【知財イベント】『JAPAN INNOVATION DAY 2020』レポート~Vol.2 ディスカッション~スタートアップに必要な知財戦略とエコシステムの発展について#2
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2020年3月19日に、ASCII STARTUP主催の『JAPAN INNOVATION DAY 2020』にて行われた、IP BASE AWARD選考委員と受賞者によるディスカッションSession2です。
Session1「スタートアップに必要な知財戦略」はこちらから
【知財イベント】『JAPAN INNOVATION DAY 2020』レポート~Vol.2 ディスカッション~スタートアップに必要な知財戦略とエコシステムの発展について#1
「IP BASE AWARD授賞式」のレポートはこちらから
【知財イベント】『JAPAN INNOVATION DAY 2020』レポート~Vol.1 第一回『IP BASE AWARD』授賞式
Session2「スタートアップ・エコシステムの発展に向けて」
【モデレーター】
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 パ―トナー弁護士 鮫島 正洋氏
【スピーカー】
Drone Fund 共同創業者/代表パートナー 大前 創希氏
マスターマインドビジネスコミュニティ主宰 土橋 幸司氏
六本木通り特許事務所 弁理士 大谷 寛氏
スタートアップエコシステムに関する取り組みについて
大前氏「Drone Fundは、世界でも1社だけのドローン専門のベンチャーキャピタルです。私たちの周りにはドローンの専業のスタートアップがかなり多くいまして、どこも課題感が似ています。共同創業者の千葉(千葉功太郎氏)が立ち上げた起業家コミュニティ『千葉道場』の中で、『ドローン部』を創設して、スタートアップの皆さんと知財を含めた勉強会を行っています。また、LP投資家も参加して、事業開発の部分もディスカッションしています。」
鮫島氏「世界中にドローン関係のスタートアップはあると思いますが、ドローンという枠組みの中で、グローバルに様々な情報を集めてディスカッションをしていくというイメージですか?」
大前氏「そうですね。昨夏は深センで合宿を行い、現地のドローンスタートアップを視察しました。また日本のドローンスタートアップはまだサプライチェーンを上手く構築出来ていないという課題も大きいと思っておりますので、サプライチェーンがどう作られているのかという課題を設定して、各チームでディスカッションしました。また、DRONE FUNDには、ノルウェーやニュージーランドなど海外の投資先もありますので、各地域の課題感や成長の段階に合わせて、それぞれの課題に合うところでチームを組んでディスカッションしています。特に知財のトピックに関しては、お互いの持っている知財の強みを確認し合うことは重要だと思います。我々は、『DRONE iPLAB』という知財専門組織も持っているので、知財の専門性を持っているファンドとして情報発信もして、投資先のドローンスタートアップ同士の連携の提案もしていますね。」
鮫島氏「今回エコシステム部門のグランプリであります土橋さんにも、どういったエコシステムを構築しようとしているのかお伺いしたいと思います。」
土橋氏「一人でできることには限りがあるため、コミュニティをつくったことがマスターマインドビジネスコミュニティの始まりです。現在、全会員1200名の内、半分がスタートアップ、半分が大企業を中心とした企業から参加しています。私がそれぞれの企業の経営観念や強みを聞いて、テーマを併せて登壇頂くイベントを開催します。そこで、様々な知見やリソースを紡ぎ合わせて、メンバーたちが繋がることを目指しています。知財に関しては、人との縁で様々な知財専門家との出会いがあり、この1年で知財テーマのイベントも開催しています。」
鮫島氏「元々は、知財にフォーカスしたコミュニティではなかったが、最近になって知財に着目し始めて、かつ土橋さんも知財の重要性に気が付いてきたということでしょうか。」
土橋氏「そうですね。あくまでも、知財はいくつかある経営課題の中のひとつです。ただ、知財に力を入れている企業の経営者との出会いがあまりにも鮮烈でしたので、そこから世の中に発信していくことを始めました。」
鮫島氏「ありがとうございます。次は大谷さんにお伺いしたいのですが、エコシステムという観点からどのような活動をしているのかお聞かせください。」
大谷氏「2019年4月からベンチャー知財研究会を主催しています。勉強会では、毎回テーマを決めて、ひとりが発表し、質疑応答を行います。ルールとしてリサーチリスペクトというものがあり、検索や本から得る情報よりも一歩深堀りしたリサーチで得た、独自の情報や検討を入れることです。過去に出てきたものは、リスペクトしてもらって引用してもらうなど、議論が積み上がっていくような発表にしてもらうようにしています。知財、特許という点で考えると、個別企業の全特許50件を見てみてどうだった、みたいな内容も面白いですが、それを記録に残る形で世に出すとなると躊躇されることもあるので、オフレコで行っていますね。これまでは投資家や起業家に知財全体に興味を持ってもらえるようなテーマでやってみたこともありますが、あまり続きませんでした。そこで、スタートアップと関係のある知財に絞って深く議論するテーマに変えてみたところ、会計士や投資家、知財担当など様々な方が参加してくれるようになりました。」
鮫島氏「ありがとうございます。切り口は、皆様それぞれ違いますが、知財、もしくはそれを巡るビジネスに関するエコシステムを自ら企画し、運営しているということがわかりました。」
エコシステムに関する課題と今後の展望
鮫島氏「では、今皆様が取り組んでいるエコシステムに関して、現在の課題や今後の取り組み方についてお聞きしたいのですが、まずは大前さんお願い致します。」
大前氏「ドローンは産業として新しく見えますが、意外と古いところがありまして、実は新規性のない技術もあるのです。自分たちの技術のどこに新規性があるのか、また誰と組むと技術がよりよいものになっていくのか、それは1社で考えているとなかなか見つからないこともある。また、マーケティングがまだ難しいこともあり、マーケットにしっかり差しに行くことやいいプロダクトをつくるっていう点で、チームが整っていないところもあります。今後、ドローンを強い産業として育てていくには、協力体制や開発環境を築いていくことが重要になってくるのかなと思います。」
土橋氏「そもそもエコシステムって何かというと、同じ考えを持った人の集まりにしていくことだと思います。大企業が行っているオープンイノベーションは、最終的に自社の利益にとらわれてしまうのが、まだ妥協できていない。主催がどれだけ無償で、マインドを重視して運営していけるかが重要だと思います。」
大谷氏「いかに取り組みの幅を広げていくか悩んでいます。理想としては、ニュースレターや海外の注目特許の配信、スタートアップの中で知財に取り組んでいる人向けの基礎研修なども開催できれば、どんどん広がっていって知財を軸としたエコシステムの役割をひとつ果たせるのかなと思っています。ただ、それのリソースをどう確保していくかが課題ですね。」
鮫島氏「なるほど。エコシステムというと聞こえはいいけれど、裏では相当なご苦労があるということですね。」
スタートアップ支援者の方へメッセージ
鮫島氏「最後に一言ずつ、これからのスタートアップ支援者に向けてメッセージを頂けますでしょうか。」
大前氏「Drone Fundは、ドローンエアモビリティ前提社会を皆さんと一緒につくりたいと思っております。この皆さんという部分で、コミュニティをもっと広げていくためにも、注目していただき、何らかの形で関わっていただきたいと考えています。今年またコミュニティを拡大していきたいと考えておりますので、支援等含めて宜しくお願い致します。」
土橋氏「私はスタートアップ経営者の時間を増やしたいということで、エコシステムに所属している様々な方の知見や熱意を使って、経営者の時間を減らしていくことに務めていきたいと思っています。また、これからの鍵は、エコシステム同士を横繋ぎしていくことが大切だと思っていて、人縁で繋いでいきたいなと考えております。」
大谷氏「知財の専門家が、スタートアップの事業に貢献しようと思うと、知財だけでなくて、基本は経営の議論をしたうえで、意味のある貢献が出来ると思います。ベンチャー知財研究会は、色々な立場の方が来られていて、色々な角度からの視点で議論ができているので、スタートアップを支援していきたいと考えている方は是非とも一度研究会に参加していただけたらと思います。」
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