我々はスタートアップ精神を持って前に進み続ける#1
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【後編】我々はスタートアップ精神を持って前に進み続ける
近年、大手企業がスタートアップに出資や投資をする動きが広がってきています。SBSホールディングス株式会社も、その取り組みを精力的に進めている会社のひとつです。スタートアップとの連携にはどんな意図があるのか。実際に、鎌田社長にお話しを伺いました。
『スタートアップに、実証の場を提供している』
―御社は1987年に創業され、比較的短い時間で急成長されていますよね。最近ではM&Aや組織改革など、今の時代に合わせてかなり積極的に事業を再編されていると思います。年末には、株式会社Pyreneeとの連携も発表されていて、新たにスタートアップとの連携も強化していくのかなと感じました。SBSにとって、スタートアップとの関係性はどのように考えられていらっしゃいますか。
我々は34年前に立ち上がったばかりの会社です。日本の物流業界には、既に様々な大手企業がある中で、どう戦っていこうかと考え、積極的な同業種のM&Aで事業を拡大してきました。そうすると、今度はそれだけの人材が必要になってきますよね。でも現在、日本の労働人口は足りていない。ここから先、我々が大手企業と戦っていくためには、今までのやり方ではだめになってきているのです。そこで、我々も新たな技術を開発しているスタートアップへの投資や新しい技術開発などに力を入れていくべきだと思いました。例えば、倉庫内をロボットが走り回るといったように、全自動化まではいかなくても半自動化できる技術など、あらゆるテクノロジーを駆使していかなければ、大手企業に負けてしまうと思ったのです。
―スタートアップに投資を始めたきっかけは、何かあったのでしょうか。
私は、7~8年くらい前からシリコンバレーに行って、現地のスタートアップをたくさん見てきました。現地では、自動運転やドローンなど、ものすごくハイテクなものが次々と生まれてきています。今、日本のスタートアップもそれを追いかけている。我々は、そういう姿を見て、未来のあるスタートアップには積極的に投資をしていこうと思いました。年間の投資予算を決めて、これまでも様々なスタートアップに投資をしてきました。先日は、ロボットが倉庫内で動く、AGVを開発しているシーオス株式会社に投資をしました。我々は、投資をする前にはまず、その技術を弊社で試すことを勧めています。実際に一度試してみて、技術が成功するかどうかを実験してもらっているのです。そして、実験が成功したら、投資はもちろんのこと、弊社の車にも技術を搭載することを検討します。今後、車の安全や倉庫の自動化、AIなどの技術開発は、スタートアップ企業と一緒にやっていく考えでいますね。
―スタートアップにとって、資金ももちろん大事ですが、技術を実証する場がないことに困っているという話もよく聞きます。御社のように、実証できる場を提供しているというのは、すごくありがたいことだと感じます。
我々は創業当初から色々な事業をやってきて、広大な土地や倉庫、トラックもたくさんあります。ですから、色々な実験ができるのです。これまでにも様々な技術を持った方が来ましたが、我々は断らずに実験の場を提供しています。
―その場合は、共同開発になるのですか。それとも、場を提供しているだけで、開発はすべて任せているのでしょうか。
場を提供しているだけですね。開発が進んで、技術が良いものになってきたときに、出資も検討します。会社としては、年間何億かは出資していこうと決めているので、新しい技術があったら積極的に出資して、技術を取り入れていく考えでいます。
ただ、出資したとしても、シェアは最大でも20%未満です。経営に口を出すつもりはありません。あくまでスタートアップとの協業の一環として、支援の意味合いが強いです。
『今後ロジスティックは、理系の仕事になっていく』
―先日、ヤマトホールディングス、鈴与とともに、東京大学先端科学技術研究センターに「先端物流科学寄附研究部門」を共同設置していましたね。
はい。寄付講座ではロジスティックの研究を行い、いずれはロジスティックの新しいテクノロジーが生まれるといいなと思っています。また、ロジスティック業界への学生の就職比率は、文系出身者が多く、理系出身者はとても少ないのが現状です。我々は、今後ロジスティックは理系の仕事になっていくと思っています。今我々に必要なのは、理系の学生に興味をもってもらって、今のロジスティックをどう合理化していくかを考えていくことです。そこが勝負になってくると思います。東大の寄付講座によって、学生たちにロジスティックの面白さを知ってもらい、将来の研究開発のための人材を増やせていけたらと思っています。
―東大の寄付講座の他にも、鎌田財団で研究助成もされていらっしゃいますよね。
はい。これは事業ではなく社会貢献の一環です。大学で研究開発費が限られている先生やロジスティックスの研究をしてくださっている先生を支援していこうという目的で財団を作りました。これまでに様々な先生から、多くの申請が集まってきています。
―そのような取り組みから、これまでに大学発でスタートアップが立ち上がったというような話はありますか。
まだないですね。でも、大学の先生たちが、この研究助成を機に我々のことを認知してくれて、採択した方々が色々な論文を出してくれている。この流れがもっと広がっていけば、ロジスティック業界で働きたい人と思う理系の技術者たちが増えるかもしれない。そして、技術開発がもっと進んでいけば、日本のロジスティックも、アメリカや中国よりもっとはるかに進んでいく可能性がありますよね。
―現在、ロジスティック業界に足りない技術って何でしょうか。
倉庫内のオペレーション技術ですね。Eコマースがこれだけ発展してきている中で、Eコマースに対する倉庫技術が追いついていないのです。我々は、日本国内で大きな倉庫を続々と造っていますが、倉庫内のオペレーションの技術を革新していかないと、オペレーションが追いつかないなと思います。
後編へ続く
【後編】我々はスタートアップ精神を持って前に進み続ける