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【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(4)~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

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Vol.3(3)はこちら↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(3)~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

 

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【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.1~開会式~

 

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知財人材の資質と途上国における知財人材の役割

 

澤井さん
扇谷様にお伺いします。途上国の知財人材の育成にかなり力を入れられておりますが、そのお立場から知財人材の資質、あるいは途上国における知財人材の役割などをお聞かせいただけますでしょうか?

 

扇谷さん
知財の専門的な知見を持っている人材として求められる資質というのは、二つあるのかなと思っております。

一つ目は、もちろん専門的な法律の知識も必要ですが、それに加えて、特に特許を扱う場合には、技術の理解力が必要だと思っています。様々な技術分野がありますので、全部の技術知識を持つことは難しいですが、研究者の人が発表した時に、自分の専門ではないところでも、話を聞いてその技術の重要度が理解できる、そのような理解力を持っていることが必要だと思っています。

法律の知識と技術の理解力があるということがベースになりますが、それに加えて必要だなと思うのは、コミュニケーション能力とプレゼンテーション能力です。特に研究者の方とやり取りする、あるいは経営者の人を説得するといった場合には、相手の話をちゃんと聞いて、理解して、かみ砕いていく。そのコミュニケーションをうまくとっていくことが大切です。また、知財のことについては難しい用語を使うのではなく、相手にもわかるような形で説明していく。そういったプレゼンテーション能力も求められていくのではないかという風に思っています。

二つ目は、途上国の話になりますが、途上国は日本のように知財の専門分野がそれほど分化をしていません。特許出願から研究者とのやり取り、ビジネスのことまで一人でやらなければならないという状況です。そのようなところでやっていくためには、知財人材というものの数自体をもっと増やしていくということが重要になってくるのではという風に考えております。

 

地域中小企業の競争力強化

 

澤井さん
次は、少し題材を変えて、地域中小企業の競争力強化という視点から皆様にお伺いいたします。日本商工会議所、東京商工会議所の知的財産政策に関する意見(第三章)には、知財による地域中小企業の競争力強化というものが提言されています。この点について久貝様、お伺いできますでしょうか?

 

久貝さん
地方にも素晴らしい技術をもった中小企業がたくさんおられます。そういう方々の権利化というところも大きなテーマになりますが、今の状況では、やはり専門家の方は東京、大阪、関西圏に集中的におられます。さらに地方ということになりますと、県庁所在地でもあまり専門家がいらっしゃらない。そうなりますと、知財に関する専門的な情報や知見というものをなかなか得にくいという状況がございます。

この点をどのように課題を解決するかが大きな問題です。これまで特許庁のほうでも、誰でも相談することができる総合支援窓口を設立するなどといったオープンな制度を作っていただいておりますが、これも県庁所在地どまりではないかという風に思います。

ただ、やはりコロナの状況がひとつの転機になるのではと思っています。今まで中小企業はテレワークをやったことがなかったわけですが、今はオンライン会議もどんどん始めております。そういう意味では、非常に残念ではありますが、このコロナを転機に、オンラインでの専門家へのアクセスというものを広げていただきたいと思っております。それに向けて、もちろん私たちも努力いたしますが、専門家の方々のご協力もいただければ幸いです。

また、地方の中小企業の知財戦略においては、大学の知財というものが大きな課題になっていると感じます。これについては、大学の知財をどう活用するか、地方版の産学連携が重要だと思っていて、山口大学や徳島大学では、大学で生み出した特許を無償開放するという動きも出ています。こうした取り組みが広がっていけば、中小企業にとっては一つのビジネスを作るきっかけになりますし、それが地方創生につながるのではないかと思っております。是非とも皆様には地方の大学における中小企業との連携を考えていただきたい。私たちもそれについて働きかけていきたいと考えています。

 

コロナによる発明推進協会の取り組みの変化

 

澤井さん
コロナ禍によるオンラインの活用などによって、地方とのアクセスが改善したというお話がありました。全国津々浦々で知財の啓発に努めていらっしゃいます、発明協会の扇谷様のお立場からお話しをいただけますと幸いです。

 

扇谷さん
現在、発明推進協会では、新型コロナウイルス感染対策として、ライブ配信やオンデマンド配信といったオンラインの研修を実施するようにしております。その中で、多くの講師の方々とお話をさせていただくのですが、こういった状況になったからこそ、これからはもっと積極的にオンラインやリモートミーティングを活用して、一人でも多くの人に知財の重要性を知ってほしいとおっしゃる講師の方がたくさんいらっしゃいます。つまり情報を発信する側は、積極的にオンラインを使って情報発信を行っていこうとしているのです。

しかし、情報を受ける側が、『オンラインだと研修効果が上がらない』、『その場で質疑応答できないからこんな研修受けてもしょうがない』、『本当に聞きたいことが聞けない』などといったネガティブな印象を持っているため、なかなか積極的に利用してもらえないというような状況があると思います。そういう意味では、情報を受ける側の姿勢や情報アクセスへの取り組み方を変えることによって、ある程度この問題が解消されるのではないかと思っております。

 

シリコンバレーの情報アクセスの実態

 

澤井さん
シリコンバレーにいる企業の中では、中小企業への情報アクセスについて高い認識や意識をもって望んでいるのではないかというようなサジェスチョンもいただきました。大山様、実際のところはいかがでしょうか。

 

大山さん
シリコンバレーというと、オープンなイメージがあるかもしれないですが、実際に来てみると、人脈で情報を得ないと信頼できる情報を得られないというところです。例えば、スタートアップの方でしたら、起業家同士がスタンフォード大学のビジネススクールの同窓会で繋がっていたり、知り合いのスタートアップ同士がイベントであったときに、競合他社であっても信頼できる情報を口コミで融通しあうといったコミュニティがあります。逆にそういうコミュニティに入っていないと、情報が入ってこないというのがシリコンバレーです。

ウォームイントロダクションと言いますが、自分の知り合い同士をつなぐことも頻繁に行われています。この人とこの人をつないだら喜ぶかな、win-winの関係になるかななどと考えて繋いであげると、また別の機会に今度は逆に自分を誰かに紹介してもらえる、そういったことでネットワークがどんどん広がっていきます。また、名刺交換の文化はありませんが、SNSの『LinkedIn』を使って、メッセージやネットワークをどんどん拡散させているというような場所ですね。

知財に関しても、例えば良い弁護士や弁理士などの情報も人脈で流通しているところがあります。特に、スタートアップキャピタルがスタートアップを知財弁護士に繋ぐというようなところがあるようです。さらに、全米のローファームがほぼ毎日色んな場所で無料セミナーを開催しています。パンデミックによるオンラインセミナーへのアクセスから、知財情報や知財人材に繋がるように、知財関係者の皆様も知財関係者のネットワークを超えて色んな所に窓口を設けるということが日本にとっても大事かなという風に思っています。

 

Vol.3(5)へ続く↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(5)~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

 

Vol.3(3)はこちら↓

【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.3(3)~パネルディスカッション第一部『中小企業と知財、企業に向けた課題』~

 

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