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スタートアップが弁理士と出会うには?株式会社アジラがCIPOを創設した理由とは #2

インタビュー

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日本人とベトナム人によって共同で設立された株式会社アジラ。現在は世界トップクラスの行動認識AIサービスを展開しています。

 

知財戦略にも力を入れており、2018年より顧問弁理士であった相田 隆敬さんとともに7件ほどの画像からの行動認識に関する特許を出願。2021年には社内にCIPO(最高知財責任者)を設立し、相田さんを執行役員メンバーとして迎えました。

 

前半では、株式会社アジラのCMO(最高マーケティング責任者)である溝呂木 聰さんとCIPOの相田さんに、知財戦略に力を入れ始めた経緯や、知財戦略を検討する上で大切にしていることなどをお伺いしました。

 

【前半はこちら】

スタートアップが弁理士と出会うには?株式会社アジラがCIPOを創設した理由とは #1

 

後半では、知財戦略を強化したことで見られた変化や、これから知財戦略を考えるスタートアップへのアドバイスなどをお話しいただきました。

 

知財を自分ごととして考える機会は少ない

 

ー知財戦略を強化することで見られた社外や社内の変化はありますか?

溝呂木さん
社外での変化としては、競合についてお話しする際に知財が参入障壁になりうる点でご安心いただいたり、市場の中での優位性なども説得力を持って聞いていただけます。社内でいうと、会社のコア事業に知財が深く関わっているというところで、知財に対する意識を高める仕組みづくりをしていこうとしています。その一環として、従業員の開発の中で知財が出てきた際は、それをしっかり給与の面で評価し、反映できる制度を準備しています。会社全体で発明を後押ししていき、知財を資産として大切にしていく文化をつくっていきたいですね。発明の報奨金制度などは、ヒトが足りないスタートアップだからこそ、採用広報の面でも非常に意義があると考えています。

 

ースタートアップが知財意識を高めるにはどうすれば良いと思いますか?

相田さん
大手と比べると、スタートアップは知財ひとつひとつのインパクトが大きいと思います。また知財意識が高いところは、業種にもよりますが、それに伴って事業も伸びているように見えます。スタートアップのように志を高く持ち、事業を大きくしていきたいと望んでいるのであれば、知財は、事業を伸ばすために非常に重要で、無視することのできない要素だと思います。

最近では商標の案件数がとても伸びています。これはAmazonにブランド登録する際、登録商標でなければ有効化できないなどの背景があるためです。それに対して、特許の方は、特にスタートアップでは、必要性が目に見えることが少ないため、自分ごとで考えるのが難しいのではと思います。実際に侵害を受けたなどのニュースが身近で出回ると、意識するキッカケになるのではと思います。

 

権利化だけが知財戦略ではない

株式会社アジラ CMO(最高マーケティング責任者) 溝呂木 聰さん

 

ー相性の良い弁理士と巡り会えたスタートアップは知財戦略をうまく進められていますが、出会いの場が整っていないという課題がよく挙げられています。これから知財戦略を進めていきたいと考えているスタートアップに対して、お二人はどのようにアドバイスしますか?

溝呂木さん
弁理士の先生とスタートアップの関係は、専門性だけでなく相性も非常に重要だと感じています。最初の段階で人と人とのコミュニケーションがうまく取れる関係性が築けないと、専門性が高かったとしてもうまくいかないと思います。価値観や考え方も人それぞれですし、そういう意味では話をする機会を多く持つということは非常に重要だと感じています。専門家の方がのめり込むくらい、そのスタートアップの事業が面白いかどうかも重要だと思います。

相田さん
アジラは、最初は私以外にも何人かの弁理士の先生とお話をされていたそうで、これはとても良いことだと思います。一人としか話をしないとその方がスタンダードだと思ってしまいます。私は半年ほど特許庁の仕事で全国を飛び回り、大企業、中小企業、スタートアップなど様々な方とお話をする機会がありました。その中で感じたことは、良い権利を取れることは非常に重要ですが、それよりも、”実状を理解したうえで知財戦略を考えられることの方がより重要だ”ということでした。特許権を取得したはいいけれど、全てを公開してしまったり、意味の無い特許を取ってコストがかさんでしまっては良くありません。このような特許庁での経験を生かして、ただ単純に出願数だけではなく、会社のことを考えた知財戦略を提案していたからこそ、アジアからも信用を得られたのかなと思います。

 

ースタートアップがCIPOとして弁理士を社内に迎え入れるような動きは、弁理士の働き方の多様化に繋がるように感じました。それでは最後に、今後の展望を教えてください。

相田さん
特許を取るだけでなく、知財面からの市場調査や競合分析なども進めていきたいと考えています。またCIPOとして中に入りましたので、営業の場での機密漏えいなどが無いよう、知財だけでなく今後は社内情報セキュリティの対策の推進もしていこうとしています。

溝呂木さん
会社全体でプロダクトを開発してきて、これからはマーケティングや営業にも力を入れて製品を世に出していきます。CIPOにも入っていただいたので、事業戦略と知財戦略の両軸を進めていき、知財面も自社の強みとしてアピールしていきたいです。

 

【アジラの知財への取り組みについての記事】
https://pr.asilla.jp/entry/202105_patent

 

【前半はこちら】

スタートアップが弁理士と出会うには?株式会社アジラがCIPOを創設した理由とは #1

 



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