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未来の技術を育てたい——元銀行員の知財パーソンがスタートアップに道を開いた理由とは #1

(左)株式会社レストアビジョン 代表取締役 堅田 侑作 氏 (右)株式会社レストアビジョン 取締役副社長 宮崎 輝 氏
インタビュー

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大学時代は法学部で知財法を専攻し、卒業後は日本政策投資銀行に入社。
その後スタートアップの世界に足を踏み入れた宮崎さん。

銀行員時代は融資や経営サポートを通して、自動車産業をはじめとする大企業を支える側で活躍していた宮崎さんが、何故スタートアップの道へ進むことを決めたのか。

取締役副社長を務める株式会社レストアビジョンの事業内容や知財戦略の進め方とともに、宮崎さんがスタートアップで実現したい目標などをお伺いしていきます。

未来の技術を育てたい——元銀行員の知財パーソンがスタートアップに道を開いた理由とは #2

ー株式会社レストアビジョンの事業内容を教えてください。

私たちは網膜色素変性症の治療薬を研究開発しています。恐らくあまり聞きなれない病名かと思いますが、日本人の失明原因の第二位に位置付けられている病気です。これは遺伝病で、いわゆる希少疾患、指定難病に認定されており、国・人種を問わず3000~5000人が発症すると言われています。未だ有効な治療法がありません。そこで、より具体的な治療法と、失明した患者さんが再度また光を取り戻せるような視覚再生遺伝子治療薬を開発しています。

治療薬は、2027年までに薬事承認を受けられるよう研究開発と手続きを進めています。開発状況は、次に非臨床試験という検証テストに入るタイミングで、現在はそのための資金調達に注力しています。臨床試験を実施するためのものづくりの部分も進めており、CDMO(医薬品受託製造開発機関)にパイロットスケールで試薬品を作ってもらいました。その結果、第三者が作ることに問題が無く、品質試験もクリアしたので次はスケールアップ開発に進むところです。

ー宮崎さんの現在の仕事内容を教えてください。

私は主に財務をはじめとするコーポレート業務全般と知財関係の仕事を担当しています。弊社は代表と私の二名体制で、社労士、弁護士、弁理士、知財アドバイザーなど、顧問体制を作りながらコーポレート業務を進めています。文字通り代表と二人三脚で会社のロードマップに対し、CDMOとのやり取りや、CRO(医薬品開発業務受託機関)とのやり取り、あとは試験計画に問題がないか国に確認を取るためにPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)という承認機関への確認作業を行なっています。

そのほかファイナンスと知財の業務がイベントごとに発生します。資金調達の面では、ベンチャーキャピタル等投資家とのコミュニケーションや、代表のアクティビティをサポートするための資料作成、数値計画作成などを行なっています。知財関連では、PCT国際出願、予防などの周辺特許を取るためのポートフォリオ作成など、知財戦略を進めるうえで弁理士や知財アドバイザー、株主である大学教授にサイエンスの視点からアドバイスをいただき、各ステークホルダーの意見を踏まえて方針を決めています。

ー創薬のスタートアップとして、どのような知財戦略を進めているのでしょうか?

私たちが研究開発する遺伝子治療薬は従来の医薬品の製造方法と大きく異なり、製剤プロセスが複雑で品質管理が難しいです。一般的な低分子化合物の医薬品のように大量に化学合成するような製造法ではなく、培養した細胞に種々の遺伝子を導入することで薬を作らせます。私たちは、目的遺伝子である光センサータンパク質「キメラロドプシン」を搭載したウイルスベクター(遺伝物質を細胞に運ばせる為に使用されるツール)の研究を進めていますが、コアとなる核酸配列の部分をぼかさずに取得せねばならず、尚且つ配列がすこし改変されても抜け道にならないような知財戦略も非常に重要です。実際に薬にとって重要な部分である核酸コードのような積極的に取る知財と、他が参入できないように守るための知財も取得していかなければならず、そのバランスを考えながら知財戦略を進めています。

ーレストアビジョンの今後の展望を教えてください。

私たちが研究開発している治療薬は、2027年に上市を目指しています。網膜色素変性症の患者は世界中にいて、国や人種を問わず3000~5000人に1人が発症します。失明という脅威に不安を持たず、またすこしでも視覚情報を保って生活できるように、とにかく早く治療薬を開発し、患者に有効な治療法を提供することが、私たちが取り組むべき最優先のミッションと考えています。これを実現するため、早急にヒトPoCを取得した後、製薬会社をはじめとする事業会社とパートナーシップを組み、開発を加速させていきたいです。

インタビュー後半では、宮崎さんご自身にフォーカスを当て、スタートアップの世界に道を開いた理由や心境の変化、実現したい目標などをお伺いしていきます。

未来の技術を育てたい——元銀行員の知財パーソンがスタートアップに道を開いた理由とは #2



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