるけれど、会社の数だけいろんなパターンがあると思います。その会社にとって最適なものはそれぞれ違う。例えば、オフィスの場所についても、坪単がどうのというのがよく話題になりますが、うちは、CCOが通える範囲内(電車に乗せられない)ということを一番に考えている。みなさん、それぞれに合った手段を取るのがいいのではないかと思います。

-知ってからでは遅い、というのと同じものが知財にもありますよね。知財も「ああこれか」と思ったときにはもう遅い、という事態もありますよね。

  経営していくにあたって、踏んだ方がいいプロセス、マイルストーンの中に知財は抜けがちだと思う。私の場合は父親の影響(★注)もあったけれど、自分がリクルート時代のとき、事業を作るときにもレビューチェックリストがあった。このときにも、少なくとも商標はとっておかないと後で大変になるということは意識していた。創業前から知財については、当たり前の意識はありました。

資本政策と同じで、株放出してからでは後戻りできない。それは、知財も同じ

 資本政策と同じで株放出してからでは後戻りできないのは知財も同じだと思います。経営のための大事なリストの中に知財が入り切れていない会社は多いかもしれないですね。

★注・・・伊豫氏の御尊父は会計学の分野において知財評価を含む多数の書籍を著し、日本の会計学を支えた会計学者の廣瀬 義州氏。

ーそのような意識をもっと広められるように我々も活動していきたいと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました。

 「ありがとうございました。」

★YES! IP編集チームが感じた、この会社のここが素敵!★

『すべては、猫様のために。という空気を作るオフィス環境』

 代官山の閑静な住宅街にあるデザイナーズマンション。その一室にあるRABO。取材に伺った際に最初に出迎えてくれたのはCCOのブリ丸だった。猫様が快適に暮らせる世の中のために、猫様の声も取り入れつつプロダクトを磨き上げていく姿には、プロダクトの提供者と利用者の垣根を変えた世界観の共有があった。

取材のときの真剣なまなざしの伊豫CEOであったが、取材が終わりブリ丸と遊んでいるときの表情はとても優しく、そして無邪気な一面も。RABOのスタッフの約半分を占める13名が猫様「に」飼われているとのこと(2019年12月現在)。猫様と過ごしているからこそ、猫様のためによりよい世界を作ろうとしている暖かい空間が創り出されている。オフィスでは親睦のためにたこ焼き部(筆者も参加)等の部活も行われており、和気あいあいとした中にも、プロダクトを磨く真剣なスタッフたちが働いていた。

すべては、猫様のために。今日もCatlogは、猫様と人との「輪」を築いている。

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