知財が生んだ、一次産業の新たなマーケット #2
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株式会社マルイチ 岩佐社長インタビュー後編です。
マーケット拡大のため、これまでにない新しい取り組みを進めている株式会社マルイチの今後の展望とは。
『人材育成でマーケットを広げたい』
―現在、特殊伐採産業を広げるための重点施策はどのようなものでしょうか。
現在はエンジニアの人材育成に力を入れています。これまでは研修として受け入れてきましたが、研修のお客様になってしまうため、成長のスピードはどうしても落ちてしまうということが分かりました。そこで、新たにアーボリカルチャーアプレンティシッププログラム(※1)を開校しました。4年間でウッドタワー指導員と国家資格・準国家資格まで取得できるプログラムを実施しています。3名の方がすでに入校決定し、日々トレーニングを進めています。
(※1)アーボリカルチャーアプレンティシッププログラムとは、4年制で奨学金制度があり、土木・建設業の施工に必要な国家資格に合格するまで指導。将来、公共工事関連の特殊伐採の業界で活躍したい人材を育てるプログラム。
―4年間で資格を取得できるプログラムは魅力的ですね。このプログラムは将来的にはマルイチに入社してもらうことも目指しているのですか。
それはこれらの取り組みに参加される人に任せています。最初から独立を視野に入れて参加している方もいますし、世界的にみても高度な技術を持っているマルイチの社員として働きたいと言って参加してくれる方もいます。私たちも業界を牽引していく役割を担いたいと考えていますので、高い技術の習得された方は、是非一緒に、この産業を育てていく仲間になってほしいと考えています。
『世界進出の目途もついてきた』
―独自の技術を普及するために、様々な活動をされていますが、見えてきた成果はありますか。
ようやくエンジニアが育ち始め、周りからの評価も上がってきたと感じます。特殊伐採の技術で食べていける、と感じられるようになってきました。
―マーケットは日本だけなのでしょうか。グローバル展開も考えていらっしゃいますか。
そうですね。市場は日本に限りません。特許もPCT出願で外国での権利化も進めています。私たちの工法や製品を用いて、世界へ進出する目途もついてきていますね。これまでの活動の成果が蓄積されてきて、潮目が変わってきたのをひしひしと感じています。
―最近特許になったものもあるのですか?
2020年に入ってから、揚重搬送システム特許が権利化しました。我々はこの8年間、のべ数千箇所に及ぶ鉄道沿線の近接木伐採や、官公庁、民間発注の支障木伐採工事を、無事故で実施してきました。これらの工事をする中で、特に首都圏等の過密路線で伐採工事を行う際に、経験や勘ではなく技術的裏付けのある安全性向上が喫緊の課題であることに気づかされました。新たに権利化した揚重搬送システム技術は、この課題を解決します。
『他の業界にも技術を広めていきたい』
―今後、マルイチとして叶えたい目標はありますか。
そうですね。特殊伐採のマーケットをどんどん広げていくという目標と、開発してきたデバイスの他業界展開も行っていきたいと考えています。
―他の業界ですか。
はい、特殊伐採のために製品を開発してきましたが、例えば、土木・建築業界や漁業でもロープを使いますよね。私たちの製品が、ロープを使う他の業界でも、活用してもらえる可能性は十分にあります。これまで林業という職人技の世界で頑張ってきましたが、知的財産を活用することで労働集約的な働き方からも脱することができると思います。林業に限らず一次産業は重要な産業だと思いますので、稼ぎ方の多様化を実現できる知的財産をしっかりケアしながら、事業を進めていきたいと考えています。
≪あとがき≫
かつて特殊伐採は、常に危険と隣り合わせでした。しかし、株式会社マルイチが生み出した『揚重搬送システム特許/フォレストムーブ工法』により、これまでの概念を大きく覆し、効率よく、何より安全に、樹木を伐採することが可能になったのです。その裏には、岩佐社長の職人を愛する気持ちとマルイチの技術者たちの並みならぬ努力がありました。『フォレストムーブ工法』が当たり前となる未来へ。株式会社マルイチの独自技術は、これからも一次産業に新しい光をもたらしていくことでしょう。
株式会社マルイチのホームページはこちら
https://www.maruichi01.co.jp/