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【知財イベント】『IPAS2020 Demo Day 成果発表会 レポート〜Vol.4 支援先スタートアップ15社による成果発表ピッチ(3)』

イベント

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Vol.3支援先スタートアップ15社による成果発表ピッチ(2)はこちら↓

【知財イベント】『IPAS2020 Demo Day 成果発表会 レポート〜Vol.3 支援先スタートアップ15社による成果発表ピッチ(2)』

 

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Vol.1 開会の挨拶とIPAS2020の概要についてはこちら↓

【知財イベント】『IPAS2020 Demo Day 成果発表会 レポート〜Vol.1 開会の挨拶とIPAS2020概要説明』

 

Vol.2 支援先スタートアップ15社による成果発表ピッチ(1)はこちら↓

【知財イベント】『IPAS2020 Demo Day 成果発表会 レポート〜Vol.2 支援先スタートアップ15社による成果発表ピッチ(1)』

 

他社を知るにはビジネス面と知財面の両方からのアプローチが必要

株式会社Genics 栄田 源 氏

私たちは、最新技術で全ての人に簡易かつ確実な口腔ケアの提供をしていきたいと考えています。高齢化が進む日本では、口腔ケアは健康的に歳を取り食事やコミュニケーションをするうえで、非常に重要な役割を担っていると考えています。また30代以上の約7割が歯周病と言われており、歯周病は他の病気を引き起こすリスクも高いことから、全ての世代の方の口腔ケアのサポートをしたいと考えています。私たちは歯列に沿って全自動でブラシを動かす、世界初の「誰でも咥えるだけで歯磨き可能」な口腔ケアプロダクトを開発しています。

IPAS採択前の課題意識として、短期的なビジネス戦略と知財戦略を別々で考えることはありましたが、互いがどの様に結びついて事業全体の成長に繋がるかは未検討でした。IPASを通して、ビジネス面ではフレームワークを活用した対象顧客の分類やビジネスモデルの整理を行いました。その成果として、事業説明資料の作成、KPI設定/PL作成による社内体制の検討、福祉用具認定など+αの要素によるビジネス展開の検討をすることができました。

知財面に関しては、自社出願済み特許の整理と分析、他社特許の調査、今後の特許出願戦略の検討、商標に関する調査と検討を行いました。その成果として、PCT出願を念頭に入れた特許内容案の作成、商標出願に向けた準備、これまで研究開発で出てきた+αの案をまとめた特許の出願検討ができました。以上の事を踏まえて、自社だけでなく他社の理解も同じく重要であるという意識の変化があり、また他社を知るにはビジネス面と知財面の両方からのアプローチが必要であると学びました。今回のIPASでの経験を基に、今後は知財で自社の権利を守りながら、各業界で強力なパートナーを戦略的に獲得していこうと考えています。

 

IPランドスケープの初期構築ができた

アナウト株式会社 熊頭 勇太 氏

内視鏡手術支援AIシステムを開発するアナウト株式会社です。開発の背景としまして、がんなどの外科医療の課題として手術合併症が挙げられます。残念ながら国内の手術合併症は減少傾向にありません。外科手術には視覚認知、認識と判断、手技操作のプロセスがあります。内視鏡や高精細カメラ、手術支援ロボットアームなどの登場により、プロセスのうちの視覚と手技では革命が起きました。しかし、認識と判断においては未だ空白領域となっています。私たちは微細な構造や位置、曖昧な領域などの解剖構造の情報を、AIがリアルタイムに提示するシステムを開発することで、この空白領域にイノベーションを起こそうとしています。

IPAS参加前は自社の知財のポイントを明確に言語化できていない、特許出願経験はあるが正しく特許を理解できていない、知財や事業に必要な契約などの法務の重要性を理解していない、知財戦略と事業戦略の紐付けができていないなどの課題がありました。IPASのメンタリングでは弁理士・弁護士・投資家の3人の先生と定期的なMTGを通しご指導いただきました。メンタリングを受け、もともとの課題であった競争優位性を持つ自社のコア技術の明確化や、自社知財のブラッシュアップ、法務の整理と整備を行うことができました。これら3つの成果を通しIPランドスケープの初期構築ができたと感じております。

IPASを通し自社の知財戦略を描けたことは、弊社の企業価値を高める非常に有意義な時間であったと考えています。またIPASによりブラッシュアップされた知財戦略は、弊社が同時進行で進めておりました資金調達においてもポジティブな効果を発揮したと感じています。メンターの皆さんには貴重な時間を弊社に費やしていただき非常に感謝しております。今後もアナウトはすべての患者がより良い手術を受けられる社会を目指してまいります。

 

知財は事業に結びついている

ジェリクル株式会社 増井 公祐 氏

弊社は「ゲルで医療に革新を」をミッションにしており、現状では再生医療に注力しています。患者自身の細胞を取り出し、体外で培養したものを体内に戻すという再生医療は、非常に時間とコストがかかるもので、この点に関しては未だ解決の糸口が見えていません。私たちは患者さんの体内で細胞を培養する「内因性組織再生」という新しい概念を開発し、ここの医療を進めています。我々は世界で最も均一なゲル「Tetra-PEGゲル」で様々な課題を解決し、内因性組織再生を日本の強固な産業として世界中の人々が享受できるものにしていきたいと考えています。

IPAS採択前に我々が抱えていた課題として、事業面ではビジネスを早く世に浸透させるべくアライアンスをうまく進めたい、他者に対して参入障壁を築きたいと考えておりました。また知財面では特許を広く強く押さえつつ、出願すべきものとしなくても良いものを明確化したい、海外に有効な特許の出願スタイルを決めたいという課題がありました。実際の取り組みとしては課題の整理から始めることを助言いただき、重要用途の特定とパイプラインの策定を行いました。また収益化方法策定に対するディスカッションを行っていただき、ビジネスと結びついた知財戦略の策定や、特許化とノウハウの切り分けに関してもアドバイスをいただきました。

取り組みの成果として、薬事専門家とのディスカッションによりパイプラインの優先順位の策定とリソース配分が決定し、特許を切り売りしない形でのアライアンス戦略の策定ができました。また知財面では現状の特許の足りていない部分を可視化して今後の権利方針を決定し、ノウハウとして秘匿化する部分を決めたことで他者が真似しづらい体制の構築ができました。参加後の意識の変化としては、あくまでも知財は事業に結びついているのだと再認識でき、色々な専門家の方の話を聞くことで自社の特許レベルを認識し、今後の改善策を考案することができました。

 

マイルストーンイベントをライセンスアウトではなく「自社開発・物質特許出願」に設定して資金調達を行う

STAND Therapeutics株式会社 樺山 博之 氏

細胞内抗体「STAND」技術を用いた難治性疾患治療薬の開発と事業化に取り組んでおります。膵臓がんの5年後生存率は全がんの中でも極めて低く、未だ膵臓がんの効果的な治療法は確立されていません。膵臓がんのドライバータンパク質である「KRAS」は、平らな構造で低分子化合物が結合するポケットがなく、創薬が困難であるという課題があります。従来の抗体は強く凝集し抗体として機能しませんでした。ですが、当社の研究開発により、安定化ペプチドタグを結合することで抗体として機能する「STAND化抗体 scFv」を創り出すことに成功しました。今後は「STAND化抗体 scFv」を臨床開発へ向けて最適化し、膵臓がんの治療薬として応用を進めていきたいと考えております。

IPASに臨む前の問題意識として、ビジネス面では事業計画ブラッシュアップの必要性、特許権者とのライセンス契約、資金調達について課題を感じておりました。また知財面では事業戦略を踏まえた知財戦略構築の必要性、自社特許出願戦略、共同研究の必要性を感じておりました。IPAS採択後はビジネス面、知財面での隔週メンタリングを通し、課題の明確化と可視化を行いました。取り組みの成果と効果として、自社特許出願による知財強化を前提としたシンプルなビジネスモデルに統一する方針を固めることができました。これはどういうことかというと、基本特許を取り、自社開発・物質特許出願をライセンスアウトし、他社に技術開発を促進していただくという計画です。IPAS採択前は、製薬企業との協業を、基本特許しか無い状態という自社の立場が非常に弱い状況で進めようとしていました。

この事業計画のポイントは、マイルストーンイベントをライセンスアウトではなく「自社開発・物質特許出願」に設定して資金調達を行うことです。そこで調達した資金でまた新たに自社開発を行い、物質特許出願をする…このサイクルが回ることで、ライセンスアウトの数が増えるにつれ、開発を加速させることができます。また技術・事業の多面的な特許保護が期待できる特許出願戦略の構築に対しても多くの助言をいただきました。特許庁の皆様には引き続きIPAS事業を推進していただき、かつスタートアップの皆様には是非IPASを通して事業戦略と知財戦略のブラッシュアップをしていただければと思います。

 

Vol.3支援先スタートアップ15社による成果発表ピッチ(2)はこちら↓

【知財イベント】『IPAS2020 Demo Day 成果発表会 レポート〜Vol.3 支援先スタートアップ15社による成果発表ピッチ(2)』

 

※Vol.5 株式会社チトセロボティクス 成果発表ピッチは後日掲載予定

 

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