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スタートアップの知財戦略〜実践編〜 #3

連載記事

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One ip 特許業務法人事務所の弁理士・澤井周さんの連載第二弾!前回の連載では「スタートアップのIP経営」について、知財戦略の考え方や特許取得にかかる費用などIP経営の基礎をご紹介してきました。今回の連載は、基礎から一歩ふみこんだ実践編。スタートアップ経営者が知財を戦略的に有効活用するための思考の整理方法や出願への具体的な進め方をご紹介します。

今回はOneip特許法人事務所で商標担当マネージャーをされている河野上さんをゲストに迎え、知財の第一歩としての「商標」について、どのような商標を取るべきか、どのような制度があるかを解説します

澤井さん profile

弁理士・博士(工学)。素材メーカ→博士課程→特許事務所→企業知財を経て、Oneip特許業務法人に参画。ドローンを中心にAI、IoT、IT、リアルテック関連などのクライアントの知財支援、コンサルティング、出願権利化業務を行う。

河野上さん profile

Oneip特許業務法人事務所
商標担当マネージャー

スタートアップの知財戦略〜実践編〜 #2

≪第一弾『スタートアップのIP経営』に関する連載一覧≫

スタートアップのIP経営①弁理士/澤井さんの経歴

スタートアップのIP経営②スタートアップとIP経営

スタートアップのIP経営③スタートアップの知財支援とは

スタートアップのIP経営④スタートアップに知財は必要なのか?

スタートアップのIP経営⑤最初が一番大切な理由

スタートアップのIP経営⑥お金がない!!シード期の知財費用はどうする?

スタートアップのIP経営⑦ピッチで何を話すべき?事業戦略は知財戦略である

スタートアップのIP経営⑧まずはできるところから!IP経営の始め方

スタートアップのIP経営⑨特許を取るプロセスと権利化にかかる費用

スタートアップのIP経営⑩利用したい!!特許庁等のお金に関するおトクな制度とは

スタートアップのIP経営⑪知っておきたい!!特許庁等の審査に関する制度とは

【最新の連載はこちら】

安全に保護する一方で、侵害しないようケアする

そもそも商標登録は、なぜ必要なのでしょうか?

様々な理由がありますが、メインの理由としては、自社ブランドやサービス名をより安全に使用できるところです。自分が安全に利用できる一方で、他社の勝手な利用を止めさせる為にも、やはり商標登録は大切ですね。

商標登録は他人による模倣やパクリを防ぐ役割が一番大きいです。自分のブランドを多くの人に正しく認知してもらう為にも商標登録は重要です。

自分が考えたサービス名等を他社が勝手に使用し始めてしまったという大変な状態になってから相談にいらっしゃるということもわりと発生しています。「ちゃんと商標を取っておけば良かった」という後悔をして欲しくないので、商標登録の大切さは多くの方に認識してほしいし、それを伝えるのも弁理士の仕事だと思っています。

赤の他人も同じような商標を勝手に登録できてしまうので、自分が築き上げてきたのブランドやサービス名がある日突然使えなくなることもあります。販売努力をしてブランドの価値をあげたのにそれをフリーライドされたり、タダ乗りされるどころか、さらに逆に自分が自由に使えなくなって、使ったらお金を取られることもあります。

もし実際にそこで困っている方がいたら、出願したり、早期審査の制度を活用したり、相手方に警告を出すなど色々と方法はあるので、泣き寝入りはせずに、まずは相談していただけたらと思います。

商標は先に出したもの勝ち

実際に商標の出願が自分のものと他人のものとで被ってしまった場合、対抗手段はあるのでしょうか。

とにかく先に出願するしかないですね。先願主義と言って、商標もそこは特許と同じで、先に出願したもの勝ちです。

商標の場合は、先にブランドやサービス名の名称が世の中に公開されていても、その後に出願することが可能です。ですが、もしブランドやサービス名に愛着があって、ずっと使い続けたいのであれば、公開するよりも先に出願することが好ましいです。また、出願しようとしている名称と近い名称が他にありそうだと思えば、すぐに専門家に相談するべきです。ただ、もし他者に先に出願をされていた場合は、難しいですね。

先に出したもの勝ちなのは、日本だけでなく中国も同じです。悪意ある出願は取り消しにできる審判制度などがあるのですが、一度登録になった登録商標を無効にするのは難しいです。ですので、事業を始めるタイミングでに出願するのが一番良いと思います。

もともと他社が持っていた商標を譲渡交渉して譲り受けたというケースも聞いたことがあるのですが…

実際に交渉したこともありますが、例えば、譲渡してもらう場合は、権利を買い取ったり、ロイヤリティをお支払いするケースが多いですね。ただ、交渉は時間もお金もかかる事なので、もしそのような状況になった際は、諦めてリブランドも検討しなければいけないケースもあるかなと思います。

ちなみに、すでに他社に商標登録されているけれど、その他社の事業でその商標が全く使われていない場合、商標を取り消すこともできます。使用していない場合はそのまま取り消しになる場合もあるので、最初から諦めずに、様々な手段を検討するのも良いかと思います。

コンセプトを保護するケースも

会社名やサービス名の他に商標として出願した方が良いものはありますか?

ロゴやマーク、商品名など、真似されたくないものは一通り取っておいた方がいいですね。

商標登録する際は、ロゴやマークとセットで、それを何に使うのか(指定商品・指定役務)も決めなければなりません。例えば、コンサルを事業として行うなら「第35類 経営の助言」などですね。また、社名やサービス名の他にも、会社のブランドコンセプトを商標でおさえるというケースがあります。会社が提供する価値を一言で表したコンセプトの言葉を出願する場合があります。

概念的な言葉はちゃんと自分の商標として使用していかないと、みんなが当たり前に使うようになってしまい、識別力がなくなることがあります。識別力がないとは、誰の商標なのかが分からなくなること(例えば「ホッチキス」「シャーペン」など)で、つまり「みんなが使う言葉」になります。最近だと、業界で使用される用語などによく見受けられますね。

一般的な用語になり「誰の商品やサービスか分からない商標」になると独占できなくなってしまいます。概念的な商標は、サービスや商品に積極的に付随したものでないと使い方が難しい気がしています。ただし、概念的な言葉を自分のものとしてアピールをしすぎると、かえってその言葉が業界に浸透しなくなり、その言葉を使いたい他人からの評判も良くない方向に向かい、レピュテーションリスクが増える可能性もあります。このレピュテーションをうまくコントロールできるかが鍵だと思います。

逆にコンセプト的な商標を使いこなせるとブランドとして独立していくので、思いついたら調べてみるのがいいと思います。インターネットで調べて出てくる言葉は、審査官に「一般的な用語である」と判断される事が多いので、もし思いついたものがあまり知られていなければ商標登録を検討するのも良いと思います。

事業がピボットする際は商標の見直しを

指定商品・役務(サービス)はどのように決めれば良いのでしょうか?

これは商標を何にどう使うかですね。商品名か、サービス名か、広めに取っておくのか、今やっているものだけを取るのか…。これは費用との兼ね合いで、先を見越して取ることも大切ですが、何でもかんでも取るとどんどんお金がかかってしまうので、そこは相談かなと思います。

商標は半永久的に更新し続けなければならず、追加ができません。指定が多いとそのぶん一度の更新で何十万もかかる場合があるので、最初のうちは今やっているサービスに絞って登録するのが良いと思います。ここで気をつけなければならないのは、ピボットして事業が変わる際に商標も見直す必要がある点です。新たに変更した事業内容が初めに出した商標の権利範囲内に入っていない時、場合によっては同じ商標を別の指定商品・役務で出す必要があります。

無料でAI検索できるサービスも

商標を取りたいと思っても、お金の面で躊躇してしまうというお話もよく聞きます。

商標を出す際に、弁理士に相談して似たようなものがないか探すこともできますし、最近はAIを使用してWeb上で商標を調べるサービスを提供している会社もあります。自分たちが他社と似たものを使っていないかを無料のWebIサービスで調査し、商標を出せるかどうかの目安にすることもできます。

一般的なお店屋さんなどはWebサービスで調査すれば問題ないかと思いますが、指定商品や指定事業が少し特殊な場合はテンプレに当てはまらないケースもあるので、新しいサービスを始めたい場合は弁理士に直接確認することをおすすめします。でもまずは、商標の制度を理解する意味も込めて、無料のAI検索サービスを使用して自分で調べてみる事から始めてみるのも良いと思います。

 

次回の『スタートアップの知財戦略〜実践編〜』は12月4日(金)に公開予定です。お楽しみに!


【関連記事】

Cotoboxで実現する弁理士の新しい働き方#1

スタートアップの知財戦略〜実践編〜 #2

 

≪第一弾『スタートアップのIP経営』に関する連載一覧≫

スタートアップのIP経営①弁理士/澤井さんの経歴

スタートアップのIP経営②スタートアップとIP経営

スタートアップのIP経営③スタートアップの知財支援とは

スタートアップのIP経営④スタートアップに知財は必要なのか?

スタートアップのIP経営⑤最初が一番大切な理由

スタートアップのIP経営⑥お金がない!!シード期の知財費用はどうする?

スタートアップのIP経営⑦ピッチで何を話すべき?事業戦略は知財戦略である

スタートアップのIP経営⑧まずはできるところから!IP経営の始め方

スタートアップのIP経営⑨特許を取るプロセスと権利化にかかる費用

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