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【知財イベント】WIPOシンポジウム:グローバルな時代におけるイノベーション/講演5「DuPontのイノベーションと知的財産活用」

イベント

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

 

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講演1「知財基本法から20年~知財は中小企業・スタートアップを支援する~」

講演2「イノベーションのエコシステムに向けて、スタートアップ成功国カナダより学ぶ」

講演3(#1)「グリーン技術を持つSMEの知財管理」

講演3(#2)「グリーン技術を持つSMEの知財管理」

講演4「特許出願に関する技術者兼CEOの考察」

 

千田 拓也
DuPont de Nemoursグループ会社
Senior Intellectual Property Counsel

 

本日はDuPontの知的財産及びイノベーションに関してご紹介する機会をいただきまして本当にありがとうございます。これから短い時間ですが、DuPontの紹介をさせて頂きたいと思います。

まず、私の自己紹介を簡単にさせていただきます。私は現在アメリカ企業に所属して、知財と法務を担当しています。これまでにアメリカの企業を3つほど経験し、かれこれ25年ほど知財と法務を担当してまいりました。今回は、その中で経験したことを話せる範囲でご紹介させていただきたいと思っております。

本日は「グローバルな知財活用」というテーマの中で、DuPontの会社概要とDuPontにおけるイノベーション、そして知財戦略という大きな3つのテーマでお話しをさせていただきます。

 

DuPontは創業以来イノベーションを大切にしてきた

 

まず、DuPontという会社をご紹介いたします。DuPontは、創業以来イノベーションを大切にしてきました。その中で培ってきたもの、それこそがイノベーションそのものになります。


現在、DuPontは「繁栄のために必要不可欠なイノベーションを世界に提供する」ということを目的としております。


また、全従業員に共通したコアバリューというものも存在します。日本の会社で言う社訓に近いものになると思いますが、この4つの柱をコアバリューとして、日々の業務を行う上で、全世界のすべての従業員が持つものとして挙げられております。

1つ目は、Safety & health(安全と健康)です。これは1802年の創業以来、変わらぬ約束として挙げられています。

2つ目は、Respect for people(人への尊重)です。社員だけでなく、パートナーや地域社会の方々など、すべての人を尊敬し、敬意を評して活動をしていくということです。

3つ目は、Highest ethical behavior(最高の倫理的行動を行う)です。

そして4つ目が、Protect the planet(地球を保護する)です。

この4つの考えに基づいて、我々は業務を行っております。

 

DuPontは「複数の事業においてビジネスをリードする会社」である


こちらは現在のDuPontの概要になります。事業規模といたしましては、全世界で2万3000名超えの従業員が働いており、製造拠点としては90個所ほどあります。そして、約40カ国にて事業展開をさせていただいており、その中の10個所ほどに研究開発センターが存在しています。


DuPontは、「Premier multi-industrial with market-leading businesses」、つまり「複数の事業においてビジネスをリードする会社」と自己特定しています。

事業は大きく3つに分かれています。

1つ目は「Electronics & Industrial(電池材料関係)」、2つ目は、「Water & Protection(水処理または保護具)」、3つ目は「Mobility & Materials(自動車関連の素材を提供)」になります。

それぞれが約5000億〜6000億円の事業規模を持っていて、昨年度には約1兆6000億円くらいの売り上げを上げている会社です。


この中で、DuPontは研究開発に力を入れてきており、2019年では、約600 million US$(約600〜700億円)の研究開発費を使っております。つまり、総売り上げの約4%を研究開発に投じているということになります。

2023年には、総売り上げの30%を新規開発した(過去5年以内に市場に出した)新製品で売り上げるという目標を掲げています。

 

「研究センター」と「イノベーションセンター」を設けている


先ほど、10個所の研究開発センターがあると申しましたが、このスライドの青い点のところ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各地域において、研究開発センターを持っております。

また、これとは別にイノベーションセンターを9個所ほど持っておりまして、このイノベーションセンターというのは、研究開発とはまた少し違う目的を持った施設となります。パートナー会社や顧客とともに、新しいイノベーションを生み出すための場所という位置づけで、開発センターとは別に拠点を設けているのです。

 

DuPontの歴史

 

DuPontは、1802年にアメリカで創業されました。それ以来、220年間イノベーション・事業を行ってきた会社です。

1802年にアメリカのデラウェア州ウィルミントンという街で、E.I. du Pontが事業を起こしました。この頃は、黒色火薬を製造する会社として、30名程度の従業員で始まったといわれております。そこから約100年近く、ずっと火薬を中心にした事業展開をしていた会社です。

しかし、20世紀に入ってからは大きく会社の業態を変えていきました。1902年からは科学会社として会社を方向性づけて、変革していきました。ここから、研究開発センターが出来上がり、イノベーティブな様々な製品を開発してまいりました。例えば、合成繊維であるナイロンやハウスラップ、建築で使用される防湿シートのタイベック、また、強化フィルム・プラスチックフィルムであるケブラーなどです。このような今では世界に広く浸透している製品というのは、この時代に開発されています。

この中で、1900年前半には他の会社とパートナーシップという形で、様々な製品を展開しておりました。例えば、合成繊維であるレーヨンをフランスの会社と技術提携をしてアメリカに導入したり、プラスチックフィルムであるセロファンも同じくフランスの会社と技術提携を行って合弁会社を設立し、さらに研究を進めていったという歴史を持っております。

特に20世紀に入ってからは、技術や知的財産を重視し、それらを活用して事業を大きくしていきました。

1900年半ばには、総合ケミカルカンパニーとしての地位を確立していきました。その後、1960年前後からは国際戦略を明確に打ち出して、世界各国に事業展開をしています。

日本では1960年前半に合弁会社を4つほど創り、日本の会社と技術提携をしながら、日本のマーケットにDuPontという技術を紹介していく戦略を取っています。この時にも、米国のみならず日本でも特許を取って、技術提携を上手く進めておりました。

20世紀後半に、今度は環境を重視するということで、環境保護主義を取りますという宣言を1989年にして、ケミカルカンパニーからサイエンスカンパニーへトランスフォーメーションしております。この時代にもイノベーティブな技術を開発していて、例えば1995年にポリエチレンの新規の製造方法を開発し、特許を取得しているのですが、全世界から数にして500件を超えるライセンスの申し入れがありました。

また1996年には、石油を使わずに、植物を原料にして微生物を使った技術によりプラスチックを作る製造技術を発明しました。すでにこの頃から、「微生物を使った製造方法は特許になるのか」という課題を特許庁に与えたというような技術を開発していました。

そして、21世紀に入って、再度トランスフォーメーションを行い、今度は総合サイエンスカンパニーとして、多角化を辞めて農業特殊化学、素材科学に注力していくということで会社の方向性を変更しております。

その後、米国NO.1のダウ・ケミカルと合弁し、2019年に再度会社分割を行って、2019年に今のDuPontの形となったというわけです。

このように、DuPontは常にイノベーションを中心に、会社や事業展開をしてきました。ここからは、現在のイノベーションの考え方をご紹介をしていきます。

 

世界の人々の生活を豊かにしてサステイナブルな開発を行う


私たちは「To empower the world with essential innovations to thrive」、つまり世界の人々の生活を豊かにしてサステイナブルな開発を行うということを目的に、現在も色々なイノベーションを行っております。


また、「We’re a purpose-driven global innovation leader」として、スライドにあります3つの事業に注力して、イノベーションを中心とした事業展開をしています。

この中で2020年にDuPontは、サステイナビリティロードマップという形で十箇年計画を発表しました。


さらに2023年には、イノベーションプロテクト&パワーという3つの大きなテーマを持って、サステイナブルな開発を行うということを目標として設定しています。


こちらが2030年に向けての9つの具体的な目標になりますが、それぞれの詳細については、今回は割愛させていただきます。


今回は、この9つの目標のひとつである「Delivering solutions for global challenges」についてご説明いたします。

2030年までに、DuPontのイノベーションを100%国連のSDGsの目標に、またお客様の価値を向上するものに向けて100%合わせていくということを目標にしています。具体的な実施方法は、右側に記載しております。現在の弊社の強みである5つの事業分野、そしてメガトレンドと呼ばれるものに特化した形でイノベーションを創っていくというのが現在の目標です。

 

現在DuPontが取り組むイノベーションエリア


こちらは実際に現在DuPontが取り組んでいるイノベーションの5つのエリアになります。

この中の一番左にある「Clean Water」、つまり清潔な水を提供するために新しい技術を開発しているというのがひとつの例示になります。


大きく達成しているイノベーションのうちの3つがここに挙げられています。

例えば「Connectivity and Mobility」。これは電子材料系、例えば5Gや世界の電子スマートシティ作り、スマートデバイスの提供のために、弊社の技術やイノベーションを提供していて、今あるほとんどのスマートフォンの中には弊社の技術が含まれています。

また、防護服に使われているタイベックという生地は、医療関係の中で、昨今のCOVID-19の状況化でも防護服として使われています。

新たなソリューションを提供しているということが、最近のイノベーションです。

 

知的財産の取り扱いに関する考え方


さて、ここからは知財をどう扱っているか、DuPontの知的財産に対する1つの考え方をご紹介させていただきます。

まず知財戦略の前提として、知的財産と事業の有機的成長という関係は、知的財産を戦略的に作って活用することが重要であるというのを前提に、弊社では戦略を立てております。

要素としてあるのが、まず1つ目に特許、そしてブランド。2つ目に、その作られた知的財産に対して、攻めと守りの戦略を立てる。3つ目にスピード、つまり時間を大切にする。そして、4つ目が重要で、持続的に成長するためには常に知的財産による保護的障壁を作り上げ、それを変えていくということ。これが重要であると考えています。


なぜ特許が必要なのかということですが、特許は「
技術の通貨」であると考えています。特許を持つことによって、一時的に優位性を持つことができますが、永続的な優位性ではないということで、次の新たな技術やイノベーションが生まれるまでに、現在の事業を守り、そして攻める。そのためのツールであると考えております。


こちらは知財戦略をつくるときに考えているステップになります。

まず事業戦略から知財戦略をつくるエリアを特定し、次に知財ポートフォリオとしてそのエリアにおける知財をすべて確認していきます。その後に立場を確認して戦略を立てていくというステップを取っております。


こちらは知財戦略において最も重要なところです。明確な技術戦略、そして実行可能で優れているところを重視して知財戦略を立てています。

最後に、このスライドの下に書いてあることが一番大切だと思っています。

特許を取りに行った最初の人は、最初のラウンドでは事業で勝つけれども、次のラウンドで、次世代に勝つためには自らの技術を陳腐化させ、新たな技術を見つけていくということが重要である

この考えを持って、我々は常に新たなイノベーションを創出しているのです。

もちろん、弊社だけで解決できる問題ではないことも多いですので、今後も様々なパートナー会社やお客様とともに、新たなイノベーションを創り続けて行きたいと思っています。

ご静聴ありがとうございました。

 

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