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【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(5)~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

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Vol.3(4)はこちら↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(4)~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

 

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【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.1~開会式~

 

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.2~基調講演~

 

コラボ契約の前に権利化するべき

 

澤井さん
最後のテーマといたしまして、オープンイノベーションやコラボレーションはこの20年来、自前主義からの脱却などと言われていますが、最近の経済産業省のレポートを見ても、依然として自前主義からの脱却という言葉がございます。このオープンイノベーションやコラボレーションを進めていくうえで、これからどうしていくのか。特に、中小企業にとっては最初の契約が不十分であった、あるいはうまくいかなかったということで、ご苦労されていることもあるかと存じます。

日々、スタートアップ企業や中小企業からご相談を受けている久貝様からお話しをいただければ、多くの中小企業の皆様の転ばぬ先の杖になるのではないかなと思いまして、ご意見を頂戴できればと思います。

 

久貝さん
まずスタートアップにとって大企業との連携というのは、資金調達の場においても、開発の場においても、いずれもスタートアップにまだないものを持っていて、役割を担ってもらえると期待するという点で、大変重要だと思います。ただ、一方で契約の際に揉めてしまうということも起こっています。

そこでまず大切なことは、契約の前に権利化をするということではないかと思います。中小企業の経験から、スタートアップにアドバイス出来ることとしては、以前、親企業を通じて日本の中小企業の金型の設計図やノウハウが中国など当時の途上国に流れてしまったということがありました。ある種の知財流出ですので、ますます中小企業が経営打撃を受けてしまいました。

しかしその時に、金型の設計図やノウハウは、果たして守られるべき知財だったのかという議論になりまして、契約でもはっきりしてなければ特許でもない、じゃあ営業秘密として管理していたのかというとそうでもない。後にこのようなことにならないためにも、必ず契約の前に権利化するということが、まず自分の知財を守るうえで大事なことではないかと思います。

また、契約の部分で言うと、契約の知識がない、契約の専門家がいないという点で、のちに不利な状況になってしまったというケースがあります。この点については、特許庁や中小企業庁のほうで、スタートアップのために無償で共同研究契約のひな型や注意点に関するチェックポイントのガイドライン等を出されていると思います。是非ともこういうものを積極的にご活用いただきたいという風に思います。

それから制度的課題については、やはり中小企業にとっては司法救済の問題があると感じています。日本では、知財を侵害されたからといって、中小企業あるいはいわゆるお金がないスタートアップが日本で裁判をするということは非常に困難であり、なかなか裁判できないということを前提に考えていったほうがいいのではないかと思います。

現実問題でいいますと、日本の特許侵害訴訟の件数は、だいたい年間160件ぐらいです。アメリカでは、5000件は超えていると思います。中国でもすで1万件を超えている。特許件数でみると、日本はだいたい170万ぐらいで、アメリカはもう少し多くて、中国はそれより少ないくらいですが、侵害、紛争の問題になってきますと、全然オーダーが違います。これはやはり今の司法制度が使いにくいということを示しているのではないかと感じています。

 

日本の弁護士手数料の仕組みと弁理士会の施策

 

澤井さん
まさにそうした紛争解決のためにもしっかりと特許を取っておく必要があると感じています。米国などは、特許弁護士の方々が、一見さんなどはじめて知財を使うような方々を、割引料金を設けたりしている場合があると聞いております。同様の仕組みが日本の事務所にもあるのでしょうか。杉村様、お願いいたします。

 

杉村さん
現時点におきましては、弁理士の手数料は、各事務所や各弁理士が自由に設定できるようになっております。従いまして、日本の個々の特許事務所についての手数料については、詳細に把握はできておりません。ただ、弊所もそうですが、事務所経営に支障がない範囲におきまして、割引に協力している事務所は多いのではないかと思っております。

一方、日本弁理士会では、スタートアップ企業の経済的支援のための施策をいくつか持っております。一つ目は、特許出願と援助制度と申しまして、特許・実用新案・意匠の出願費用を援助する制度になっております。本年度は、ブランディングを図っていただくために、商標も加える予定です。

二つ目が、技術、ブランド、知的財産、ビジネスプランコンテストでございます。これは新たな萌芽的ビジネスプランを発掘・表彰するものでして、コンテストの入賞者に関しましては、賞金とともに弁理士がハンズオンのフォローアップを行って、ビジネスプランを育成するとともに、出願費用を助成しているものでございます。スタートアップ企業にとりまして、有益な事業と思いますので、是非スタートアップの皆様にはご利用いただければという風に考えております。

 

このドアが閉まったとしても、人生は終わらない。必ず他のドアが開く。

 

澤井さん
最後に孫様はある書籍のインタビューで、『このドアが閉まったとしても、人生は終わらない。必ず他のドアが開く。』と述べています。多くのスタートアップや中小、若い学生の皆様、さらにはそうした方々を育てている先生方の皆様、多くの方々を勇気づける言葉かと存じます。この点について、孫様お話しいただけますでしょうか。

 

孫さん
私は中国の田舎に生まれて、9歳の時に右足を切断してしまったのですが、農業ができなくなったことで、将来に対して非常に不安を抱えていました。そのときに両親から、私は勉強するしかないという風に言われたのです。それまでは勉強していなかったのですが、そこから勉強を頑張り、大学に入って、日本にも留学できて、今に至っています。

実際、切断するときには、色々マイナスなところがあったのですが、義足つけ始めたことで義足の課題を感じて、今では実際に自ら義足を開発していく立場になって、振り返ってみると、もし切断がなければ、もしかしたら私はまだ中国の田舎で農業をやっているのではないかなと思うのです。

こういう色々な困難があるからこそ、自分が立ち向かって、マインドチェンジしてやっていく。今実際にスタートアップ企業を経営していく中でも、資金調達や人材の採用など色々と苦労したり、うまくいかないこともよくあります。ですが、その時にはいつも、それはただの一つの困難、それを乗り越えていけば必ずより大きいチャンスがやってくると思っています。人生には本当に様々な課題や困難がある中で、すべてをポジティブにとらえて、それと戦っていけば必ず勝っていくと思っています。

 

Vol.3(6)質疑応答へ続く↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(6)質疑応答~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

 

Vol.3(4)はこちら↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(4)~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

 

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