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【知財イベント】WIPO日本事務所主催「世界知的所有権の日2021記念オンラインイベント」レポート Vol.4~全日本学生児童発明くふう展 WIPO賞受賞者 柴崎湧人さんへのインタビュー~

イベント

この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

 

Vol.4では、全日本学生児童発明くふう展WIPO賞の概要説明と受賞者の柴崎 湧人さんへのインタビューの様子をお届けいたします。

 

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細かな最適化が選定のポイントとなった

WIPO日本事務所 参事官 廣田 健介さん

全日本学生児童発明くふう展は、公益社団法人発明協会が主催し、次代を担う青少年に創作する喜びと発明くふうの楽しさを体得させ、その優れた発明くふう作品を顕彰することにより、創造性豊かな人格形成を目指すことを目的として、昭和16年(1941年)より開催されている歴史あるコンクールです。

令和2年度に開催された第79回大会では、各地域の発明くふう展等に出品された総数3,856点の作品から、優秀な成績を収めた推薦作品等が審査幹事会を経て、令和3年1月の審査委員会にて恩賜記念賞1作品および内閣総理大臣賞をはじめとする13の特別賞が選定されました。

WIPOでは、本コンクールの趣旨に賛同し、昭和56年(1981年)より特別賞としてWIPO賞を提供しています。令和2年度の第79回大会のWIPO賞として、当時山口県周南市立桜田中学校3年、柴崎 湧人さんの『可搬式水力発電機』を選定させていただきました。WIPO賞の選定理由として、有用性、独創性、そして細部にわたる工夫の3点がございます。

まず、有用性としましては、こちらの水力発電機は、自然災害などでの停電時の発電を目的としているとのことですが、これ以外にも、電力供給が不安定な地域、例えば途上国などにおける電力アクセス改善にも資する形で活用できるのではないかと考えられます。

また、電子回路部分だけを取り外し可能とすることで、装置の可搬性を高めるだけでなく、実際に発電により蓄えられた電気を使う際には、水場と離れたところで行うことができ、安全性も高めています。さらに、電子回路部分を家庭用コンセントやシガーソケットから電源供給できるようにしており、機能性や実用性の観点でも大変優れています。

次に、独創性としまして、水車の構造部分の工夫があります。試作当初は、らせん型のスクリューを用いていたのですが、うまく回転しないという課題に直面したそうです。そこで、インターネット等で調査し、バックショット型水車と呼ばれる方式を採用し、しかもその重要な回転部分を草刈り機の先端部分という全く別のものから転用することに着想し、その課題を解決しています。

最後に、細部にわたる工夫としまして、プリント基板の設計、動力部の羽の材質や形、取水部の構造など、あらゆる部分で細かな最適化がしっかりと行われております。

以上の理由により、本作品をWIPO賞に選定いたしました。

 

工夫をすればするほど結果が伴ってくる

全日本学生児童発明くふう展 WIPO賞 受賞者 柴崎 湧人さん

 

―はじめに、自己紹介をお願いします。

皆さん、こんにちは。この度全日本学生児童発明くふう展でWIPO賞をいただきました、柴崎 湧人と申します。山口県周南市に住んでいます。私は幼いころからモノづくりが好きで、この春からは市内の徳山高校に在学しており、コンピュータやエネルギーに関連する研究を行いたいと思っています。

 

―この作品を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?

製作前にニュースで大雨による停電の被害を目にし、各家庭や避難所に手軽に自家発電ができる装置があれば良いと考えました。そこで、身近にあり、手軽に使用できる用水路等の水の運動エネルギーを活用したいと考えたのがきっかけです。

 

―アイデア段階から作品完成までの期間はどのくらいですか?

作品の設計・試作・組立・試運転までを昨年の7月と8月の2か月間で行いました。夏休みが短縮されたため、休日に製作、平日にレポートを作成するなど、時間を有効に使って製作しました。

 

―設計はどのように進めていきましたか?

設計するにあたって、まず、発電量などの基本的な仕様を決定しました。その仕様に基づいて、ハードウェア・ソフトウェアを同時進行で設計しました。設計には紙の方眼紙やフリーソフト等を活用しました。

 

―電子回路を自分で作製されていますが、いつ、どのように習ったのでしょうか?

電子回路設計のノウハウは、父やインターネットから学びました。最初は小学4年生の時に、図書館の本でLEDの点滅回路を見て興味を持ちました。それで、はんだごてとパーツを買ってもらい、父と一緒に製作したのがきっかけです。その後は、PWM回路やマイコン工作などインターネット上に公開されているデータシートと呼ばれる電子部品の仕様書と回路図を見ながら、いろいろな電子工作を作って、徐々にステップアップしていきました。

 

―電子回路部分の設計・製作を行う際に工夫した点を教えてください。

今回の可搬式水力発電機では、発電量が限られていたため、回路内の電気抵抗が少なくなるように設計しました。また、発電機本体の総重量が大きいため、電力供給を行う電子回路部分を取り外せるように工夫しました。

 

―動力部の作製を行う際の課題は何でしたか?

動力部の作製の際には、シャフト径と回転速度の増速が課題でした。これは、模型用の部品を流用することで解決しました。特に、シャフトを一直線上に配置できる遊星ギアーを用いたことが、一番の解決策になりました。

 

―最終的に刈払機の刃を使うことを思いついたきっかけは何だったのでしょうか?

動力を伝える際に摩擦抵抗を少なくする必要があり、元から高速回転・高耐久の設計がとられている刈払機ならば、ゆがみや抵抗を抑えることができると考えました。また、刃に開いている穴が規則的に並んでおり、水車の羽の固定に程よいと考えたことがきっかけです。

 

―高い発電量を得るために工夫した点と最終的な完成に向けて調整した点は何でしょうか?

動力の伝達ロスを最小限にとどめるため、回転軸を一直線に揃えました。また、水車のトルクと発電モーターのトルクを鑑みて、増速用のギア比をギリギリまで大きくしました。

 

―発明品が完成した時の気持ちを教えてください。

今回の可搬式水力発電機は、製作しながらも完成するかどうか心配でした。しかし、工夫を重ねた結果、ギリギリで完成しました。自分が今まで行ってきた発明の集大成といっても過言ではない作品だったので、感無量でした。

 

―創造することの楽しさややりがいは何でしょうか?

私の創造することの楽しさは、自分の頭の中にある『こうだったらいいな』といったアイデアを目に見える形にできることです。また、工夫をすればするほど結果が伴ってくるというやりがいもあります。

 

―作製過程で学んだことはありますか?

作製過程では、上手くいかない場合にそれを白紙に戻すのではなく、改善点を考察し、改良することで上手くいくこともあるということを学びました。作製中にこのような場面がたくさんあり、この考え方で上手くいった点もたくさんありました。

 

―今後の目標と将来の夢についてお聞かせください。

将来の夢は、ICTとエネルギーに関連した研究を行うことです。今後は夢の実現に向け、高校で基礎計算力や科学的な基礎知識を身に着けることを目標としています。そしてこれからも創造力を活用した発明を継続的に行っていきたいです。

 

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