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スタートアップのIP経営⑥お金がない!!シード期の知財費用はどうする?

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この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

この連載では、スタートアップに特化した知財支援サービスを提供するOneip特許業務法人の澤井周さんに『スタートアップのIP経営』について、毎週お話を伺っていきます。『知財ってよく解らないなあ』という方はもちろん、スタートアップ経営者の方で『IP経営に興味がある』という方へ、この連載が、気づきやヒントになれば幸いです。

澤井さん profile

弁理士・博士(工学)。素材メーカ→博士課程→特許事務所→企業知財を経て、Oneip特許業務法人に参画。ドローンを中心にAI、IoT、IT、リアルテック関連などのクライアントの知財支援、コンサルティング、出願権利化業務を行う。

商標や特許を取るには、大体どのくらいの費用がかかるのでしょうか?

かかる費用は二種類あります。一つは特許庁に払う手数料、もう一つは特許の明細書を書いて出願を代理してくれる特許事務所に払う手数料です。特許の場合は1.出願時、2.出願後の審査請求時、3.拒絶理由通知への対応時、4.権利化の時、に費用がかかります。これらがトータルで60~80万円かかります(事務所によって費用は大きく変わります)。ざっくりとした内訳では出願時に30~40万円、もう半分は出願したあと権利化するまでに30~40万円かかるイメージです。

特許を取るには結構お金がかかるのですね…
商標はどのくらいの費用で取れるのでしょうか?

商標は、取るときにどのサービスやどの製品で使用したいか(指定商品・役務の区分数)によって費用が大きく変わります。一区分(指定)を出願する際にだいたい3~4万円くらいかかり、登録までにトータルで10万くらいかりかます。指定する区分が増えれば増えるほど費用がそのぶん膨らんでいきます。ですので、一つの商標を様々な区分でとったときに100万かかったというケースもあります。特に社名の商標を取るときは製品やWebサービスなど、定款に記載されている多くの区分に必要な場合があるので、商標でも予算を多めに見ておいたほうがいいと思います。

ちなみに、商標はもう気付いたときにはすぐ取るようにしましょう!取らないままズルズル進めてしまうと、後から誰かに取られてしまったり、知らない間に他人の商標権を侵害していて泣く泣くリブランドしなければならなくなる場合もあります。本当に商標は気をつけたほうが良いです。

商標権、気をつけます…!!

初めの頃、特にシード期は知財にかけられる費用が少ないスタートアップも多いと思います。
スタートアップがお金がない時期に知財戦略を進める時、注意するべきポイントはありますか?

起業した当時は自由に使えるお金がないので、商標や特許に捻出する費用を工面することが難しく、取れて一件なんてケースも多いと思います。商標は非常に大事なのでお金がない時でもしっかりケアしていただきたいのですが、特許にお金をかけすぎて肝心のプロダクトにかける費用がなくなってしまうのは本末転倒です。立ち上げ時点から特許にかかる費用を大枠でもよいので解っておくことがまず一つあると思います。

もう一つは「本当にその特許を取って意味があるのかどうか」を見極めることです。特許は一つ取れても安心ではなく、事業内容に応じて面やレイヤーで取ることが大切です。特にテクノロジーで進めていきたいスタートアップは、事業の優位性や将来的なライセンスを知財で実現することが効果的ですので、特に意識すべきと思います。せっかく取った特許を無駄にしないように、事業戦略と合わせて知財戦略も丁寧に考えていくことが重要です。

一件ではなく、面で取ってこその知財戦略なのですね。
スタートアップの資本政策で最も知財が重要になるフェーズはどの段階なのでしょうか?

一番最初です。基本的にどのフェーズにあっても知財はケアするべきですが、一番初めが一番重要になります。新しいものを世に出す際、自分たちの競争優位性を保つために特許は絶対に必要なアイテムです。特に特許は「新規性」が必要になり、特許を出願する前に世の中に技術を公表してしまうと、原則として特許は取得できません。また、それに加えて、特許を取っておけば大企業との協業がスムーズにいくケースが非常に多いのです。大企業からすると、特許は重要な信用や安心材料になり得るのですね。このように、特許は自分たちの事業のレバレッジのために用いられたり、リスクを予め回避する役割があり、いわゆるお守りみたいな効果があります。特にテクノロジーで売り出していくスタートアップは確実に初期段階から知財ケアをして欲しいですね。

一番最初が一番重要なのですね!
でも、スタートアップの最初はキャッシュが無いところがほとんどだと思うのです…
お金が無いなかでスタートアップが知財戦略を進める方法はあるのでしょうか?

それは非常に難しい問題ですね…。スタートアップはVCや投資家から資金調達をして事業を加速させていきますが、この調達のタイミングで知財のための予算をしっかり確保しておくことが重要だと思います。それでも、特許を出したいけど調達までまだ期間があるから今はお金が出せない、でも出願のタイミングを逃したくない、という場合もあると思います。そうした時に、例えば、調達のタイミングまで弁理士の先生に実費以外の支払いを先送りしてもらい、特許だけ先に出願してもらう、いわゆる出世払いのようにしてもらうことを提案するのもよいかもしれません。これは弁理士の先生との契約内容によると思いますが、迷ったら一度相談してみるのが良いかと思います。

弁理士の先生によってはそのような支払い対応をしてくださる方もいらっしゃるのですね。
スタートアップがお金が無いタイミングで出願する方法は、他にもあるのでしょうか?

これはまだまだ始めているところは少ないと思いますが、出願のための資金を株式等のエクイティという形で弁理士の先生に出資してもらう方法があります。例えば、資金調達時に弁理士の先生に出資してもらう、またはストックオプションを付与するんです。弁理士の先生に直接的にキャッシュは入りませんが、株式やストックオプションが手に入ります。スタートアップが順調に進めば株価の価値は何倍にも大きくなるので、弁理士の先生としても、事業にとって価値のある知財の構築を支援しようとするインセンティブが働くことになります。一般的に、弁理士としては特許出願をしてもらって手数料を稼ぎたい、お金のないスタートアップからするとお金の問題から不必要な出願はしたくない、という関係性になってしまっていますよね。そこで、キャッシュではなく株式やストックオプションという形の支払いにすることで、純粋に企業価値を上げるためにお互いが頑張るので、利害関係が一致するというメリットもあります。

ですがスタートアップが確実に成長する保証はないので、弁理士の先生がエクイティで対応をする際は、そのスタートアップがどれくらい成長するか、本気でIP経営に取り組む覚悟があるのか見極める必要があります。イメージとしてはVCのような感覚を持ちながら、単に出願代理をするだけでなく、適宜ハンズオンの支援をすることも求められると思います。全ての支払いをエクイティにしてしまうと、弁理士にとってもリスクが非常に大きくなり、また、不用意に株主が増えることはスタートアップにとってもデメリットとなる可能性はあるので、お互いの信頼関係を構築し、単なるキャッシュの問題だけではなく、IP経営をサポートする/推進するパートナーであるという関係性を築くことができれば、知財支援の形としてとても強固なものになると思います。

澤井さんはエクイティ払いでスタートアップの知財支援をされていますよね。
そのような支払い方法で進めてみて、実際のところどうですか?

実際にエクイティ払いで進めてみて、都度払いよりもスタートアップと弁理士の継続的な関係を築くことができると感じています。顧問契約のような支援の仕方になるので、定期的に打合せを行い、事業計画や知財の計画について綿密なキャッチアップができるため、的確なアドバイスをすることができます。株式やストックオプションを持つことで、外からの支援ではなくスタートアップの知財部に入って、経営に直結する知財戦略を進めるイメージですね。このような点から、単なる出願代理の業務だけに限定されず、調査や出願計画など多岐にわたる業務を任されるので、弁理士としてのやりがいはとても大きいです

スタートアップのIP経営⑦ピッチで何を話すべき?事業戦略は知財戦略である

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