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音楽著作権はどこへゆく?無法地帯で権利者が生き抜くために必要なこととは#2

インタビュー

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音楽著作権はどこへゆく?無法地帯で権利者が生き抜くために必要なこととは #1

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権利を主張する前に、自分の欲望を明確化する

【澤井さん】
このような音楽著作権の構造やプラクティスのなかで、クリエイターが音楽業界を生き抜くためにはどのようなことを知っておくべきでしょうか。

山口さん
自分がもらう印税はどういう仕組みで自分に入ってくるのかなど、まずは音楽業界のビジネス構造をきちんと理解することが重要です。日本の音楽業界の慣習の基本的な構造を理解した上でどうするか、ですね。例えば、ジャニーズやAKBなどの人気アーティストに楽曲提供したいのであれば、そのためのルールに従うことが前提となります。でも同時に、そのルールは、国際標準からはずれていることもある。まず、自分が何をしたいかを明確化する必要があると思っています。日本の音楽業界がどういうビジネス構造でお金が動いていて、それを踏まえたうえで自分のメリットをどう現行の著作権制度に重ねるかを考えていくことが重要です。

澤井さん
なるほど、まずは自分のやりたいこと、そして音楽業界のビジネスを理解することが重要なのですね。しかし、日本のこのような音楽業界の独特の習慣はどうしても変わらないものなのでしょうか。

山口さん
変わらざるを得ないです。ただ、変化は遅いですね。音楽出版権の基本的なところで言うと、そもそも欧米では作家に帰属します。ですが、日本では戦後から、音楽出版権は歌ったアーティストがコントールするものなのです。これが自作自演型の場合だと作家とパフォーマーが一致するので矛盾が生じないのですが、作曲家とパフォーマーが別々であることが前提のジャニーズやAKBやLDHの場合では矛盾が生じてきます。楽曲を売るために一番リスクを負うのは、レーベルや事務所も含めて、アーティストサイドなので、僕自身はそれほど違和感を感じないのですが、おかしなことに、日本人の作家に仕事を依頼するときは出版権をアーティストに帰属させるのに、海外作家に仕事を依頼するときは、出版権をその作家に渡したりするのです。外国人作曲家に対する逆差別みたいな状態が生じています。この矛盾は早急に解決すべきだと感じています。

日本の音楽業界で仕事をしたいのであれば、クリエイターも業界という「村」的な社会で、明文化されてないルールが慣習になっていることを知っておく必要がありますね。

日本人の強みは、文化力しかない

【澤井さん】
山口さんはスタートアップスタジオも経営されていますが、音楽業界とスタートアップ業界、それぞれの知財に対する価値観の違いは感じますか?

【山口さん】
ITスタートアップも大抵は何らかのプロダクトがあり、プログラムも著作物ですから、作詞作曲みたいなものともシームレスに知財として括られる存在ではあると思います。スタートアップは著作権の使用者であると同時に、少なくとも自分たちのプロダクトに関しては権利者であり、そこに価値が出れば商標もブランドになる。そこに敏感である事は非常に重要ですね。

日本人の強みは文化力しかないと思うのです。今やJ-POPは比較の対象にもならないくらい、K-POPに負けまくってるわけですが、今のK-POPも振り返れば、ルーツは日本から始まっているんですよね。東方神起やBoAは、日本人と韓国人が日本の仕組みで育てたのですから。今は、日本は資金力やテクノロジーで圧倒的に世界から遅れをとっていますが、文化力が高く多様性や許容性があるユーザーがいて長い歴史を持っている。日本の強みはそこだと思うのです。そういう面で、知財の活用はこれからの日本では何をやるにしても非常に重要な分野だと思っています。

【澤井さん】
中国の技術革新の速さなどを見ると、確かにそう感じます。

【山口さん】
ちゃんと負けを認める事だと思うんですよね。日本はまだ何となく負けていない気がしてしまっているから。中国や韓国がイノベーションのジレンマに陥った時に抜き返す術を、今から考えなければいけないと思っています。

音楽業界のDXの遅れを挽回したい

【澤井さん】
音楽業界でお仕事をされている中で知財を意識するようになったきっかけを教えてください。

【山口さん】
以前、僕はアーティストマネジメントを担当していたんです。アーティストは例えると権利が束になって服を着て歩いているようなものです。著作者でもあり、実演家でもあり、肖像権も持っている。俳優もやるかもしれないし、写真も撮るかもしれない。アーティストマネジメントはそこが解っていないとできない商売で、ある程度意識の高いマネジメントはそれをきちんと理解していると思います。スタートアップと関わるようになり、ITサービス側から権利の束を見ることになってからは、更にそこの価値観に対する意識は高まりました。スタートアップが経営戦略として知財を活用する際に、獣道を生き抜くためのアドバイスをしてあげられるのが僕の価値だと思っています。

【澤井さん】
確かに、マネジメントをする側から見ると権利の束に見える、そのことを当人が認識しているかどうかが重要ですね。最後に、スタートアップスタジオを設立された経緯について教えてください。

【山口さん】
スタートアップスタジオという業態が生まれて、世界で広まっていると聞いて興味を持ちました。目標を立てて、仮説検証をして、仲間を集めて、投資家から資金を得るというスタートアップのゼロからイチをつくる方法論が、アーティストの育成とも似ていて、僕の行動様式を合うなと、ピンときたのがきっかけです。これからの日本に必要な文化力にスタートアップを掛け合わせて新しいエンターテック(エンターテインメント×テクノロジー)という概念を創っていく。これは、日本の未来にとっても凄く良いことだし、僕の知っている音楽業界やエンタメ業界のDXの遅れを挽回したい。そのためには、今ある大きな会社が何かを変えるのは難しくて、スタートアップの力が必要だと思います。

日本の産業界の中で、エンタメ産業の重要性がどんどん上がり続けていると感じています。そういった流れの中で、このようなスタートアップが早急にDXを進めて欲しいと期待しています。

音楽著作権はどこへゆく?無法地帯で権利者が生き抜くために必要なこととは #1

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