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知財戦略をコーポレートカルチャーに。技術を資産に変化させる重要性とは #1

インタビュー

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今までにないカラクリで世の中を豊かに——

カスタマーサポートの現場などで、誰でも簡単に活用できるカスタマーサービス特化型AI「KARAKURI」シリーズを提供するカラクリ株式会社は、昨年12月に知財戦略顧問(CIPO)を創設しました。

今回の記事では取締役COOの鈴木咲紀子氏に、自社の持つ先進的な技術を特許という形ある資産に変化させることの重要性と、知財戦略を会社全体で考える、カラクリ株式会社のコーポレートカルチャーがどのように醸成されてきたかをお伺いしました。

商標の譲渡は「思い」を引き継ぐこと

経営戦略を考える際、どのタイミングで知財を意識するようになりましたか?

カラクリにジョインを決めたタイミングから、既に知財の構想を描いていました。現代表取締役CEOの小田から「AIやディープラーニングの領域で事業をやっていく」と聞いた時に、事業領域もさることながら、取締役CTOの中山や開発者の経歴を知り、カラクリ株式会社の強みは技術力にあると確信し、パテントの取得は必須だと感じました。

また「KARAKURI」というサービス名においてもほぼ一般名称を使用していたため、商標の取得も入社前から検討を始めていました。

 実際に「KARAKURI」という名前で商標を取得できたのですか?

入社後に他社の商標を調査したところ、案の定同じ区分・領域で既に商標が取得されていました。すぐに現CIPO(当時は顧問)である安高に相談しましたが「取得は難しい」という結論になり、別のサービス名を考えようという案が出ました。これが2018年2月のことで、ちょうどシード期の資金調達を始めていた頃です。

しかし、そのような折にICCというスタートアップカンファレンス内のコンテストで「KARAKURI」が入賞し、名前が世の中に浸透し始めていたという背景がありました。それを踏まえると、サービス名の変更はとてももったいないと感じていたのです。

さらに他社の調査を進めてみると、重なるであろう区分で商標を取得している会社が2社あることが明らかになりました。それぞれ「KARAKURI」という言葉を使いつつも微妙に異なる響きをしており、2社のうちの1社に対しては、知人の伝手を辿り譲渡交渉を行いました。結果として、重複が懸念される商標は、過去実施していたサービスに関するものということもあり、「KARAKURI」を譲渡していただきました。

もう1社に関しては知人の伝手もなくコンタクトを取ることが難しく、ホームページのお問い合わせ窓口から直接連絡をしました。3ヶ月ほど全く音沙汰が無く諦めかけた時にお返事を頂き、譲渡の手続きを取ることができたのです。

ただ、メールを拝見し、該当する商標がその会社の方々にとって、とても思い入れのあるものであることがわかりました。ですので、長野県の本社へ直接お会いしにいき、創業者の方の「KARAKURI」という名前に対する思いをお話いただきました。そして、このような「思い」を引き継いでくれるのなら、という条件の元で譲渡をしていただいたのです。今でも、当時交渉を担当していただいた方とは季節ごとにご挨拶の連絡を取っているくらい、関係性を深めることもできました。

ステークホルダーにアカウンタビリティを果たす重要性

とても素敵なお話をありがとうございます。

 スタートアップが知財戦略を考えた際に最初に躓いてしまうのが予算の確保だと思うのですが、カラクリさんは知財の予算確保をどのように行なっているのでしょうか?

私はもともと経営企画の業務経験があり、経営戦略をたてるうえで知財戦略は同時に考えるものである、という意識です。ですので、予算確保が難しいと直接感じたことはありません。これから初めて知財に取り組むスタートアップに僭越ながらアドバイスができるとすれば、外部ステークホルダーに対するアカウンタビリティにおいて、知財は重要になってくると思います。

外部の投資家などのステークホルダーは、資金調達をする段階で知財の確認を行うことが多いです。初期段階で丁寧に知財戦略を練り、準備しておくことがプラスになることはあっても、マイナスになることはありません。資金調達をするタイミング以外にも、もちろんステークホルダーへのレポート提出の義務があります。弊社でも、毎月フルオープンで全て開示しています。また、計画の変更があった場合にも、必ず確認していただくようにしています。

私たちのようなテック系スタートアップは、テクノロジーの優位性が競争力にダイレクトに影響します。だからこそ外部のステークホルダーに対してしっかりとアカウンタビリティを果たしていれば、知財予算を問題視されることはないのかなと思います。競争勢力に対し、知財がどの様に優位に働くのかをきちんと伝えられていれば、予算取得は可能だと思います。

後発でも勝ち抜くための知財戦略

プロダクトを開発する中で、どのような事を心がけていらっしゃいますか?

カラクリは、AI領域における統合的なプロダクトを複数展開しています。全てのプロダクト開発で心がけていることは「テクノロジーを民主化する」ということです。

私たちのミッション・ビジョンバリューの中に「フレンドリーテクノロジー」というものがあります。toCモデルに関しては顧客や利用者に寄り添ったUIが増えていますが、日本においてtoB領域では、エンジニアが必要だったり遷移が多かったりと、UIUXが洗練されておらず非常に使い辛いサービスが多い印象です。AIを活用しているからといって、特別なテクノロジーであることを意識しないくらい、誰もが「当たり前」に使えるプロダクトを作るように意識しています。

「誰でも簡単に使える」ということを重要視されているのですね。

そうですね。特に「KARAKURI chatbot」においては凄く珍しいと言われるのですが、UI特許を取得しています。iPhoneなどは取得しているそうなのですが、普通のウェブサービスでは難しいと聞いていました。ですが、CIPOが「これは取れるかもしれない」と可能性を見出してくれたのです。

「KARAKURI chatbot」は2018 年2月頃にリリースしました。チャットボット市場の中ではかなり後発です。要素技術やAIなどのコア技術ではパテントの取得が難しいところで唯一「この部分いける!」と思ったのがUIでした。

チャットボットの運用で重要なトレーニングの「UI」の部分で取得することができ、模倣リスクの低い・競争力の高いところが取れたなと思っています。

―#2に続く

知財戦略をコーポレートカルチャーに。技術を資産に変化させる重要性とは #2



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