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【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.10(#1)中国スタートアップ企業における知財事情~特許調査の重要性~

イベント

この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

 

Vol.10(#2)はこちら↓

目次;
1.中国におけるPE/VC投資の概況
2.創業5年以内で評価額が100億米ドルを超えた中国のユニコーン企業
3.中国では知財活動に対して桁違いの支援を行っている
4.特許件数が上場に関わってくる
5.上場失敗するケースも多い
6.競合によって権利行使されるリスクもある

【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.10(#2)中国スタートアップ企業における知財事情~特許調査の重要性~

 

Vol.10(#3)はこちら↓

目次;
1.特許調査が生み出す4つの価値
2.スタートアップのステージ毎に実施すべき主な特許調査
3.よくある勘違い①「特許権を取得すれば常に自由に実施できる?」
4.よくある勘違い②「あたりまえの技術だから使って大丈夫?」
5.よくある勘違い③「競合他社は特許を持っていないことが把握できたので安心?」
6.特許情報の活用には「応用分野の探索」や「提携先の探索」
7.知財に関するお困りごとはNGB株式会社まで

【知財イベント】完全オンライン型展示会「すごい知財サービスEXPO2021」セミナーレポートVol.10(#3)中国スタートアップ企業における知財事情~特許調査の重要性~

 

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NGB株式会社 IP総研
中根 寿浩さん
呉 礼さん

 

中根さん
皆さん、こんにちは。今回は、中国スタートアップにおける知財事情や特許調査の重要性ということで、NGB株式会社 IP総研の中根と呉がお話しをさせていただきます。

まず初めに、呉より中国スタートアップの知財事情についてご紹介いたします。

 

中国では特許や訴訟が爆発的に増加している


呉さん
まず、中国の特許と訴訟の件数をご覧ください。

左側の赤い線は特許の出願件数を表しています。右側のグレーのグラフは特許・意匠・実用新案の訴訟件数です。

中国の特許法は1985年に施行し、以来出願件数を伸ばしてきました。

2010年には特許・実用新案・意匠を合わせた出願件数が100万件を突破しています。去年(2020年)には500万件を超えました。これらは中国以外の世界各国の特許出願件数を合計してもなお上回ります。

また、量ではなく質を重視する流れも生まれています。

2015年あたりに、国務院(日本の内閣府に相当する機関)からクオリティの低い特許の存在が指摘されました。そして、2年後の2017年に「知財強国計画」を打ち出し、知財の質を重視するよう促しています。

さらに2019年には「Operation Blue Sky」と呼ばれる、クオリティが低い特許を強制的に排除する政策も始まりました。

2020年には中国全体で特許の出願補助金を廃止するお知らせも出ています。

一方、訴訟件数も出願件数と同様に増加を続けています。

2020年では2万5000件を超えていて、アメリカの年間訴訟件数4000件と比べても圧倒的に多いことが伺えます。

特許の出願が増えると、特許を使った権利行使も増えてきます。
そのため、訴訟件数も更に増加するでしょう。

 

特許の流通も活発化


特許の出願件数や活用が活発になるにつれて、
特許の流通も増えています。

売り手は大学や公的研究機関の他、HuaweiやZTEといった大量に特許を保有する大手企業に加えて、近年では日本や韓国の企業も自社の中国特許を中国企業に譲渡するケースも増えてきています。

これらの流通を促進しているのは、「ブローカー」と呼ばれる存在です。

図表の中にある「1+2+20+N」というのは、中央政府が主となり北京をはじめ全国で構築している知的財産の活用を促進する組織です。このような政府主導の組織に加えて、民間のブローカーも多数存在しています。また近年では出願代理事務所や法律事務所などがブローカー業務に進出しているケースも多くなってきています。

典型的な買い手の特徴は、ビジネスは急拡大していますが特許の件数が追いついていない企業です。

例えば、近年ですとスマホメーカーの「Xiaomi」や「OPPO」などが大型の特許の買収を行っています。また光沢フィルム、ディスプレイの分野においても中国企業が特許を購入する事例が増加中です。

ここで注目すべきは、米国のNPE(Non-Practicing Entity、非実施主体と呼ばれ、パテントトロールと称されることもある)が参入してきている点です。

「DOMINION HARBOR」はすでに日本企業から大量の特許を取得しており、中国への進出を大々的に進めています。

また「iPEL」という会社は、「Huawei」などの中国企業から大量の特許を取得しています。

今年6月には、韓国企業である「LG Innotek」から特許1万件を約90億円で購入した中国企業もいました。

調べたところ、この中国企業は「Suzhou Lekin Semiconductor」という会社だと分かりました。今年3月に設立・4月に登記されたばかりです。株主の情報から「NPE」と関連が深いことが予想されます。

このように購入された特許は、今後転売や権利行使に利用されることも考えられます。

 

米国のNPEの台頭


次に、
米国のNPEによる権利行使の状況をお伝えします。

中国内で公開されているレポートによると、2020年に侵害訴訟や無効審判など80件が確認されました。水面下で解決するケースも多いため、実際の件数はもっと多いでしょう。

具体的な例として、アメリカで有名なNPEである「iPEL」の事例をご紹介します。

CEOによると、中国は特許を権利行使できる最適な場所になったそうです。また中国での特許の買収や権利行使を想定して、すでに1億米ドルを用意しているとも発表されています。

「iPEL」の子会社であるGlobal Innovation Aggregators社の特許を調べたところ、「Huawei」や「ZTE」から約1000件の特許を取得していることがわかりました。

これらの特許を使い、日本の電機メーカーや台湾のASUS社と米国のNETGEAR社に対して、侵害訴訟や行政ルートを利用した差し止めなどを求めています。

行政ルートは中国独特の制度です。損害賠償は認めない代わりに、差し止めといった強力な権限を持っています。そのため、権利者にとっては和解金を早く得るために有効な手段であると考えています。

 

官民一体による特許収益化を開始


2019年ごろからは、
官民一体となった特許収益化のビジネスモデルが誕生しています。

具体的には「特許の証券化」と呼ばれるスキームです。

特許を権利者からSPC(特別目的会社)に移し、SPCが知財証券を発行します。その際、投資家から資金を集めます。

ここで注目したいのが、SPCに対して公的会社が保証していることです。これにより投資家が安心して知財証券を購入することができます。

投資を受けたSPCは、投資家に対して元本や利息を支払う義務があります。しかし、このとき発生する資金は、公的機関から得ることはできません。そのため潜在的なライセンシーや侵害者を探して、ロイヤリティや賠償金を取る必要があります。

私の中では、このような仕組みは政府お墨付きのNPEと定義しています。深セン市の事例からもわかるように、このような特許商品化の事例が大幅に増加しています。その結果、権利行使がますます活発になっていくと考えられます。

 

専利法の第四次改正により権利行使の促進


中国の改正専利法は、6月1日より施行されています。最初の改正案は2012年ごろに意見を募る目的で公開されました。その後複数回の変更があり、採決に要した時間は8年になります。

詳細については弊社からすでに情報を発信していますが、今回の改正では特許権利者に有利な内容が多いのが特徴です。

例えば、故意侵害に対する懲罰的損害賠償が最大5倍となったというところは、非常にインパクトがあります。次に、法定損害賠償額(裁判官の裁量により出すことのできる賠償額)の上限は100万元から500万元までに引き上げられました。日本円で約9,000万円です。

また、被告に対して帳票などの書類を提出させることも可能になります。さらに、行政部門には、強制調査権が付与され、侵害及び損害賠償金請求権の消滅時効は2年から3年に変更となります。そして、仮処分命令の対象も拡充されました。

これらの改正によって、権利行使が促進される効果があるといえるでしょう。

 

中国では大型の特許訴訟が頻繁に起こっている


ここまでご説明しましたように、出願件数の増加や特許売買の活発化、特許収益ビジネスモデルの出現、またNPEの参入などを背景にして、中国では大型の特許訴訟が頻繁に起こっています。

表で示しているのは、近年発生した特許訴訟のうち請求金額が比較的高い事例です。

この表にありますように、請求金額は数億円から170億円ほどにのぼります。

 

Vol.10(#2)へ続く↓

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